Exchange 2007 SP1 の高可用性新機能
適用先: Exchange Server 2007 SP1
トピックの最終更新日: 2009-03-18
Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) には、既存の高可用性機能の強化だけでなく、高可用性に関していくつかの新機能が導入されています。新機能および強化された機能は、Exchange 2007 サーバーの役割に対してデータおよびサービスの可用性を実現できるシナリオを拡張します。新しいシナリオを使用すると、組織が高可用性シナリオとサイトの復元シナリオを分離したり、それぞれの分離された領域で組織固有のニーズに合わせて構成を展開したりすることができます。
Exchange 2007 SP1 では、次の高可用性の新機能および既存の高可用性機能の強化が利用できます。
- スタンバイ連続レプリケーション (SCR)
- Windows Server 2008 における次の機能のサポート :
- 複数のサブネット フェールオーバー クラスタ
- 動的ホスト構成プロトコル (DHCP) のインターネット プロトコル バージョン 4 (IPv4)
- IPv6
- Exchange およびフェールオーバー クラスタのネットワーク構成
- 新しいクォーラム モデル (ディスクおよびファイル共有監視)
- クラスタ連続レプリケーション (CCR) 環境における冗長クラスタ ネットワークの連続レプリケーション (ログ配布およびシード)
- レポートおよび監視の機能強化
- パフォーマンスの向上
- トランスポート収集の機能強化
- Exchange 管理コンソールの機能強化
これらの各機能については、これらの機能の計画、展開、および管理の方法に関するドキュメントへのリンクと共に、後で説明します。次の表は、Windows Server 2003 および Windows Server 2008 のフェールオーバー クラスタ機能に対する Exchange 2007 のサポートをまとめたものです。
Exchange 2007 SP1 でサポートされるフェールオーバー クラスタ機能
Windows Server 2003 | Windows Server 2008 | Exchange 2007 のサポート |
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共有ディスクのクォーラム |
非マジョリティ : ディスク専用クォーラム |
サポートされていますが、Windows Server 2008 ではお勧めしません。 |
マジョリティ ノード セットのクォーラム |
ノード マジョリティ クォーラム |
サポートされています。 |
ファイル共有監視付きのマジョリティ ノード セットのクォーラム |
ノードおよびファイル共有マジョリティ クォーラム |
サポートされており、CCR にお勧めします。 |
ファイル共有監視付きの共有ディスクのクォーラムまたはマジョリティ ノード セットのクォーラム |
ノードおよびディスク マジョリティ クォーラム |
サポートされており、シングル コピー クラスタ (SCC) にお勧めします。 |
8 ノードのクラスタ |
16 ノードのクラスタ |
SCC 専用の 8 ノードのクラスタ(CCR は 2 ノードのクラスタです)。 |
IPv4 アドレス リソース |
IPv4 および IPv6 アドレス リソース |
サポートされています。ただし、IPv4 経由の IPv6 のトンネリングは Windows Server 2008 でサポートされていますが、Exchange 2007 ではサポートされていません。 |
静的 IPv4 アドレス |
DHCP-IPv4 アドレス |
サポートされていますが、運用環境ではお勧めしません。 |
各クラスタ ネットワークに必要なシングル サブネット |
クラスタ ネットワークでサポートされている複数のサブネット |
SCC および CCR でサポートされています。 |
スタンバイ連続レプリケーション
SCR は、Exchange 2007 SP1 で導入された新機能です。SCR は Exchange 2007 RTM 内の既存の連続レプリケーション機能を拡張し、Exchange 2007 メールボックス サーバーの新しいデータ可用性シナリオを使用可能にします。SCR では、追加の展開オプションおよび構成を提供するため、ローカル連続レプリケーション (LCR) および CCR で使用する同一のログ配布および再生テクノロジを使用します。SCR は LCR および CCR に似ていますが、以下の特性は SCR に固有のものです。
- SCR ではストレージ グループごとに複数のターゲットがサポートされています。LCR および CCR では、レプリケーション ターゲットはストレージ グループ 1 つにつき 1 つだけです (パッシブ コピー)。
- SCR では管理者がレプリケーションのラグ タイムを指定できます。これはさまざまなシナリオで役に立ちます。たとえば、NodeA から NodeB への損失の大きいフェールオーバーのイベントでは、失われたログ ファイルがリモート NodeM 上で再生された場合、NodeM は再シードする必要があります。ただし、コピーされたが、再生されない場合、ログは削除される可能性があります。その場合、新しいログ ファイルをコピーして、後で再生することができます。このイベントでは、NodeM 上のコピーの再シードは必要ありません。
- CCR や LCR とは異なり、SCR のコピーはバックアップできません。SCR を使用している場合、SCR コピーのデータベース ヘッダーは更新されます。さらに、ソース ストレージ グループのバックアップが行われると、ログ ファイルの端が切り捨てられます。
SCR では連続レプリケーションを使用して、スタンドアロンのメールボックス サーバーか、SCC または CCR 環境のクラスタ化メールボックス サーバーからメールボックス サーバーのデータをレプリケートできます。
SCR により作成および維持されるメールボックス サーバー データのコピーをアクティブ化する処理は、手動で行われ、重大な障害が発生した場合に使用されるように設計されています (再起動やその他の簡単な手段により回復できる単純なサーバーの停止用ではありません)。データベースの移植性、サーバー回復のオプション (Setup /m:RecoverServer)、またはメールボックス サーバーがクラスタ化されている場合はクラスタ化メールボックス サーバーの回復オプション (Setup /RecoverCMS) を使用すると、SCR ターゲットをアクティブ化することができます。ユーザーが選択するオプションは、使用する構成、および発生する障害の種類に基づきます。
SCR の詳細については、「スタンバイ連続レプリケーション」を参照してください。
Windows Server 2008 のサポート
Windows Server 2008 には Exchange 2007 SP1 でサポートされている高可用性機能が含まれています。Windows Server 2008 では、フェールオーバー クラスタ (Windows Server 2003 とそれ以前のバージョンではサーバー クラスタと呼ばれています) の機能強化は、クラスタの単純化、セキュリティ保護に役立てること、クラスタの安定性の強化を目的としています。また、クラスタのセットアップおよび管理が簡単になったので、基になるクラスタのセキュリティ、ネットワーク機能、およびストレージ コンポーネントが強化されました。フェールオーバー クラスタの強化機能の完全な一覧については、「Windows Server 2008 のフェールオーバー クラスタリング」を参照してください。
オペレーティング システム プラットフォームとしての Windows Server 2008 のサポートだけでなく、Exchange 2007 SP1 では、次の Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタ機能のサポートも導入されています。これらの機能のサポートは、コマンド ライン バージョン (Setup.com) およびグラフィカル ユーザー インターフェイス (GUI) バージョン (Setup.exe、Exchange Server 2007 セットアップ ウィザードとも呼ばれます) の Exchange 2007 セットアップにも組み込まれました。
複数のサブネット フェールオーバー クラスタのサポート
Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタによって、レガシ クラスタで行われていた方法とは大きく異なる新しいネットワーク機能が導入されています。たとえば、Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタでは複数のサブネットのサポートが導入されています。Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタの実行中、Exchange 2007 SP1 では 2 つのサブネット間のフェールオーバーについて地理的に分散されているクラスタがサポートされます。このサポートには、両 SCC、および CCR 環境のメールボックス サーバーが含まれています。
Windows Server 2008 フェールオーバーのクラスタ化から開始し、個々のクラスタ ノードを分離されたルーティング ネットワークに配置できるようになりました。この場合、すべてのクラスタ ノードが認識しているすべてのネットワークに対して直接のローカル接続を持つことは考えにくいので、IP アドレス リソース (ネットワーク名リソースなど) に依存するリソースによって OR ロジックを実装する必要があります。これにより、サービスまたはアプリケーションがリモート ノードにフェールオーバーすると、IP アドレスおよびネットワーク名のリソースが容易にオンラインになります。
重要 : |
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SCC または CCR 環境のすべてのノードは同じ Active Directory サイトである必要があります。Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタには異なる Active Directory サイトのメンバになるクラスタ ノードのサポートが導入されますが、この構成は Exchange 2007 ではサポートされません。 |
複数のサブネットのフェールオーバー クラスタの使用中に、ネットワーク名リソースと関連付けられている IP アドレスはオンラインになると、ドメイン ネーム システム (DNS) で動的に登録されます (動的更新のために構成されている場合)。よって、オンラインのそれらの IP アドレス リソースのみがクライアントに返されます。クラスタ ノードを別のルーティング ネットワークに置くことが可能になり、ユーザー データグラム プロトコル (UDP) (ユニキャスト) で実装された信頼できるセッション プロトコルを使用するように通信方法が変更されたため、Windows Server 2003 の地理的に分散されたクラスタのネットワーク要件は Windows Server 2008 で適用できなくなりました。その結果、組織ではサブネットに広がる仮想 LAN (VLAN) 技術を使用することなく、2 つの物理的なデータセンター間に SCC または CCR 環境を展開できます。
物理的に分散された複数のサブネット フェールオーバー クラスタにおいて展開されたクラスタ化メールボックスの移動またはフェールオーバーが発生すると、クラスタ化メールボックス サーバーの名前は維持されますが、その名前に割り当てられる IP アドレスは維持されません。クライアント サーバーおよびその他のサーバーに対するこのサーバーの可用性は、DNS 全体にわたる新しい IP アドレスの適用によって決まります。DNS の適用の発生には、時間がかかることがあります。このため、クラスタ化メールボックス サーバー DNS ホスト レコードの Time To Live (TTL) の値は 10 分に設定することをお勧めします。
内部 Microsoft Outlook クライアントには新しい IP アドレスを使用して接続するための新規または再構成のプロファイルは不要ですが、クラスタ化メールボックス サーバー名の名前の解決が古い IP アドレスから新しい IP アドレスに移動するようにローカル DNS キャッシュが消去されるのを待機する必要があります。IP アドレスが適切な DNS サーバーに伝達された後、Outlook クライアント上の DNS キャッシュはクライアントのコマンド ラインで次のコマンドを使用して消去することができます。
ipconfig /flushdns
DHCP-IPv4 のサポート
Windows Server 2008 フェールオーバー クラスタ化の機能は、静的エントリ経由と同様に、クラスタ IP アドレス リソースが DHCP サーバーからアドレス指定を取得する場所にあります。クラスタ ノード自身が DHCP サーバーから IP アドレスを取得するように構成されている場合、既定の動作ですべてのクラスタ IP アドレス リソース用に IP アドレスが自動的に取得されます。クラスタ ノードによって IP アドレスが静的に割り当てられた場合、クラスタ IP アドレス リソースは同様に静的な IP アドレスで構成する必要があります。そのため、クラスタ IP アドレス リソースの IP は、物理ノードおよびそのノード上で各固有のインターフェイスを構成した後に、割り当てられます。
IPv6 のサポート
Windows Server 2008 およびクラスタ サービスは IPv6 をサポートしています。これには、単独または 1 つのクラスタ内で一緒に IPv6 IP アドレス リソースおよび IPv4 IP アドレス リソースをサポートできることも含まれています。さらに、フェールオーバー クラスタはイントラサイト自動トンネリング アドレス設定プロトコル (ISATAP) もサポートしており、DNS での動的な登録が許可されている IPv6 アドレスのみをサポートします (AAAA ホスト レコードおよび IP6.ARPA 逆引き参照ゾーン)。現在、IPv6 アドレスには 3 つの種類、グローバル、サイト ローカル、およびリンク ローカルがあります。リンク ローカル アドレスの動的 DNS 登録は行われないので、リンク ローカル アドレスはクラスタでは使用できません。
注 : |
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IPv6 (Internet Protocol Version 6) アドレスおよび IP アドレスの範囲は、Windows Server 2008 を実行しているコンピュータに Exchange 2007 SP1 が展開されており、そのコンピュータで IPv6 と IPv4 (Internet Protocol Version 4) の両方が有効化されており、ネットワークで両方の IP アドレス バージョンがサポートされている場合にのみ使用できます。Exchange 2007 SP1 がこの構成で展開されている場合、すべてのサーバーの役割が、IPv6 アドレスを使用しているデバイス、サーバー、およびクライアントとデータを送受信できます。Windows Server 2008 の既定のインストールでは、IPv4 と IPv6 がサポートされています。Exchange 2007 SP1 が Windows Server 2003 にインストールされている場合、IPv6 アドレスはサポートされません。Exchange 2007 SP1 での IPv6 アドレスのサポートの詳細については、「Exchange 2007 SP1 および SP2 での IPv6 サポート」を参照してください。 |
Exchange およびフェールオーバー クラスタのネットワーク構成
Exchange 2007 SP1 で SCC または CCR を構成する際には、以下の要件を確認してください。
- IPv6 および DHCP IPv4 は Windows Server 2008 のみでサポートされています。Exchange 2007 が Windows Server 2003 で実行されている場合にはいずれも使用できません。
- DHCP IPv6 は Windows Server 2008 またはクラスタ サービスではサポートされていません。そのため、これは Exchange 2007 でもサポートされていません。システムによって割り当てられた動的 IPv6 アドレスのみがサポートされています。
- 静的 IPv6 アドレスは Windows Server 2008 およびクラスタ サービスでサポートされています。ただし、静的 IPv6 アドレスの使用はベスト プラクティスに反しています。そのため、Exchange 2007 ではセットアップ時の静的 IPv6 アドレスの構成はサポートされていません。
- IPv4 経由の IPv6 のトンネリングは Windows Server 2008 のクラスタ化でサポートされていますが、Exchange セットアップではこの種類の IP アドレス リソースを作成できません。
前述の変更に対応するため、Exchange 2007 SP1 のセットアップは修正されました。Exchange Server 2007 セットアップ ウィザードを使用する際には、クラスタ IP アドレスおよびネットワーク名リソースの構成に追加のページやフィールドが使用できることに注意してください。また、Setup.com の /NewCMS および /RecoverCMS オプションは、以下の表に記載されているいくつかの新しい省略可能なパラメータに対応するため、更新されました。
Exchange 2007 SP1 に追加された /NewCMS および /RecoverCMS の省略可能なパラメータ
パラメータ | 説明 |
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CMSIPV4Addresses |
クラスタ化メールボックス サーバーで 1 つまたは 2 つの静的 IPv4 アドレスを指定するために使用するコンマ区切りリスト。2 つの静的 IPv4 アドレスを指定する場合、それらが別々のサブネット上である必要があります。 |
CMSIPV4Networks |
1 つまたは 2 つの IPv4 クラスタ ネットワーク名を指定するために使用するコンマ区切りリスト。これらの名前は DHCP-IPv4 リソースの作成で使用します。 |
CMSIPV6Networks |
1 つまたは 2 つの IPv6 クラスタ ネットワーク名を指定するために使用するコンマ区切りリスト。これらの名前は IPv6 リソースの作成で使用します。このパラメータは CMSIPV4Addresses パラメータや CMSIPV4Networks パラメータと一緒に使用できます。 |
注 : |
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CMSIPV4Addresses パラメータと CMSIPV4Networks パラメータは同時に使用することができません。 |
CMSIPAddress パラメータは Microsoft Exchange Server 2007 の RTM (Release to Manufacturing) 版の /NewCMS および /RecoverCMS に必要なパラメータでしたが、今でもクラスタ化メールボックス サーバーで 1 つの静的 IPv4 アドレスを指定するために使用されます。ただし、セットアップには 4 つの使用可能なパラメータのうちのいずれかを指定するだけで十分なので、Exchange 2007 SP1 の CMSIPAddress パラメータは省略可能になりました。
前述の表のパラメータは Windows Server 2008 のみで使用することができます。
Windows Server 2008 の新しいクォーラム モデル
ネットワーク問題が発生した場合に、クラスタ ノード間の通信に影響を及ぼす可能性があります。小さいノード セットはネットワークが機能している部分では同時に通信できますが、ネットワークの別の部分にある異なるノード セットとは通信できません。この状況は深刻な問題を引き起こす場合があります。このスプリット ブレインの状況では、ノード セットが他のノードの状態について厳密な情報を持っていないとしても、少なくとも 1 つのノード セットがクラスタとしての動作を停止する必要があります。
クラスタの分離によって生じる問題を回避するには、クラスタ ソフトウェアで、クラスタとして動作しているノード セットが指定時間にクォーラムを含んでいるかどうかを判断する投票アルゴリズムを使用する必要があります。特定のクラスタに特定のノード セットおよび特定のクォーラム構成があるので、クラスタはマジョリティ (またはクォーラ) を構成している投票数を認識します。この数がマジョリティ未満の場合、クラスタは動作を停止します。ノードは、別のノードがネットワークに再度表示される場合に今後も他のノードの存在を監視しますが、クォーラムがもう一度存在するまでは、クラスタとしての動作を開始しません。
フェールオーバー クラスタのクォーラム構成では、多すぎるエラーのためにクラスタの動作が停止するポイントが求められます。この内容に関するエラーはノードのエラーで、監視ディスクまたは監視ファイル共有である場合があります (クラスタ構成のコピーが含まれています)。Windows Server 2008 では、4 つの可能なクォーラム構成の中から選択できます。
- ノード マジョリティ このモデルは奇数のノードを持つクラスタにお勧めします。ノード数から 1 を引いて 2 で割った数のエラーに耐えることができます。たとえば、7 ノード クラスタは 3 個のノードのエラーに耐えることができます。
- ノードおよびディスク マジョリティ このモデルは偶数のノードを持つクラスタにお勧めします。監視ディスクがオンラインのままである場合、ノード数の半分のエラーに耐えることができます。たとえば、監視ディスクを備えた 6 ノード クラスタは 3 個のノードのエラーまで耐えることができます。また、監視ディスクがオフラインまたは機能していない場合、ノード数を 2 で割って 1 を引いた数のエラーに耐えることができます。たとえば、機能していない監視ディスクを備えた 6 ノード クラスタは 2 個のノードのエラーまで耐えることができます (3-1 = 2)。
- ノードおよびファイル共有マジョリティ このモデルは、特別な構成を持つクラスタ用に設計されており、CCR 環境のクラスタ化メールボックス サーバーにお勧めします。このモデルはノードおよびディスク マジョリティ モデルと同じ方法で機能しますが、監視ディスクではなく、監視ファイル共有を使用します。
- 非マジョリティ :ディスクのみ このモデルはサポートされていますが、お勧めしません。1 以外のすべてのノードのエラーに耐えることができます。しかし、ディスクがエラーの単一ポイントであるため、この構成はお勧めしません。
冗長化されたクラスタ ネットワーク上での連続レプリケーション
Exchange 2007 RTM では、CCR 環境でコピーおよびシードを行うすべてのトランザクション ログ ファイルがパブリック ネットワーク上で生成されます。この構成には次のような制限があります。
- パッシブ ノードが数時間使用できない場合、転送する必要がある多数のログが作成される可能性があります。パッシブ ノードが使用可能になった時点で、これらのログの移動をできるだけ迅速に行う必要があります。パブリック ネットワーク上でログをコピーすることにより、ログの移動はクライアント トラフィックと競合します。これは、クライアント トラフィックに影響し、再同期を遅らせます。
- パブリック ネットワークに障害が発生した場合、ログ データが使用できる場合であっても、フェールオーバーには損失が生じます。
- ログ通信に関して孤立したネットワークを使用すると、暗号化を使用したり、関連するパフォーマンス ペナルティが発生したりすることなく、メッセージング データをセキュリティ保護することができます。
- 状況によっては、ログ ストームが発生することがあります。ログ ストームが発生すると、システムには著しく高いレプリケーションの負荷が生じます。この状況では、クライアントとの通信に使用するのと同じネットワーク上でログ データを伝達する必要がある場合、クライアント スタベーションが発生する可能性があります。
これらの問題がすべて同じ頻度で生じるわけではありません。ただし、パッシブ ノードは定期的な保守作業のためにオフラインにされるため、第 1 の問題は事実上数か月ごとに確実に発生します。
Exchange 2007 SP1 は、管理者がログ配布用にクラスタ内に 1 つ以上の混合ネットワーク (たとえば、内部クラスタ ハートビート トラフィックとクライアント トラフィックの両方をサポートするクラスタ ネットワーク) を作成できるようにすることで、上記の問題の影響を最小限にします。また Exchange 2007 SP1 では、管理者はシードに使用される特定のネットワークを指定することができます。
注 : |
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ログ配布またはシードに使用するクラスタ ネットワークは混合ネットワークとして構成する必要があります。混合ネットワークは、クラスタ (ハートビート) およびクライアント アクセス トラフィックの両方に対して構成されているクラスタ ネットワークです。また、連続レプリケーション ホスト名を使用して構成されているネットワーク アダプタでは、管理者は "TCP/IP 詳細設定" プロパティ ダイアログ ボックスの [この接続のアドレスを DNS に登録する] チェック ボックスをオンにする必要があります。ネットワーク アダプタにより使用される DNS サーバーは、パブリックまたはプライベート ネットワーク上に配置できますが、その場所に関係なく、ホスト名解決を行えるよう、両方のノードによりアクセスできる必要があります。 |
混合ネットワーク上のログ ファイルのコピーは Enable-ContinuousReplicationHostName と呼ばれる新しい Exchange 管理シェル コマンドレットを使用して構成することができます。また、この機能をオフにするには、Disable-ContinuousReplicationHostName コマンドレットを使用します。CCR 環境にクラスタ化メールボックス サーバーが存在するようになった後、管理者はクラスタの両方のノードで Enable-ContinuousReplicationHostName を実行して、追加の IP アドレスとホスト名を指定することができますが、これらは、各ノードに関連付けられた専用のクラスタ グループに作成されます。この作業が完了してから、構成が成功した直後、および新しいネットワークが稼働していることを確認した時点で、Microsoft Exchange レプリケーション サービスは、ログ コピー用に新規作成されたネットワークの使用を開始します。新しい複数のネットワークが作成された場合、Microsoft Exchange レプリケーション サービスはそれらから 1 つをランダムに選択します。指定されたネットワークが使用できなくなった場合、Microsoft Exchange レプリケーション サービスは他のレプリケーション ネットワークの使用を自動的に開始します。また、使用できるネットワークがない場合は、5 分以内にログ配布用にパブリック ネットワークの使用を開始します。(Microsoft Exchange レプリケーション サービスのネットワーク検出は 5 分ごとに行われます)。優先されるレプリケーション ネットワークが再び使用できるようになった場合、Microsoft Exchange レプリケーション サービスは自動的にログ配布にそのネットワークの使用に戻ります。これらのコマンドレットの詳細については、「Enable-ContinuousReplicationHostName」および「Disable-ContinuousReplicationHostName」を参照してください。
冗長化されたクラスタ ネットワークでのシードのサポートは、Update-StorageGroupCopy コマンドレットを使用して構成します。このコマンドレットは Exchange 2007 SP1 で更新され、DataHostNames と呼ばれる新しいパラメータが追加されています。このパラメータは、シードにどのクラスタ ネットワークを使用するかを指定するために使用されます。Exchange 2007 SP1 での Update-StorageGroupCopy コマンドレットに対する変更の詳細については、「Update-StorageGroupCopy」を参照してください。
クラスタ ネットワークが連続レプリケーション用に作成された後、Get-ClusteredMailboxServerStatus コマンドレットを使用すると、連続レプリケーション処理で有効になったクラスタ ネットワークについて更新された情報を表示することができます。新しい出力の詳細には次のものがあります。
- OperationalReplicationHostNames:{Host1,Host2,Host3}
- FailedReplicationHostNames:{Host4}
- InUseReplicationHostNames:{Host1,Host2}
Exchange 2007 SP1 での Get-ClusteredMailboxServerStatus コマンドレットに対する変更の詳細については、「Get-ClusteredMailboxServerStatus」を参照してください。
Windows Server 2003 の連続レプリケーションに関するクラスタ ネットワークの有効化の詳細については、「Windows Server 2003 でログ配布とシード用に冗長クラスタ ネットワークを有効にする方法」を参照してください。
Windows Server 2008 の連続レプリケーションに関するクラスタ ネットワークの有効化の詳細については、「Windows Server 2008 でログ配布とシード用に冗長クラスタ ネットワークを有効にする方法」を参照してください。
連続レプリケーションに関するクラスタ ネットワークの無効化の詳細については、「クラスタ ネットワークの連続レプリケーションを無効にする方法」を参照してください。
レポートおよび監視の機能強化
Exchange 2007 SP1 では、Exchange 2007 の管理性を強化する変更もいくつか導入されています。これらの変更によって Exchange 2007 RTM のクラスタ レポート機能が改善され、また連続レプリケーション環境の予防的監視を目的とする機能が追加されています。具体的には、変更点と拡張機能は、Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットで判明していた弱点を修正し、Test-ReplicationHealth と呼ばれる新しいコマンドレットを導入し、トランスポート収集の対象である損失時間への可視性を改善しています。これらのレポートおよび監視の機能強化の詳細については、「連続レプリケーションの監視」を参照してください。
パフォーマンスの向上
Exchange 2007 SP1 では、高可用性展開の利益になる、パフォーマンスの改善が行われています。これらの改善点には次のものがあります。
連続レプリケーション環境にストレージ グループのパッシブ コピーを含むディスクの I/O 削減 Exchange 2007 SP1 では、データベースのキャッシュがログ再生処理のバッチ間にあるパッシブ ノードで保持されるように連続レプリケーション アーキテクチャの設計が修正されました。ログ再生処理のバッチ間でデータベース キャッシュが保持されることにより、Microsoft Exchange レプリケーション サービスは Extensible Storage Engine (ESE) のデータベース キャッシュ機能を活用できるようになるため、パッシブ コピーの論理ユニット番号 (LUN) 上で発生するディスク入出力 (I/O) の量が削減されます。これに対して、Exchange 2007 RTM では、ログ再生処理の各バッチに対して新しいデータベース キャッシュが作成されていたため、場合によってはパッシブ ノード上のディスク I/O 処理が、アクティブ ノード上のディスク I/O の 2 ~ 3 倍にまでなっていました。
CCR 環境のノード間におけるクラスタ化メールボックス サーバーの迅速な移動 これらの改善によって、クラスタ化メールボックス サーバーは 2 分以下でノード間を移動できます。これには、(Move-ClusteredMailboxServer コマンドレットを使用した) 管理者により実行される移動と、クラスタ サービスにより管理されるフェールオーバーが含まれます。CCR 環境で高速な移動を実現するために、データベース キャッシュをフラッシュすることなく、データベースがオフラインになります。SCC では、クラスタ化メールボックス サーバーの移動には、約 5 分かかります。データベース キャッシュのフラッシュは、クラスタ化メールボックス サーバーの移動前に行われます。これは、クライアントがデータベースに接続されたままにするための便宜上のフラッシュです。この動作により、クラスタ化メールボックス サーバーが別のノードに移動する場合に発生するダウンタイムの時間が短縮されます。
フェールオーバー プロセス中に、フラッシュ操作の状態を示すイベント ID 9868 が 2 回ログに記録され、レプリケーションの状態を示すイベント ID 113 がログに記録されます。これらのイベントは次のようになります。イベント ID : 9868
ソース : MSExchangeIS
カテゴリ : 全般
種類 : 情報
説明 : サーバー '<メールボックス サーバー名>' のキャッシュのフラッシュは、0 個のストレージ グループで完了しましたが、指定したチェックポイントの深さに到達しませんでした。
イベント ID : 9868
ソース : MSExchangeIS
カテゴリ : 全般
種類 : 情報
説明 : サーバー '<メールボックス サーバー名>' のキャッシュのフラッシュは、2 個のストレージ グループで完了しましたが、指定したチェックポイントの深さに到達しませんでした。
イベント ID : 113
ソース : MSExchangeRepl
カテゴリ : Move
種類 : 情報
説明 : クラスタ化メールボックス サーバー '<メールボックス サーバー名>' の移動が完了する前に、インフォメーション ストアのキャッシュがフラッシュされました。データ : ストレージ グループ '<メールボックス サーバー名>\<ストレージ グループ名>': チェックポイントの最初の深さは 19、最後の深さは 17 です。
ストレージ グループ '<メールボックス サーバー名>\<2 番目のストレージ グループ名>': チェックポイントの最初の深さは 19、最後の深さは 13 です。
トランスポート収集の機能強化
トランスポート収集は、ハブ トランスポート サーバーの役割の機能です。トランスポート収集は、メールボックスが CCR 環境のクラスタ化メールボックス サーバーにある受信者に最近配信されたメッセージのキューを保持します。このキューは、メールの保存時間と合計の領域使用量によって制約されます。ロスレスでないフェールオーバーが発生すると、クラスタ化メールボックス サーバーから Active Directory サイト内のすべてのハブ トランスポート サーバーに対し、トランスポート収集キューにあるメールの再送信が自動的に要求されます。
Exchange 2007 SP1 では、トランスポート収集機能が以下の方法で強化されました。
- LCR のサポートトランスポート収集には、LCR 展開のサポートが含まれるようになりました。トランスポート収集の再配信の要求が自動回復プロセスの一部である CCR とは異なり、LCR 環境ではプロセスが手動になりました。Exchange 2007 SP1 では Restore-StorageGroupCopy コマンドレットが更新され、トランスポート収集発信要求を含むようになりました。このため、管理者が LCR 環境で Restore-StorageGroupCopy コマンドレットを用いてストレージ グループのパッシブ コピーをアクティブ化するときに、アクティブ化プロセスの一部としてトランスポート収集の発信要求が生じます。
- トランスポート収集の統計 ログ ファイルを失ったサーバーを回復する前に管理者に適切な情報を提供するため、トランスポート収集の機能が強化され、影響を受けるストレージ グループに対するメッセージが含まれている全ハブ トランスポート サーバーの現在の状態を知らせる統計情報が含まれるようになりました。これらの統計は、メッセージ数や最も古いメッセージの保存期間などの情報を含んでおり、Active Directory サイトの全ハブ トランスポート サーバーで利用できます。これらの統計は、DumpsterStatistics と呼ばれる Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットの新しいパラメータを使用すると、表示できます。この新しい値を使用する場合、Get-StorageGroupCopyStatus の出力には、アクセスできるすべてのハブ トランスポート サーバーからのトランスポート収集の統計およびアクセスできないハブ トランスポート サーバーの一覧が含まれます。以下に示すように、アクセスできるサーバーは DumpsterStatistics と呼ばれる複数の値を持つ構造に一覧表示され、アクセスできないサーバーは DumpsterStatisticsNotAvailable と呼ばれる複数の値を持つ文字列として一覧表示されます。
DumpsterStatistics: {HUB1 (最も古いタイムスタンプ; 収集のアイテム数; 収集サイズ), HUB2 (最も古いタイムスタンプ; 収集のアイテム数; 収集サイズ), HUB3 (最も古いタイムスタンプ; 収集のアイテム数; 収集サイズ)}
DumpsterStatisticsNotAvailable: {HUB4,HUB5}
前述の例の最も古いタイム スタンプは、ハブ トランスポート サーバーがメッセージを受信した時間であり、最初にメッセージがメールボックス サーバーに配信された時間ではありません。
Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットには OutstandingDumpsterRequests と呼ばれる複数の値を持つ新構造も含まれています。この構造には、以下に示すように、未処理の要求を持つハブ トランスポート サーバーおよび未処理の要求の時間範囲 (低 - 高) が含まれています。
OutstandingDumpsterRequests: {HUB1 (time-low;time_high), HUB5 (time_low;time_high)}
Exchange 管理コンソールの機能強化
Exchange 2007 SP1 には、Exchange 管理コンソールに新しい GUI 要素が含まれており、これらの要素は、クラスタ化メールボックス サーバーの管理および構成の機能が強化されるように設計されています。これらの改善点には次のものがあります。
クラスタ化メールボックス サーバーの管理ウィザード このウィザードは、CCR 環境と SCC の両方においてクラスタ化メールボックス サーバーの移動、停止、または開始に使用します。移動および停止の機能として省略可能な管理者のコメント フィールドがあり、ここには、管理者がクラスタ化メールボックス サーバーを移動したり、停止したりしている理由を入力できます。このウィザードは、以下の Exchange 管理シェル コマンドレットを使用した場合と同じ動作をします。
- Move-ClusteredMailboxServer
- Stop-ClusteredMailboxServer
- Start-ClusteredMailboxServer
[連続レプリケーションの管理] 管理者が連続レプリケーションを中断、再開、更新、および復元できるようにする、追加のユーザー インターフェイス コントロールが Exchange 管理コンソールに追加されています。これらのコントロールは、次の Exchange 管理者シェル コマンドレットを使用することと同じです。
- Suspend-StorageGroupCopy
- Resume-StorageGroupCopy
- Update-StorageGroupCopy
- Restore-StoreGroupCopy
これらのコマンドレットと、対応する Exchange 管理コンソールのタスクを使用すると、LCR 環境と CCR 環境の両方で連続レプリケーションを管理できます。
注 : CCR 環境では、ストレージ グループのコピーの更新ウィザードはパッシブ ノードのみから使用でき、ストレージ グループのコピーの復元ウィザードはアクティブ ノードのみから使用できます。 [クラスタ化メールボックス サーバー] タブ クラスタ内に存在するメールボックス サーバーの [サーバーのプロパティ] ダイアログ ボックスに新しいタブが追加されました。この情報は、CCR 環境と SCC の両方で使用できます。新しいタブには、クラスタ化メールボックス サーバーの詳細情報が提供されており、このタブによって管理者が CCR 環境内のクラスタ化メールボックス サーバーに関する AutoDatabaseMountDial プロパティの値を構成することができます。また、新しいタブに表示されている大部分の情報は、Get-ClusteredMailboxServerStatus コマンドレットを使用して利用できます。[クラスタ化メールボックス サーバー] タブの詳細情報については、「[サーバーのプロパティ] > [クラスタ化メールボックス サーバー] タブ」を参照してください。
[クラスタ連続レプリケーション] ページ CCR 環境で展開されるメールボックス サーバーの [ストレージ グループのプロパティ] ダイアログ ボックスに新しいページが追加されました。新しいプロパティ ページでは、クラスタ内の連続レプリケーションの状態に関する詳細情報が提供されます。[クラスタ連続レプリケーション] ページの詳細については、「[ストレージ グループのプロパティ] > [クラスタ連続レプリケーション] ページ」を参照してください。
詳細情報
Windows Server 2008 には、強化された機能や名前が変更された機能が含まれています。 Windows Server 2003 と Windows Server 2008 間の機能の変更に関する詳細については、「用語の変更」を参照してください。
参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。