モデレートされたトランスポートについて
適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3
トピックの最終更新日: 2010-08-05
Microsoft Exchange Server 2010 でモデレート トランスポート機能を使用すると、特定の受信者宛てに送信される電子メール メッセージがすべてモデレーターによって承認される必要があるように設定できます。モデレート受信者として受信者の種類を構成することができます。Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーはそれらの受信者宛てに送信されるメッセージすべてが必ず承認プロセスに進むようにします。
いずれの種類の組織でも、特定の受信者へのアクセスを制限する必要があります。最も一般的なシナリオは、大きな配布グループに送信されるメッセージを制御する必要がある場合です。組織の要件に応じて、エグゼクティブ メールボックスまたはパートナー連絡先に送信されるメッセージを制御する必要もあります。モデレート受信者を使用して、これらの作業を実行できます。
注意
以前のバージョンの Exchange では、モデレート受信者をサポートしていません。モデレート配布グループに送信されたメッセージは、Exchange Server 2007 を実行しているハブ トランスポート サーバー上で展開された場合、モデレート処理をバイパスして、その配布グループに属するすべてのメンバーに配布されます。Exchange 2010 組織内に Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーがあり、モデレート配布グループを使用する場合は、モデレート配布グループの展開サーバーとして Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーを指定する必要があります。これを行うことにより、配布グループに送信されるすべてのメッセージが必ずモデレートされます。
モデレート トランスポートは、Exchange 2010 承認フレームワークに依存します。承認フレームワークについては、「承認フレームワークについて」を参照してください。
トランスポート サーバーに関連する管理タスクについては、「トランスポート サーバーの管理」を参照してください。
モデレート トランスポート
モデレート トランスポート アプリケーションは、次のコンポーネントで構成されます。
カテゴライザー トランスポート カテゴライザーは、承認プロセスを開始します。メッセージ処理中にカテライザーがモデレート受信者を検出した場合、メッセージを調停メールボックスに再ルーティングします。
ストア ドライバー ストア ドライバーは、カテゴライザーがモデレートとしてマークするメッセージを処理します。ストア ドライバーは、そのようなメッセージが発生すると、元のメッセージを調停メールボックスに保存してモデレーターに承認要求を送信します。モデレーターが決定を応答すると、ストア ドライバーが調停メールボックスに保存されるメッセージに関する決定にマークを付けます。承認されたメッセージが情報アシスタントによって再度送信される場合、ストア ドライバーが承認ワークフロー ラッパーを削除するので、配信されたメッセージは送信者によって送信された元のメッセージと同一です。
情報アシスタント 情報アシスタント プロセスは調停メールボックスを監視します。情報アシスタントは、対象受信者に配信するために承認されたメッセージを送信キューに再送信するか、拒否されたメッセージを削除します。情報アシスタントは、送信者への拒否通知の送信も行います。さらに、調停メールボックスから古いメッセージまたは孤立したメッセージを削除することによって、調停メールボックスをクリーンアップします。たとえば、モデレーターが決定するのではなく承認要求を単に削除する場合は、調停メールボックス内の承認を待機する該当メッセージを情報アシスタントによって削除する必要があります。
調停メールボックス 調停メールボックスは、承認を待機している元のメッセージを保存するために使用されます。既定では、セットアップ中に 1 つの調停メールボックスがモデレート トランスポート用に作成されます。これは、すべてのモデレート受信者に対して使用されます。他の調停メールボックスを負荷分散の目的で追加できます。複数の調停メールボックスを使用している場合、モデレート受信者ごとに使用するメールボックスを指定する必要があります。
モデレート受信者のメッセージ フロー
メッセージのモデレートが有効になっている受信者にユーザーがメッセージを送信する場合、以下の図と手順に示すように、メッセージはその宛先へのパスに従います。
モデレートされたトランスポート メッセージ フロー
送信者は、メッセージを作成してモデレート受信者に送信します。
カテゴライザーは、メッセージを傍受し、それをモデレートとしてマークしてから、調停メールボックスに再ルーティングします。
ストア ドライバーは、調停メールボックスにメッセージを保存して、承認要求をモデレーターに送信します。
モデレーターは承認要求内のボタンを使用して、メッセージを受け付けるか拒否します。
ストア ドライバーは、調停メールボックスに保存された元のメッセージにモデレーターの決定をマークします。
情報アシスタントは、調停メールボックスに保存されたメッセージに対する承認状態を読み取ってから、モデレーターの決定に応じてメッセージを処理します。
モデレーターがメッセージを承認していたら、情報アシスタントがメッセージを送信キューに再送信して、メッセージが受信者に配信されます。
モデレーターがメッセージを拒否していたら、情報アシスタントは調停メールボックスからメッセージを削除してメッセージが拒否された受信者を通知します。
注意
モデレーターが 5 日以内にメッセージに応答しないと、情報アシスタントはそのメッセージを調停メールボックスから削除して、メッセージの期限が切れたことを送信者に通知します。
複数のモデレート受信者の処理
モデレートされた受信者とモデレートされない受信者の両方を含む受信者グループにメッセージを送信することが可能です。この場合は、別の承認プロセスがモデレート受信者ごとに発生します。
メッセージが 12 の受信者に送信され、そのいずれかがモデレート配布グループであるとします。カテゴライザーは、このメッセージを 2 つのメッセージに分割します。1 つのメッセージがモデレートされない 11 の受信者に直ちに配信され、2 番目のメッセージがモデレート配布グループの承認プロセスに送信されます。
メッセージが複数のモデレート受信者向けである場合、モデレート受信者ごとに別々のコピーが作成され、承認プロセスに送信されます。
モデレート配布グループには、その他のモデレート受信者も含まれる場合があります。この場合、配布グループへのメッセージが承認された後に、配布グループのメンバーであるモデレート受信者ごとに別々の承認プロセスが発生します。ただし、モデレート配布グループへのメッセージが承認された後の配布グループ メンバーの自動承認を有効にすることもできます。これを行うには、モデレート配布グループの BypassNestedModerationEnabled パラメーターを $true
に設定します。パラメーターおよび構文の詳細については、「Set-DistributionGroup」を参照してください。
モデレートのバイパス
モデレーターからのメッセージがモデレート受信者に直ちに配信され、承認プロセスをバイパスします。定義によって、モデレーターにはモデレート受信者に適したメッセージを決定するアクセス許可があります。
モデレートは、配布グループと動的配布グループの所有者に対してもバイパスされます。配布グループの所有者は、配布グループ メンバーシップの管理を行うことができますが、それに対して送信されるメッセージのモデレートができない場合があります。たとえば、アカウント準備スタッフは、"全従業員" という名前の配布グループの所有者になることができますが、人事の特定の人員のみが同一配布グループへのモデレーター権限を持ちます。
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