次の方法で共有


Wake On LAN の実装のシナリオ例

適用対象: System Center Configuration Manager 2007, System Center Configuration Manager 2007 R2, System Center Configuration Manager 2007 R3, System Center Configuration Manager 2007 SP1, System Center Configuration Manager 2007 SP2

このトピックの次のセクションでは、Configuration Manager 2007 の Wake On LAN を実装する方法のシナリオ例を示します。

  • 会社のポリシーで電気代節約のためにワークステーションを切ることが要求されている場合の大規模ソフトウェア アプリケーションの夜間インストール

  • 新しいオペレーティング システムをインストールするためのコンピュータのウェイクアップ

電源が切れているコンピュータにソフトウェアの更新をインストールすることによる対応レベルの達成

このシナリオでは、Wake On LAN を Configuration Manager で使用して、指定した時間内にソフトウェアの更新をインストールすることの成功率の向上に役立てる方法について説明します。

Woodgrove Bank には、Windows を実行しているネットワーク上のすべてのコンピュータに重要なセキュリティ関連のソフトウェアの更新が 2 週間以内にインストールされることを必要とするセキュリティ ポリシーがあります。これらのソフトウェアの更新のサーバーへのインストールは 100% の成功率ですが、Configuration Manager 管理者がリリース後 1 週間の期限でそれらを展開したにもかかわらず、デスクトップへのインストールは 80% の成功率しかありません。調査の結果、ソフトウェアの更新がインストールされないコンピュータの電源は、さまざまな理由で切られています。この理由は、たとえば、ユーザーが休暇や病欠のためであったり、コンピュータが日常的に使用されておらず、特定のアプリケーションやプロセスに必要なときにのみ電源が入れられるためであったりします。

多くの場合、各コンピュータを見つけ出し、電源を入れ、必要なソフトウェアの更新をインストールして対応期限に間に合わせるための十分な時間がありません。

適時、効率よく対応レベルを実現するのに役立てるため、Woodgrove Bank は、次の表に概要を示す一連の措置を決定します。

プロセス 参照

Mary North は、Configuration Manager 管理者であり、ハードウェア インベントリとソフトウェアの更新の両方の責任者です。彼女は、ハードウェア インベントリ データから各管理対象デスクトップのネットワーク カードの一覧を既に入手しています。

インベントリ データは、既存のコンピュータでさまざまなベンダによるネットワーク カードが混在していることを示しています。これらのネットワーク カードを交換するのは、実行可能な選択肢ではありません。

ハードウェア インベントリの収集について

Mary は、さまざまなネットワーク カードのドキュメントを参照し、それらのすべてがマジック パケット形式をサポートしており、Wake On LAN をサポートしているはずであることを知ります。

Configuration Manager 2007 を実行している彼女独自のテスト ネットワークで、彼女はサイトに対して Wake On LAN を有効にし、期限付きのソフトウェアの更新の展開を構成し、Wake on LAN に対して有効にします。

詳細については、次のトピックを参照してください。

Mary は、標準ビルドのコンピュータで代表的なネットワーク カードのテストを実施して、電源が切れているときにコンピュータがウェイクアップされ、ソフトウェアの更新の展開をインストールするかどうかを確認します。

10 台のテスト コンピュータのうち、1 台のみが正常にウェイクアップされました。

Mary は、それらのネットワーク カードに関連するベンダ情報を参照し、それらのネットワーク カードのほとんどがユニキャスト伝送を使用する場合はウェイクアップをサポートできないが、それらのすべてのネットワーク カードがサブネット向けブロードキャストを使用する Wake On LAN をサポートしていることに気付きます。

Mary は、Configuration Manager サイトのウェイクアップの送信方式を既定のユニキャストからサブネット向けブロードキャストに変更します。これで、10 台のうち 8 台が、正常にウェイクアップされ、ソフトウェアの更新の展開をインストールしました。

ユニキャストまたはサブネット向けのブロードキャスト用に Wake On LAN を構成する方法

Mary は、ウェイクアップされない 2 台のコンピュータを調査し、それらのコンピュータとネットワーク カードに関する個別のドキュメントを参照します。彼女は、1 台のコンピュータの BIOS 設定を変更し、もう 1 台のコンピュータのドライバ オプションを構成する必要があることに気付きます。

  • 彼女のコンピュータに関する特定のベンダの指示に従って、BIOS を構成します。つまり、コンピュータの起動時に F2 を押して、BIOS セットアップを開始します。次に、[Power] メニューを選択し、[Wake on LAN] オプションを [Power On] に変更して、F10 キーを押して設定を保存し、BIOS セットアップを終了します。

  • 彼女のネットワーク カードに関する特定のベンダの指示に従って、ドライバ オプションを構成します。つまり、デバイス マネージャを読み込み、[ネットワーク アダプタ] セクションを展開します。次に、アダプタを右クリックし、[プロパティ]、[詳細設定] タブの順にクリックして、[Wake on LAN] オプションを選択します。さらに、[プロパティ] をクリックし、Wake On 設定で [PME の有効化] および [Wake On マジック パケット] を有効にします。

これらの 2 台のコンピュータが再構成されたら、10 台のコンピュータがすべて正常にウェイクアップされました。

コンピュータおよびネットワーク カード固有の手動プロセス

重要

Wake On LAN を有効にする方法に関する指示は、ベンダごとに異なります。各ベンダの指示を確認してください。

Mary は、サブネット向けのブロードキャストを使用するように Wake On LAN を実装すると Woodgrove のビジネス要件に対して最も効果的な構成になるということ、および少数のコンピュータに対する特別な再構成を計算に入れる必要があるということを結論として知ります。

会社固有の内部プロセス

Mary は、セキュリティ アドバイザおよびネットワーク チームを含む、他のチームと彼女の調査結果について話し合います。

  • セキュリティ アドバイザは、既定以外のポート番号が使用され、ルーターがスマーフ攻撃に関連するリスクを軽減するように構成されている場合には、重要なセキュリティ関連の更新を適時にインストールすることのビジネス上の利益が、サブネット向けのブロードキャストを実装することに関係するセキュリティ リスクを上回ることに同意します。セキュリティ アドバイザは、ウェイクアップの送信方式としてユニキャストを使用したかったのですが、この方式をサポートするように既存のネットワーク カードをすべて交換するのは実現可能ではないことを理解します。ネットワークには、承認されたスタッフのみがアクセスできるようにセキュリティ制御が追加されます。

  • ネットワーク チームは、ウェイクアップの送信が業務時間外に送信された場合に帯域幅要件を維持できることを検証します。既定以外のポート番号およびルーターの再構成のためのセキュリティ上の予防措置にも同意します。

詳細については、次のトピックを参照してください。

次の変更要求 (RFC) が提出されます。

  • ルータは、サブネット向けのブロードキャストを安全に許可するように構成される。

  • Configuration Manager を実行しているすべてのプライマリ サイトは、Wake On LAN でサブネット向けのブロードキャストおよび既定以外のポート番号を使用するように構成される。

  • 重要なソフトウェアの更新の展開はすべて、Wake On LAN に対して有効にし、午前 3 時にインストールされるように構成される。

RFC が許可され、社内のセキュリティ ポリシーが更新されます。

会社固有の内部プロセス

Mary は、デスクトップ サポート エンジニアおよびビルド チームと話し、Wake On LAN の実装には、既存のコンピュータがウェイクアップに失敗する場合に再構成が必要であること、および Wake On LAN のサポートには、新しいビルドへの配慮が必要であることを説明します。

Wake On LAN の管理者の役割とプロセスを決定する

インフラストラクチャへのすべての変更が実施されたら、Mary は、Wake On LAN に対して重要なソフトウェアの更新の展開を有効にし、展開ステータスを細かく監視します。

ソフトウェアの更新のレポートについて

この一連の措置の結果、重要なソフトウェアの更新は 1 週間後に 97% のコンピュータにインストールされました。これにより、ネットワーク カードのドライバがウェイクアップ操作用に構成されていなかったり、BIOS を再構成する必要があったり、ネットワーク カードのジャンパやワイヤを正しく構成する必要があったりしたなどの理由でウェイクアップに失敗した 3% のデスクトップ コンピュータを見つけ出して修正するための、さらに 1 週間の余裕が生まれます。

大部分のコンピュータにソフトウェアの更新の組み合わせを期限付きで使用すること、電源が切れていた一部のコンピュータに Wake On LAN を使用すること、および非対応のままであった少数のコンピュータに手作業の調査を実施することにより、Woodgrove Bank は毎月、対応レベルを満たすことができるようになりました。

会社のポリシーで電気代節約のためにワークステーションを切ることが要求されている場合の大規模ソフトウェア アプリケーションの夜間インストール

このシナリオでは、Wake On LAN を Configuration Manager で使用して、業務時間外にコンピュータの電源を切ることによって電気代を節約する一方で、業務の継続性を妨げることなくコンピュータを管理する方法について説明します。

電気代を節約するため、A. Datum Corporation は、就業日の終わりにすべてのコンピュータをシャットダウンする新しいポリシーを作成します。ユーザーは、以前はソフトウェアのインストールやアップグレードなど、夜間の保守のためにコンピュータの電源を入れたままにしていましたが、現在は退社する前に Windows Vista を実行しているコンピュータの電源を切るように指示されています。この管理命令を実行するため、Active Directory グループ ポリシーを使用して、非アクティブ状態が一定の時間続いた後にワークステーションが自動的にシャットダウンされるように電源管理オプションが構成されています。

IT 部門の課題は、ユーザーの作業の中断を最小限に抑えながら、それらのコンピュータの管理を継続することです。Office 2003 を実行しているすべてのワークステーションを Office 2007 にアップグレードするための要件はその一例です。ユーザーは日常のタスクの多くを完了するために Office アプリケーションに依存しており、もし Office アプリケーションを 1 日中使用できなかったらユーザーの生産性に深刻な影響を与えます。IT 部門は、アップグレードの展開をテストした後で、インストール パッケージが結果的に数百メガバイトになり、インストールするのに平均で 2 ~ 3 時間かかることに気付きます。

アプリケーションをインストールする時間の長さとネットワーク帯域幅への影響のため、業務時間外にアップグレードを実行した方が明らかに望ましいです。業務時間外にすべてのワークステーションの電源を切る最近のポリシーがある状況では、Wake On LAN を実装することでこの展開の問題を解決できます。

Tommy Hartono は、デスクトップへのアップグレード パッケージの配布を担当する Configuration Manager 管理者です。彼は、次の表で説明する一連の措置を決定します。

プロセス 参照

Tommy は、Configuration Manager 2007 の Wake On LAN の概要を読み、必須のソフトウェアの配布提供情報を Wake On LAN に対して有効にすることができることに気付きます。

これは、ユーザーの作業を中断させたり、業務時間内にネットワーク帯域幅や配布ポイントに悪影響を与えたりすることなく、夜間に Office 2007 をインストールするための解決策になります。

Wake On LAN の概要

彼は、Configuration Manager でウェイクアップ パケットを送信するために使用可能な 2 つの送信方法について読み、会社のルーターでサブネット向けのブロードキャストが許可されるかどうかをネットワーク チームに問い合わせます。

セキュリティ チームの回答は、セキュリティ リスクを軽減するように再構成された場合でも、ルーターでサブネット向けのブロードキャストの送信は許可されないということです。

社内のセキュリティ ポリシーに従うために、Tommy は、サブネット向けのブロードキャストを使用する場合よりも成功率が低くても、ウェイクアップ送信方法としてユニキャストを使用する必要があります。

パイロット テストとして、Tommy は、1 つのプライマリ サイトを Wake On LAN に対して有効にし、1 時間後にインストールする必須のソフトウェア配布提供情報を作成して、その提供情報を Wake On LAN に対して有効にし、選択したテスト コンピュータが含まれるコレクションを対象にします。

彼は、テスト コンピュータ用のポリシーのダウンロードを開始し、コンピュータの電源を切ります。

コンピュータが、ウェイクアップされ、数分後に提供情報をインストールします。

概念実証に成功した後で、Tommy は、パイロット テストを 5 台のコンピュータに拡大し、深夜に Office 2007 をインストールするように必須提供情報を構成して、その提供情報を Wake On LAN に対して有効にします。

詳細については、次のトピックを参照してください。

次の朝、Tommy は、それらのコンピュータのうちの 1 台がウェイクアップされなかったことに気付きます。いくつかのテストを実施した後で、彼は、特定のネットワーク カードがユニキャスト ウェイクアップ パケットに応答しないという判断を下します。

Tommy は、これは少数のコンピュータに対して許容できる妥協だと確信し、コンピュータがウェイクアップに失敗する場合の次の営業日に関する以下の代替案について調査します。

  • これらのコンピュータを業務時間の終わりにインストールする対象にし、この予定されたアップグレードのユーザーにこの時間内に作業をしないこと、およびコンピュータの電源を切らないことをユーザーに指示する。

  • これらのコンピュータに対してグループ ポリシーの除外を要求し、割り当てられた日にコンピュータの電源を入れたまま退社することをユーザーに指示する。

会社固有の内部プロセス

パイロットおよびプロセスを正常に実行できることが確認され、Tommy は、彼が担当するすべてのプライマリ サイトの Wake On LAN を有効にし、段階的な方法で夜間に Office 2007 をインストールします。

彼は、インストールの成功を監視し、対象とされていたのにインストールが開始されなかった個々のコンピュータに対処します。

提供情報のステータスの表示方法

この一連の措置の結果、次の目標が達成されます。

  • 大部分のコンピュータは業務時間外に常に電源が切られており、これにより、会社の電気代がかなり節約される。

  • 業務時間外にワークステーションがアップグレードされるため、業務の継続性は維持される。

  • 業務時間中にサイズの大きなソフトウェア パッケージをインストールしてネットワーク帯域幅が悪影響を受けることがない。

新しいオペレーティング システムをインストールするためのコンピュータのウェイクアップ

このシナリオでは、Wake On LAN を Configuration Manager で使用して、オペレーティング システムの展開のインストールをサポートする方法について説明します。

Coho Winery は、新しい 1 まとまりのコンピュータを受け取ります。これらは、コンピュータを必要とする部門によって若干異なる仕様です。ただし、コンピュータには、Windows XP Professional と Configuration Manager クライアントがインストールされており、会社の最新のビルドが搭載されています。Coho Winery は、実稼働の前に、オペレーティング システム展開イメージおよびタスク シーケンスを使用して Windows Vista にアップグレードしたいと考えます。

Jenni Merriam は Configuration Manager 管理者であり、次の表で説明する一連の措置を実行します。

プロセス 参照

Jenni は、セントラル サイトを使用して、新しいコンピュータをユーザーに展開する前にオペレーティング システムの展開機能でプロビジョニングします。

コンピュータは、サポート エンジニアによって確認され、最終的な場所に運ばれます。

Jenni は、セントラル サイトのみで Wake on LAN を有効にし、新しいコンピュータをサイト サーバーと同じネットワーク セグメントに接続します。

詳細については、次のトピックを参照してください。

コンピュータの電源が入れられ、Configuration Manager クライアントが自動的にセントラル サイトに割り当てられ、クライアントがハードウェア インベントリをサイトに報告します。

Jenni は、すべてのコンピュータが動作していることを確認し、展開に必要となるまでコンピュータの電源を切ります。

サイトのハードウェア インベントリの構成方法

サイト サーバーとコンピュータの間にルーターがないため、構成するネットワーク デバイスはなく、サブネット向けのブロードキャストのネットワークへの影響は 1 つのネットワーク セグメントに含まれます。

このため、Jenni は、サブネット向けのブロードキャストという、既定の送信方法をそのまま残します。

Wake On LAN に対してユニキャストまたはサブネット向けのブロードキャストを選択する

Jenni は、Wake On LAN に対して有効になるようにオペレーティング システムの展開に関連する必須のタスク シーケンス提供情報を構成します。

特定のコンピュータを展開する要求があったときに、彼女は、コンピュータを対象のコレクションに移動します。

Wake On LAN のタスク シーケンス必須提供情報の構成方法

数分後に、対象コンピュータはウェイクアップされ、Windows Vista イメージを使用してアップグレードを開始します。

展開が完了すると、Jenni は、すべてが動作可能であることを確認します。

  • すべてに問題がない場合、コンピュータは、正しい運用サイトに割り当てられるように、Configuration Manager クライアントをアンインストールして再インストールするスクリプトを実行する最終的な場所に送られます。

  • アップグレードに問題がある場合は、コンピュータが展開される前に Jenni が問題を解決します。

会社固有の内部プロセス

この一連の措置の結果、次の目標が達成されます。

  • コンピュータは、提供元のイメージが更新されるのを待つことなく直ちに Windows Vista と共に展開される。Windows Vista は Windows XP より信頼性と安全性が高いオペレーティング システムであるため、早期に展開すると、総所有コストの削減に役立つ。

  • アップグレード方法は合理化されているため、信頼性が高いプロセスが実現される。

  • ネットワーク トラフィックの増加は、業務の継続性に悪影響を及ぼさない最小限に抑えられる。

  • ウェイクアップ パケットの送信方法により、再構成したり、追加のセキュリティ リスクが発生したりすることなく、成功率が高くなる。

参照:

概念

Wake On LAN の前提条件

その他のリソース

Wake On LAN の概要
Configuration Manager のオペレーティング システムの展開
Configuration Manager のソフトウェアの配布
Configuration Manager のソフトウェアの更新
Wake On LAN のテクニカル リファレンス

その他の情報については、「Configuration Manager 2007 Information and Support」 (Configuration Manager 2007 の情報とサポート) を参照してください。
ドキュメント チームに連絡するには、次のアドレスに電子メールを送信してください。 SMSdocs@microsoft.com.