ローカル連続レプリケーション
適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007
トピックの最終更新日: 2008-01-17
ローカル連続レプリケーション (LCR) は、組み込みの非同期のログ配布およびログ再生テクノロジを使用して、運用ストレージ グループと同じサーバーに接続される 2 番目のディスク セット上にストレージ グループのコピーを作成および保持するシングルサーバー ソリューションです。運用ストレージ グループはアクティブ コピーと呼ばれ、別のディスク セット上で保持されるストレージ グループのコピーはパッシブ コピーと呼ばれます。次の図は、LCR の基本的な展開を示しています。
LCR では、ログ配布、ログの再生、およびデータのセカンダリ コピーへの (アクティブ化と呼ばれる) 手動による迅速な切り替えが可能です。LCR は、次のことを可能にして Microsoft Exchange Server 2007 の総保有コストを削減するように設計されています。
- オンラインの第 2 のコピーへの迅速なデータ切り替えを可能にすることで、データ レベルの障害の回復時間を短縮します。
- データ保護のために必要になる定期的な完全バックアップの回数を削減します。障害が発生した場合にデータ バックアップを保持していることが重要です。LCR によってバックアップの必要性がなくなるわけではありませんが、定期的な毎日の完全バックアップの必要性が大幅に削減されます。
- ストレージ グループのアクティブ コピーからパッシブ コピーにボリューム シャドウ コピー サービス (VSS) バックアップの負荷を移動することができます。4 種類の VSS バックアップ (完全、コピー、増分、および差分) はすべてパッシブ コピーから取得できます。バックアップの負荷をアクティブ コピーからパッシブ コピーに移動することによって、アクティブ コピーの論理ユニット番号 (LUN) 上の貴重なディスクの入出力 (I/O) を保持できます。
LCR では、ストレージ グループのコピーの構成、操作、検証、削除、およびアクティブ化が可能になります。必要に応じてパッシブ コピーを運用データベースとしてアクティブ化し、その後マウントしてクライアントが利用可能な状態にできます。一般に、この作業は、アクティブ ストレージ グループとデータベース パスの変更、またはより低いレベルのオペレーティング システム アクション (たとえば、ログまたはデータベース ボリュームに関連付けられているマウント ポイントの変更) による、構成変更として行うことができます。
LCR には特別なストレージ要件はありません。直接接続記憶域、シリアル接続 SCSI、インターネット SCSI (iSCSI) など、Windows Server 2003 または Windows Server 2008 のサポートするストレージの種類はすべて LCR と共に使用できます。認定済みストレージ ソリューションの一覧については、Windows Server テスト済み製品カタログを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。
メールボックス データのエラーまたは破損を迅速に回復する必要のある顧客にとって LCR は優れたオプションですが、スケジュールされた理由およびスケジュールされていない理由からサーバーの機能停止が発生する場合もあります。LCR は次の機能を提供します。
- 運用データベースの破損またはエラーからの迅速な 2 ステップの回復
- 必要性の高いユーザーに対する保護
- 運用データベースおよびログ ディスク I/O への影響を最小限にとどめる機能
- データベースおよびログのパッシブ コピーに VSS バックアップをオフロードする機能
- バックアップの時間枠を拡大しながら、バックアップ メディアに移動するデータの合計量を削減する機能
- Exchange 管理コンソールまたは Exchange 管理シェルで使用可能な管理機能
Exchange 2007 SP1 で LCR に強化された機能
Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) では LCR にいくつかの機能が拡張されました。強化点にはトランスポート収集の使用、Exchange 管理コンソールに追加されたユーザー インターフェイス要素、状態および監視の改善、パフォーマンスの改善があります。
LCR でトランスポート収集が可能に
Exchange 2007 SP1 では LCR をサポートするため、ハブ トランスポート サーバーの役割のトランスポート収集機能が拡張されました。Microsoft Exchange Server 2007 の RTM (Release To Manufacturing) 版では、トランスポート収集はクラスタ連続レプリケーション (CCR) 環境でのみ利用可能でした。トランスポート収集の原状回復要求が回復プロセスの一部として自動で行われる CCR, とは異なり、LCR 環境ではこのプロセスは手動です。Exchange 2007 SP1 では Restore-StorageGroupCopy コマンドレットが更新され、トランスポート収集の再発信要求を含むようになりました。このため、管理者が LCR 環境で Restore-StorageGroupCopy コマンドレットを用いてストレージ グループのパッシブ コピーをアクティブ化するときに、アクティブ化プロセスの一部としてトランスポート収集の発信要求が生じます。
トランスポート収集は、環境の冗長性を利用して、フェールオーバーの影響を受けたデータの一部を再利用します。具体的には、ハブ トランスポート サーバーは、最近配信されたメールのキューを維持しています。このキューは、メールの保存時間と合計の領域使用量によって制約されます。Restore-StorageGroup タスクに新たな機能が加えられました。管理者がストレージ グループのパッシブ コピーをアクティブ化するタスクを使用しているとき、Microsoft Exchange レプリケーション サービスがメールボックス サーバー サイトのハブ トランスポート サーバーからトランスポート収集でメッセージの回復を要求します。インフォメーション ストアは自動的に複製を削除し、失われたメールを配信します。
In Exchange 2007 SP1 では、トランスポート収集で電子メール メッセージを維持するために必要な条件は、CCR 環境内のクラスタ化メールボックス サーバー、または、LCR 用に構成されたストレージ グループのスタンドアロン サーバー上に、メールボックスを持つ受信者が 1 人以上存在することです。
トランスポート収集によってデータ消失が軽減されない状況として、以下の状況があります。
- オンライン モードでの Microsoft Outlook クライアントの [下書き] フォルダ。
- 予定、連絡先の更新、プロパティの更新、タスク、およびタスクの更新。
- クライアントからハブ トランスポート サーバーに送信中の送信メール。電子メール メッセージが送信者のメールボックス サーバーのみに存在する期間があります。
トランスポート収集設定を構成する方法の詳細については、「ローカル連続レプリケーションのトランスポート収集を構成する方法」を参照してください。
Exchange 管理コンソールの拡張機能
Exchange 2007 SP1 では、いくつかの新たなユーザー インターフェイス要素が加えられ、LCR を含む高可用性機能の管理作業が強化されました。これらの改善点には次のものがあります。
- トランスポート収集のユーザー インターフェイス** [組織の構成]** 作業領域では、[ハブ トランスポート] ノードに新しい [グローバル設定] タブが追加されています。このタブには、組織のトランスポート収集の設定の構成に使用できる [トランスポート設定のプロパティ] ページが含まれます。
- [ストレージ グループあたりの最大サイズ (MB)] 各ストレージ グループのトランスポート収集キューの最大サイズを指定します。
- [最大保存期間 (日)] トランスポート収集キューに電子メール メッセージを保持する期間を指定します。
- [連続レプリケーションの管理] 管理者が連続レプリケーションを中断、再開、更新、および復元できるようにする、追加のユーザー インターフェイス コントロールが Exchange 管理コンソールに追加されています。これらのコントロールは、次の Exchange 管理者シェル コマンドレットを使用することと同じです。
- Suspend-StorageGroupCopy
- Resume-StorageGroupCopy
- Update-StorageGroupCopy
- Restore-StoreGroupCopy
これらのコマンドレットと、対応する Exchange 管理コンソールのタスクを使用すると、LCR 環境と CCR 環境の両方で連続レプリケーションを管理できます。
状態および監視の拡張機能
Exchange 2007 SP1 には、Exchange 2007 の管理性を強化するために設計されたいくつかの変更点も導入されています。これらの変更によって Exchange 2007 RTM のクラスタ レポート機能が改善され、また連続レプリケーション環境の予防的監視を目的とする機能が追加されています。具体的には、変更点と拡張機能は、Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットで判明していた弱点を修正し、Test-ReplicationHealth と呼ばれる新しいコマンドレットを導入し、トランスポート収集の対象である損失時間への可視性を改善しています。
Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットの強化
Exchange 2007 RTM では、Get-StorageGroupCopyStatus により報告される状態と連続レプリケーションのパフォーマンス カウンタが正確でなく誤ったものとなる、次のようないくつかの状態が存在します。
- アクティブでない (たとえば、変更されていない) ストレージ グループが正常な状態ではない可能性があるときに、このストレージ グループの状態が Healthy と報告されることがあります。この状況は、ログが再生されるまで、正常ではない状態が検出されなかったために発生する場合があります。
- レプリケーションの初期化中は、レプリケーションの状態が再評価されているために正確でないことがあります。初期化が完了すると、状態は更新されます。
- ストレージ グループのデータベースのマウントが解除されている場合は、LastLogGenerated フィールドの値が間違っている可能性があります。
- ログ ストリームの途中に足りないログが 1 つ以上ある場合、パッシブ コピーは引き続き回復を試み、これによりレプリケーションの状態が Failed と Healthy の間で切り替わります。これが発生すると、再生とコピーのキューは拡大し続けます。
- まれに、ログの検証が正常に行われても、再生に失敗することがあります。この場合、システムは回復を試みるときに、状態を Failed と Healthy の間で切り替えます。これが発生すると、再生とコピーのキューは拡大し続けます。
Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットも強化され、新しく状態情報を追加されました。
- Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットは、ターゲット コンピュータ上の Microsoft Exchange レプリケーション サービスがネットワーク経由でアクセスできない場合、ServiceDown という SummaryCopyStatus を報告します。
- Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットは、ターゲット コンピュータ上の Microsoft Exchange レプリケーション サービスが起動時の初期確認を完了していない場合、Initializing という SummaryCopyStatus を報告します。また、この状態をブール値として表現するために、新しいパフォーマンス カウンタも作成されています。
- Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットは、増分再シードを完了していない場合、Synchronizing という SummaryCopyStatus を報告します。
SummaryCopyStatus の値の新しい状態が表示されるのは、Exchange 2007 SP1 バージョンの Exchange 管理ツールを使用する場合のみです。Exchange 2007 RTM 版の Exchange 管理ツールを使用する場合、上記のすべての状態は Failed として報告されます。
Test-ReplicationHealth コマンドレット
Exchange 2007 SP1 には、Test-ReplicationHealth と呼ばれる新しいコマンドレットが導入されています。このコマンドレットは、連続レプリケーションおよび連続レプリケーション パイプラインの予防的監視用に設計されています。Test-ReplicationHealth コマンドレットは、レプリケーション、クラスタ サービス、およびストレージ グループ レプリケーションのすべての側面をチェックし、状態を再生して、レプリケーション システムの詳細な概要を提供します。具体的には、クラスタ内のノード上で実行された場合、Test-ReplicationHealth コマンドレットは次の表で説明されるテストを実行します。
Test-ReplicationHealth コマンドレットにより実行されるテスト
テスト | 説明 |
---|---|
クラスタ ネットワークの状態 |
ローカル ノード上で検出された、クラスタにより管理されるすべてのネットワークが実行中であることを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
クォーラム グループの状態 |
クォーラム リソースを含むクラスタ グループが Healthy であることを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
ファイル共有クォーラムの状態 |
ファイル共有監視付きのマジョリティ ノード セット クォーラムにより使用されている FileSharePath の値が到達可能であることを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
クラスタ化メールボックス サーバー グループの状態 |
グループのすべてのリソースがオンラインであることを確認することにより、クラスタ化メールボックス サーバーが Healthy であることを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
ノードの状態 |
クラスタ内のノードで一時停止状態のものがないことを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
DNS 登録の状態 |
[DNS 登録の続行を要求] 設定のあるすべてのクラスタ管理ネットワーク インターフェイスがドメイン ネーム システム (DNS) 登録を通過したことを確認します。このテストは CCR 環境でのみ実行されます。 |
レプリケーション サービスの状態 |
ローカル コンピュータ上の Microsoft Exchange レプリケーション サービスが Healthy であることを確認します。 |
ストレージ グループのコピーの中断 |
連続レプリケーションが有効であるストレージ グループすべてについて連続レプリケーションが中断していないかどうかを確認します。 |
ストレージ グループのコピーの失敗 |
ストレージ グループ コピーで失敗の状態にあるものがないかどうかを確認します。 |
ストレージ グループのレプリケーション キューの長さ |
レプリケーション コピー キューの長さが、しきい値のベスト プラクティスより長いストレージ グループがないかどうかを確認します。現在、これらのしきい値は以下のとおりです。
|
フェールオーバー後にマウントが解除されたデータベース |
フェールオーバーが発生した後、データベースがマウント解除されていたり、失敗していないかどうかを確認します。このテストは、フェールオーバーの結果として障害が発生したデータベースのみをチェックします。 |
パフォーマンスの強化
Exchange 2007 SP1 では、高可用性の展開に利点をもたらすパフォーマンスの改善をいくつか行っています。連続レプリケーション環境におけるストレージ グループのパッシブ コピーのあるディスクでの I/O 削減などの改良点があります。Exchange 2007 SP1 では、連続レプリケーションのアーキテクチャの設計が変更され、ログ再生処理のインスタンス間に、データベース キャッシュがストレージ グループ コピー用に保持されるようになりました。ログ再生処理のインスタンス間にデータベース キャッシュがストレージ グループ コピー用に保持されることによって、Microsoft Exchange レプリケーション サービスが Extensible Storage Engine (ESE) のデータベース キャッシング機能を活用できるようになります。これは、パッシブ コピーの LUN 上で生じるディスク I/O を削減するものです。これに対し Exchange 2007 RTM では、ログ再生処理のバッチごとに新しいデータベース キャッシュが作成されていました。これは時として、パッシブ LUN 上のディスク I/O 処理を、アクティブ LUN 上のディスク I/O の 2 倍から 3 倍にするものでした。
スタンバイ連続レプリケーションの LCR による使用
スタンバイ連続レプリケーション (SCR) は、Exchange 2007 SP1 で導入された新機能です。SCR は既存の連続レプリケーション機能を拡張し、Exchange 2007 メールボックス サーバーに対して、新しいデータ可用性シナリオを有効化します。SCR は、LCR および CCR で使用されるのと同じログ配布および再生テクノロジを使用して、追加の展開オプションと構成を提供します。
SCR によって、ユーザーは連続レプリケーションを使用して、スタンドアロン メールボックス サーバーから (LCR の有無にかかわらず)、またシングル コピー クラスタ (SCC) および CCR 環境のクラスタ化メールボックス サーバーから、メールボックス サーバー データをレプリケートできます。
SCR によって作成され保持されるメールボックス サーバー データのコピーのアクティブ化プロセスは手動で、重大な障害が発生したときの使用を目的としています。このプロセスは、再起動や他の迅速な手段で回復できる、サーバーの単純な機能停止のために使用するものではありません。SCR の対象をアクティブ化するには、データベースの移植性機能、サーバー回復オプション (Setup /m:RecoverServer)、または、メールボックス サーバーがクラスタ化されている場合、クラスタ化メールボックス サーバー回復オプション (Setup /RecoverCMS) を使用できます。ユーザーが選択するオプションは、使用する構成、および発生する障害の種類に基づきます。
SCR の詳細については、「スタンバイ連続レプリケーション」を参照してください。
詳細情報
以下のトピックでは、高可用性とデータの復元計画の一部として LCR を使用する状況および方法について説明します。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。