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シングル コピー クラスタの計画

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2008-07-24

Microsoft Exchange Server 2007 シングル コピー クラスタ (SCC) の展開は、スタンドアロン Exchange 2007 サーバーの展開およびクラスタ連続レプリケーション (CCR) と似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。

シングル コピー クラスタの一般的な要件

SCC を展開するための一般的な要件は以下のとおりです。

  • ドメイン ネーム システム (DNS) を実行していることを確認します。通常は、この DNS サーバーで、動的更新を受け付けるように設定しておくことをお勧めします。DNS サーバーが動的更新を受け付けない場合は、クラスタ化メールボックス サーバーごとに 1 つ、およびクラスタ自体について 1 つの DNS ホスト (A) レコードを作成する必要があります。このレコードを作成しないと、Exchange は正常に動作しません。Exchange 用に DNS を構成する方法の詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の記事 322856「Exchange Server と一緒に使用する際の DNS の構成方法」を参照してください。
  • クラスタ ノードが、コンピュータの参加する Active Directory ディレクトリ サービス ドメイン名とは異なる名前を持つディレクトリ名前付けサービス ゾーンに属している場合、DNSHostName プロパティには既定ではサブドメイン名が含まれません。この状況では、ファイル レプリケーション サービス (FRS) などの一部のサービスが正しく動作するように、DNSHostName プロパティを変更する必要が生じる場合があります。詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の記事 240942「Active Directory の DNSHostName プロパティにサブドメインが含まれない」を参照してください。
  • すべてのクラスタ ノードは、同じ Active Directory ドメインおよびサイトのメンバ サーバーである必要があります。Exchange 2007 は、Active Directory ディレクトリ サーバーでもあるノード、または別の Active Directory ドメインまたはサイトのメンバであるノードではサポートされません。
  • Exchange 2007 をインストールする前に、クラスタが形成されていることを確認します。Exchange 2007 をインストールする前に、Exchange 2007 をインストールしようとしているクラスタ グループに少なくとも 1 つの物理ディスク リソースが存在することを確認します。クラスタ化メールボックス サーバーをインストールしたら、適切なディスク リソースの依存関係をクラスタ アドミニストレータで構成します。
  • クラスタ化メールボックス サーバーの名前が 15 文字以下であることを確認します。
  • Exchange 2007 がインストールされているクラスタには、Exchange Server 2003、Exchange 2000 Server、またはどのクラスタ対応バージョンの Microsoft SQL Server も含めることはできません。Exchange 2007 を、このような他のアプリケーションと共にクラスタ内で実行することはサポートされていません。データベース アプリケーションがクラスタ化されていない場合には、SQL Server Express Edition または他のデータベース アプリケーション (Microsoft Office Access など) と共にクラスタで Exchange 2007 を実行できます。
  • Exchange 2007 をインストールする前に、物理ディスク リソース上ですべての Exchange データをインストールするフォルダが空であることを確認します。
  • クラスタ化メールボックス サーバーのホストとして構成されているクラスタ内のすべてのノードに、同じバージョンの Exchange 2007 をインストールする必要があります。さらに、オペレーティング システムおよび Exchange ファイルは、クラスタ内のすべてのノードで同じパスとドライブにインストールする必要があります。それには、すべてのコンピュータを (まったく同一ではなくても) 類似したディスク構成にする必要があります。
  • 既定のクラスタ グループからクラスタ化メールボックス サーバーを含むリソース グループにリソースをインストール、作成、または移動しないでください。また、クラスタ化メールボックス サーバーのあるグループからのリソースを、既定のクラスタ グループに対してインストール、作成、または移動しないでください。既定のクラスタ グループは、クラスタ IP アドレス、ネットワーク名、およびクォーラム リソースのみを含む必要があります。リソースを既定のクラスタ グループに移動したり、既定のクラスタ グループと結合したりすることはサポートされていません。
    important重要 :
    以前のバージョンの Exchange を実行するクラスタでは、Microsoft 分散トランザクション コーディネータ (MSDTC) のクラスタ化されたインスタンスが必要です。Exchange 2007 ではクラスタ化された MSDTC リソースは不要です。SCC のクラスタ化メールボックス サーバーは、フェールオーバー クラスタにインストールされている MSDTC リソースを使用しません。サード パーティのアプリケーションは、COM+ との依存関係のため、MSDTC リソースを必要とする場合があります。Windows Server 2003 では、MSDTC クラスタ リソースはクラスタ内の共有記憶域を使用する必要があります。サード パーティのアプリケーションでクラスタ化 MSDTC リソースが必要な場合は、クラスタ化メールボックス サーバーが含まれているグループとは別のクラスタ グループにリソースをインストールする必要があります。Windows Server 2008 は、Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタにおける共有記憶域の要件を解消する、ローカルの非クラスタ化 MSDTC インスタンスを提供します。Windows Server 2008 での MSDTC の変更の詳細については、Windows Server 2008 のヘルプを参照してください。

シングル コピー クラスタのハードウェア要件

SCC 展開のハードウェア要件は以下のとおりです。

  • ソリューション全体は、Microsoft Windows Server Catalog of Tested Products のクラスタ ソリューションのカテゴリに記載されている必要があります (このサイトは英語の場合があります)。
  • SCC が地理的に分散されている場合は、Microsoft Windows Server Catalog of Tested Products の地理的に分散されているクラスタ ソリューションのカテゴリに記載されている必要があります。

シングル コピー クラスタのソフトウェア要件

SCC 展開のソフトウェア要件は以下のとおりです。

  • クラスタ内のすべてのノードでは、同じブート ドライブ文字とシステム ドライブ文字、および同じ Windows パスを使用してクラスタの各ノードに Windows Server 2008 Enterprise または Windows Server 2003 Enterprise Edition オペレーティング システムがインストールされている必要があります。クラスタ内では、1 つ以上のノードで Windows Server 2003 を実行して他のノードで Windows Server 2008 を実行することはできません。フェールオーバー クラスタ内でオペレーティング システムの異なるバージョンを混在させることはできません。
  • クラスタには、メールボックス サーバーの役割のみをインストールできます。フェールオーバー クラスタの一部であるコンピュータに、その他の Exchange サーバーの役割をインストールすることはできません。

シングル コピー クラスタのネットワーク要件

クライアントとクラスタの通信に使用されるネットワークが正しく構成されていることが重要です。ここでは、プライベート ネットワークおよびパブリック ネットワークの設定が正しく構成されていることを確認するために必要な手順のリンクを提供します。また、クラスタ内でネットワーク接続の順序が正しく構成されていることも確認する必要があります。

SCC 展開のネットワーク インフラストラクチャを設計する際は、以下の点を考慮します。

  • 各ノードには、クラスタで使用できる少なくとも 2 つのネットワーク アダプタが必要です。クライアントおよびその他のサーバーは、このノードに 2 つのネットワーク アダプタのどちらかからアクセスできるだけでかまいません。もう一方のネットワーク アダプタは、クラスタ内の通信に使用されます。

  • クラスタ化メールボックス サーバーを作成する場合は、十分な数の静的 IP アドレスが利用可能である必要があります。IP アドレスは、パブリック ネットワークとプライベート ネットワークの両方に必要です。プライベート アドレスとパブリック アドレスに関連する要件は、次のとおりです。

    • プライベート アドレス   各ノードで、クラスタ プライベート ネットワークに使用するネットワーク アダプタごとに 1 つの静的 IP アドレスが必要です。パブリック ネットワークの 1 つとして同一のサブネットまたはネットワーク上で使用されていない静的 IP アドレスを使用する必要があります。10.10.10.x とプライベート ネットワーク用のプライベート IP アドレス サブネットとしてサブネット マスク 255.255.255.0 を使用することをお勧めします。現在のパブリック ネットワークで 10.x.x.x10.x.x.x ネットワークとサブネット マスク 255.255.255.0 を使用している場合は、別のプライベート ネットワーク IP アドレスとサブネット マスクを使用することをお勧めします。複数のプライベート ネットワークを構成する場合は、プライベート ネットワーク アダプタとプライベート ネットワークごとに一意のアドレスとサブネットが必要です。
    • パブリック アドレス   各ノードで、クラスタ パブリック ネットワークに使用するネットワーク アダプタごとに 1 つの静的 IP アドレスが必要です。また、クライアントと管理者がサーバー クラスタとクラスタ化メールボックス サーバーにアクセスできるように、サーバー クラスタとクラスタ化メールボックス サーバーに対しても静的 IP アドレスが必要です。プライベート ネットワークの 1 つとして同一のサブネットまたはネットワーク上で使用されていない静的 IP アドレスを使用する必要があります。
    note注 :
    Windows Server 2008 に SCC をインストールしている場合は、動的に割り当てられるインターネット プロトコル Version 6 (IPv6) アドレスをプライベート ネットワークまたはパブリック ネットワークで使用される静的 IPv4 アドレスと一緒に使用できます。
  • Windows Server 2003 に SCC をインストールしている場合は、同じサブネット上にあるクラスタ内のすべてのノードでプライベート ネットワークが必要です。地理的に分散されている環境でこの要件を満たすには、2 つのノード間の相互接続で仮想 LAN (VLAN) スイッチを使用できます。VLAN を使用する場合は、ポイント間のラウンド トリップ待ち時間が 0.5 秒未満である必要があります。さらに、2 つのノード間のリンクは、ノード上で稼働する Windows オペレーティング システムから単一のポイント間接続に見える必要があります。単一障害点を回避するために、ノード間の異なるパスには独立した VLAN ハードウェアを使用します。Windows Server 2008 で実行しているフェールオーバー クラスタには、この制限は適用されません。

  • Windows Server 2003 に SCC をインストールしている場合は、同じサブネット上にあるクラスタ内のすべてのノードでプライベート ネットワークが必要です。また、このサブネットはプライベート ネットワークで使用されるサブネットとは異なる必要があります。クラスタ パブリック ネットワークは、他の Exchange サーバー、および Active Directory や DNS などのその他のサービスへの接続を提供する必要があります。ネットワーク アダプタ チームや同様のテクノロジを使用することにより、これが単一障害点になることを防止できます。Windows Server 2008 で実行しているフェールオーバー クラスタには、この制限は適用されません。

  • 独立したクラスタ プライベート ネットワークを提供する必要があります。プライベート ネットワークは、クラスタのノード間通信に使用されます。このネットワークは、クラスタ内のコンピュータに配置することができ、DNS サービスを必要としません。

  • Windows Server 2003 に SCC をインストールしている場合、Windows でのネットワーク接続順序は、パブリック ネットワークが接続順序の上位になるように構成し、クラスタでのネットワーク優先度は、プライベート ネットワークが優先順位の上位になるように構成する必要があります。

  • ハートビート要件は、2 データセンター構成のパブリック ネットワークの帯域幅と待ち時間についての最も厳格な要件ではない場合があります。クライアント、Active Directory、トランスポート、およびその他のトラフィックを含む全体的なネットワーク負荷を評価し、必要なネットワーク要件を判断する必要があります。

シングル コピー クラスタの記憶域要件

SCC では、共有記憶域を使用してクラスタ化メールボックス サーバーのデータを格納します (ストレージ グループとデータベース)。また、クォーラム リソースを共有記憶域に格納することもできます。クォーラム リソースに共有記憶域を使用する別の方法は、マジョリティ ノード セット (MNS) クォーラムを使用することです。これは、従来の MNS クォーラムまたはファイル監視共有監視付きの MNS クォーラムとすることができます。

SCC が正しく動作するには、以下の作業を次に示す順序で実行する必要があります。

  1. すべての共有記憶域は、クラスタの一部になる各ノードでクラスタを形成する前に構成される必要があります。クラスタを形成する前に、クォーラム ディスクを構成し、クラスタのすべてのノードで使用できるようにする必要があります。クォーラムが使用できないと、クラスタの形成は失敗します。
  2. クラスタを形成した後、および Exchange をインストールする前に、クラスタ化メールボックス サーバーの共有記憶域の物理ディスク リソースを構成する必要があります。
  3. Exchange をインストールし、クラスタ化メールボックス サーバーを作成したら、物理ディスク リソースの依存関係を構成する必要があります。
note注 :
クラスタ化メールボックス サーバーの共有記憶域には、クラスタ化メールボックス サーバーをホストできるすべてのノードからアクセスできる必要があります。

SCC ストレージ ソリューションを設計する場合は、以下のベスト プラクティスに従うことをお勧めします。

  • ディスク記憶域の計画」の一般的な記憶域の計画ガイダンスを使用します。
  • データベース ファイルとトランザクション ログ ファイルは、別の論理ユニット番号 (LUN) に格納します。
  • NTFS ファイル システム ボリューム マウント ポイントを使用して、ボリュームをオペレーティング システムが認識できるようにします。
  • ホストされているストレージ グループまたはデータベースに直接、かつ明確に結び付く、認識可能な名前を使用します。ログとデータベースに別のボリュームを使用する場合は、パスでデータの種類を識別できるようにしてください。この方法は、データベースやストレージ グループの数が増えた場合の人為的なミスの防止に役立ちます。
    note注 :
    Exchange 2007 は、ボリュームのルートへのトランザクション ログまたはデータベース ファイルの配置はサポートしていません。

シングル コピー クラスタの Active Directory 要件

SCC では、Active Directory インフラストラクチャに関する、スタンドアロン サーバーと同じすべての要件に加えて、次の要件が追加されます。複数データセンターのソリューションでは、任意の時点で、クラスタ化メールボックス サーバーをいずれのデータセンターがホストしている可能性もあるため、両方のデータセンターが十分な Active Directory インフラストラクチャ サポートを提供する必要があります。この容量は、他のデータセンターが使用できない場合にも存在する必要があります。さらに、クラスタ内のノードはすべて同じドメインに存在する必要があり、クラスタ サービス アカウントは適切なアクセス許可を持っている必要があります。

note注 :
地理的に分散されているクラスタでは、データセンター間に単一の Active Directory サイトが拡張されている必要もあります。ただし、第 2 データセンターのサイトにクラスタ化ノードのみが存在する必要はありません。地理的に分散された SCC ソリューションを展開するには、サード パーティのハードウェアおよびレプリケーション テクノロジが必要です。

シングル コピー クラスタのサービス アカウント要件

Windows Server 2003 に SCC をインストールしている場合は、クラスタ サービス アカウントにドメイン アカウントを使用する必要があります。クラスタ内のノードはすべて同じドメインのメンバである必要があります。また、クラスタ内のノードはすべて同じクラスタ サービス アカウントを使用する必要があります。クラスタ サービス アカウントは、クラスタ化メールボックス サーバーをホストできる各ノードのローカルの Administrators グループのメンバである必要もあります。

クラスタ サービス アカウントは、フェールオーバー クラスタのネットワーク名リソースがオンラインになったときに、このリソースで識別および関連付けられるコンピュータ アカウントの作成と保守の役割を担います。クラスタ サービス アカウントに適切なアクセス許可が設定されるようにするには、マイクロソフト サポート技術情報の記事 307532「コンピュータ オブジェクト変更時のクラスタ サービス アカウントのトラブルシューティング方法」を参照してください。詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の記事 251335「ドメイン ユーザーがワークステーションまたはサーバーをドメインに参加させられない」を参照してください。

Windows Server 2008 に SCC をインストールしている場合は、クラスタ サービスは LocalSystem (SYSTEM) アカウント下で実行されます。

詳細情報

Windows Server 2008 とそれ以前の Windows Server 2003 のフェールオーバー クラスタの詳細については、以下のリソースを参照してください。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。