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通話受付管理の計画

 

トピックの最終更新日: 2011-08-18

通話受付管理 (CAC) を計画するには、エンタープライズ ネットワーク トポロジに関する詳細な情報が必要です。 通話受付管理ポリシーの計画を容易にするために、次の手順を実行します。

  1. エンタープライズ ネットワーク内のハブ/バックボーン (ネットワーク地域) を特定します。

  2. 各ネットワーク地域内のオフィスまたは拠点 (ネットワーク サイト) を特定します。

  3. ネットワーク地域の各ペア間のネットワーク ルートを決定します。

  4. 各 WAN リンクの帯域幅制限を決定します。

    note注:
    帯域幅制限は、Lync エンタープライズ VoIP および音声ビデオ トラフィックに割り当てる WAN リンクの帯域幅量を表します。 そのため、"帯域幅制限" がある WAN リンクは、リンクの予測ピーク トラフィックよりも少ない帯域幅に制限されています。
  5. 各ネットワーク サイトに割り当てる IP サブネットを特定します。

これらの概念を説明するために、次の図に示すネットワーク トポロジの例を使用します。

通話受付管理のトポロジの例

Litware Inc. のネットワーク トポロジの例

note注:
すべてのネットワーク サイトはネットワーク地域に関連付けられています。 たとえば、Portland、Reno および Albuquerque は North America 地域に含まれています。 この図には、CAC ポリシーが適用された帯域幅制限付きの WAN リンクのみが表示されています。 ネットワーク サイト Chicago、New York、および Detroit は楕円形の North America 地域内に表示されています。これらは、帯域幅が制限されていないため CAC ポリシーが必要ないからです。

このトポロジの例の各コンポーネントについては、以下のサブセクションで説明します。 このトポロジがどのように計画されたかの詳細 (帯域幅制限も含む) については、「例: 通話受付管理で必要な情報の収集」を参照してください。

ネットワーク地域の特定

ネットワーク地域とは、ネットワーク バックボーンまたはネットワーク ハブを示します。

ネットワークのバックボーンまたはハブは、ネットワークのさまざまな部分を相互接続するコンピューター ネットワーク インフラストラクチャの一部で、異なる LAN またはサブネット間で情報を交換するためのパスを提供します。 バックボーンは、小さな地域から地理的に広範囲な地域までさまざまなネットワークを結合できます。 通常、バックボーンの処理能力はバックボーンに接続するネットワークの処理能力よりも高くなっています。

このトポロジ例では、3 つのネットワーク地域が存在します。北アメリカ、EMEA、および APAC。 ネットワーク地域には、一連のネットワーク サイト (このトピックの「ネットワーク サイトの定義」を参照) が含まれます。 ネットワーク運用チームと連携してネットワーク地域を特定します。

中央サイトと各ネットワーク地域の関連付け

CAC では、ネットワーク地域ごとに Lync Server の中央サイトが必要です。 Lync Server のソフトウェア コンポーネントで CAC を決定します。 前のネットワーク トポロジの例には 3 つのネットワーク地域が表示されており、それぞれに CAC の決定を管理する中央サイトがあります。 この中央サイトは地理的な近さに基づいて選ばれます。 ネットワーク地域内のメディア トラフィックの負荷が最も高いため、地理的な近さに基づいて所有権を割り当てることで自立型のネットワーク地域が実現し、他の中央サイトが使用できなくなってもネットワーク地域内の通信は維持されます。 前の例の適切な関連付けを次の表に示します。

note注:
中央サイトは、ネットワーク サイトに対応している必要はありません。 ただし、このドキュメントの例では、一部の中央サイトの名前 (Chicago、London、Beijing) がネットワーク サイトの名前と同じになっています。 中央サイトとネットワーク サイトが同じ名前を共有していても、中央サイトは Lync Server トポロジの要素です。 ネットワーク サイトは、Lync Server トポロジが存在するネットワーク全体の一部です。

ネットワーク地域、中央サイト、およびネットワーク サイト

ネットワーク地域 中央サイト ネットワーク サイト

北アメリカ

Chicago

Chicago

New York

Detroit

Portland

Reno

Albuquerque

EMEA

London

London

Cologne

APAC

Beijing

Beijing

Manila

ネットワーク サイトの特定

ネットワーク サイトは、組織のオフィス、一連の建物、またはキャンパスがある場所を表します。 組織の全オフィスの一覧表を作成することから始めます。 このトポロジの例では、North America ネットワーク地域は New York、Chicago、Detroit、Portland、Reno、および Albuquerque のネットワーク サイトで構成されています。

すべてのネットワーク サイトをネットワーク地域に関連付ける必要があります。 ネットワーク サイトの WAN リンクが制限されているかどうかに応じて、帯域幅ポリシーがネットワーク サイトに関連付けられます。 CAC ポリシーと、CAC ポリシーを使用して割り当てる帯域幅の詳細については、この後の「帯域幅ポリシーの定義」を参照してください。 CAC を構成するには、ネットワーク サイトをネットワーク地域に関連付けます。次に、帯域幅割り当てポリシーを作成して、特定のサイトまたは地域間の帯域幅が制限される接続や、サイトと地域間の WAN 接続に適用します。

ネットワーク リンクの特定

ネットワーク リンクは、異なる地域やサイトにリンクする物理的な WAN への接続を表します。 このトポロジの例には、地域のネットワーク リンクが 2 つ、地域とサイト間のネットワーク リンクが 5 つ、2 つのサイト間のネットワーク リンクが 1 つあります。

North America と EMEA 間の地域リンクは NA-EMEA-LINK として、APAC と EMEA 間の地域リンクは EMEA-APAC-LINK として表されています。

サイト リンクは、Portland、Reno、Albuquerque と North America 地域、Manila と APAC 地域、および Cologne と EMEA 地域を接続する線で示されています。 Reno と Albuquerque 間の線は、これら 2 つのサイト間の直接のネットワーク リンクを表しています。

帯域幅ポリシーの定義

ネットワーク運用チームと連携して、組織の WAN リンクでリアルタイムの音声およびビデオ トラフィックに使用できる WAN 帯域幅量を決定します。 通常、帯域幅使用量が制限される場合 (音声およびビデオのモダリティに割り当てることができる帯域幅よりも帯域幅使用量が多くなると予測される場合)、帯域幅ポリシーが WAN リンクに適用されます。

CAC 帯域幅ポリシーでは、リアルタイムの音声およびビデオのモダリティ用に予約される帯域幅量を定義します。

CAC 帯域幅ポリシーでは、次のいずれかまたはすべてを定義できます。

  • 音声に割り当てる最大合計帯域幅

  • ビデオに割り当てる最大合計帯域幅

  • 1 つの音声通話 (セッション) に割り当てる最大帯域幅

  • 1 つのビデオ通話 (セッション) に割り当てる最大帯域幅

note注:
CAC 帯域幅の値はすべて、単一方向の最大帯域幅制限を表しています。
note注:
Lync Server 2010 の音声ポリシー機能では、(ユーザーによる発信通話ではなく) ユーザーへの着信通話の帯域幅ポリシー チェックを上書きできます。セッションの確立後、使用帯域幅は正確に計上されます。この設定は慎重に使用し、適切な通話受付管理の決定に対しては使用しないでください。 詳細については、「展開」のドキュメントの「音声ポリシーの作成と PSTN 使用法レコードの構成」または「音声ポリシーの変更と PSTN 使用法レコードの構成」を参照してください。

セッションあたりの帯域幅使用率を最適化するには、使用する音声およびビデオのコーデック タイプを考慮してください。 特に、頻繁に使用されることが予測されるコーデックの帯域幅の割り当てが不足しないようにしてください。 逆に、帯域幅使用量の多いコーデックをメディアで使用しないようにする場合、このような使用を妨げない程度にセッションあたりの最大帯域幅を少なく設定する必要があります。 音声の場合、状況によっては使用できないコーデックもあります。次にその例を示します。

  • コーデックの帯域幅および優先順位付けを考慮する場合、Lync 2010 エンドポイント間のピアツーピアの音声通話では RTAudio (8kHz) または RTAudio (16kHz) のいずれかが使用されます。

  • Lync 2010 エンドポイント間の電話会議および音声ビデオ会議サービスでは、G.722 または Siren のいずれかが使用されます。

  • PSTN を介した Lync 2010 エンドポイントとのやり取りには、G.711 または RTAudio (8kHz) のいずれかが使用されます。

セッションあたりの最大帯域幅設定を最適化するために次の表を使用してください。

コーデック別の帯域幅使用率

コーデック 前方向エラー訂正 (FEC) を行わない場合の帯域幅要件 前方向エラー訂正 (FEC) を行う場合の帯域幅要件

RTAudio (8kHz)

49.8 kbps

61.6 kbps

RTAudio (16kHz)

67 kbps

96 kbps

Siren

57.6 kbps

73.6 kbps

G.711

102 kbps

166 kbps

G.722

105.6 kbps

169.6 kbps

RTVideo (CIF 15 fps)

260 kbps

該当なし

RTVideo (VGA 30 fps)

610 kbps

該当なし

note注:
帯域幅要件には、Ethernet II、IP、UDP、RTP、および SRTP のオーバーヘッドが考慮されています。 また、RTCP のオーバーヘッドとして 10 kbps が付加されています。

G.722.1 と Siren のコーデックは類似していますが、ビット レートが異なります。

Lync Server 2010 会議の既定のコーデックである G.722 は、G.722.1 および Siren のコーデックとはまったく異なります。

Siren コーデックは、次のような場合に Lync Server 2010 で使用されます。

  • 帯域幅ポリシーの設定が低すぎて G.722 を使用できない場合

  • Communications Server 2007 または Communications Server 2007 R2 クライアントが Lync Server 2010 会議サービスに接続する場合 (これらのクライアントでは G.722 コーデックがサポートされていないため)

シナリオごとの帯域幅使用率

シナリオ 量に最適化した場合の帯域幅要件 (kbps) バランスが取れたモードの帯域幅要件 (kbps) 質に最適化した場合の帯域幅要件 (kbps)

ピアツーピアの音声通話

45 kbps

62 kbps

91 kbps

電話会議

53 kbps

101 kbps

165 kbps

PSTN 通話 (Lync 2010 と PSTN ゲートウェイ間、メディア バイパスを使用)

97 kbps

97 kbps

161 kbps

PSTN 通話 (Lync 2010 と仲介サーバー間、メディア バイパスを使用しない)

45 kbps

97 kbps

161 kbps

PSTN 通話 (仲介サーバーと PSTN ゲートウェイ間、メディア バイパスを使用しない)

97 kbps

97 kbps

161 kbps

IP サブネットの特定

ネットワーク管理者と連携して各ネットワーク サイトに割り当てる IP サブネットを決定する必要があります。 ネットワーク管理者が既に IP サブネットをネットワーク地域およびネットワーク サイトに分類している場合、作業は大幅に簡略化されます。

この例では、North America 地域の New York サイトに 172.29.80.0/23、157.57.216.0/25、172.29.91.0/23、172.29.81.0/24 の IP サブネットが割り当てられています。 普段は Detroit で作業している Bob がトレーニングのために New York のオフィスに行くとします。 コンピューターを起動してネットワークに接続すると、New York に割り当てられている 4 つの範囲のいずれか (172.29.80.103 など) の IP アドレスがコンピューターで取得されます。

warning警告:
サーバーのネットワーク構成時に指定された IP サブネットは、メディア バイパスで適切に使用できるようにクライアント コンピューターによって提供される形式と同じである必要があります。 Lync 2010 クライアントは、ローカル IP アドレスを受け取り、関連付けられているサブネット マスクで IP アドレスをマスクします。 各クライアントに関連付けられているバイパス ID が決まると、レジストラーによって、各ネットワーク サイトに関連付けられている IP サブネットの一覧と、クライアントによって提供されたサブネットが比較され、完全一致するサブネットが検出されます。 このため、サーバーのネットワーク構成時に入力されたサブネットが仮想サブネットではなく実際のサブネットであることが重要です (通話受付管理を展開しているがメディア バイパスは展開していない場合、仮想サブネットを構成していても通話受付管理は正常に機能します)。
たとえば、IP アドレスが 172.29.81.57、IP サブネット マスクが 255.255.255.0 のコンピューターにクライアントがサインインすると、Lync 2010 はサブネット 172.29.81.0 に関連付けられているバイパス ID を要求します。 クライアントが仮想サブネットに属していても、サブネットが 172.29.0.0/16 として定義される場合、レジストラーは 172.29.81.0 のサブネットのみを検索するため、これを一致とは見なしません。 そのため、クライアントによって提供されるサブネットとまったく同じサブネットを管理者が入力することが重要です (これは、ネットワーク構成時のサブネットを使用して静的または DHCP でプロビジョニングされます)。