何でも屋便利なツール
Greg Shields
どの業界にも技術者というものがいて、どの技術者も、作業の遂行に役立つお気に入りのツールを持っています。これは IT の世界でも同じです。皆さんがたった 1 つのサービスを完ぺきにするのに専念している専門家であっても、すべてが問題なく並行して進むようにすることを仕事としている方であっても、他の分野の技術者と同様に、ツールが必要です。ただし、IT 業界で使用するツールは、電気技師や歯科医が使用するツールのように手で持つことはできません。というのも、IT 業界で使用するツールは、ツールがなければ手作業で行う必要がある作業を、論理的に拡張したものだからです。こうしたツールを使用すると、ツールなしでは複雑だったり時間がかかったりする作業を、自動化したり、迅速に遂行したりすることができます。コンピューティング環境の構築にハンマーやのこぎりは必要ありませんが、私たちのほとんどは、Windows Sysinternals ユーティリティなしで 1 日を送ることはできません。
これを踏まえて、今月は、Microsoft TechNet サイトやその関連サイトをよく調べて、利用できる最高のツールのいくつかを探し出しました。コストをほとんど、またはまったくかけずに作業を楽にしようと努めている IT プロフェッショナルの皆さんは、無償でダウンロードできるこの 19 個のツールをきっと気に入ってくださるでしょう。ここで紹介するツールの中には、既に TechNet Magazine の「ユーティリティ スポットライト」コラムで紹介されているものもあります。その場合は、そのツールの使い方に関してより多くの情報をご提供するため、リンク先を当該のコラムにしておきます。
ADMX Migrator Windows Vista および Windows Server 2008 では、グループ ポリシーの形式が ADM から ADMX に変更されました。ADMX は、XML ベース形式で、以前の構文とはまったく異なり、テキスト エディタで編集するのは困難な場合があります。このツールを使用すると、カスタムの ADM グループ ポリシー ファイルは自動的に新しい形式にアップグレードされます。また、このツールでは、グラフィカル インターフェイスを使用して独自のカスタム ADMX ファイルを作成することもできます (図 1 参照)。
図 1 ADMX Migrator
BITS 管理ユーティリティ 従来のファイル転送を開始すると、転送元と転送先のコンピュータのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす場合があります。また、一般的に、従来の転送処理は、中断された場合には、最初からやり直す必要があります。こうした理由から、バックグラウンド インテリジェント転送サービス (BITS) が開発されました。BITS は Windows Server Update Services (WSUS) や構成マネージャなどのテクノロジで使用できるものですが、多くの管理者は、BITS 管理ユーティリティとちょっとしたスクリプトを使用すると独自の堅牢なファイル転送を開始および管理できるということに気付いていません。
Debug Diagnostic Tool ご存じのとおり、Windows のクラッシュやハングのトラブルシューティングは、専門のトレーニングを積んでいなければ困難な作業となる場合があります。Debug Diagnostic Tool では、クラッシュ発生時および発生後のシステム リソースの状態を分析して問題の根本原因を特定してレポートすることができるので、こうしたトラブルシューティング作業に役立ちます。
グループ ポリシー インベントリ グループ ポリシー インベントリは、Windows Server 2003 以前の環境向けのツールで、一度に複数のコンピュータに対してグループ ポリシーおよび Windows Management Instrumentation (WMI) の情報についてのポーリングを行うように設計されています。このツールで収集された情報からは、インストールされているソフトウェア、グループ ポリシー オブジェクト (GPO) の配布が成功したかどうか、ハードウェア インベントリなどを突き止めることができます。このツールの便利な使い方の 1 つは、GPO に設定する予定の WMI フィルタを、実際に設定する前に試してみるというものです。
Internet Explorer 管理者キット (IEAK) IEAK は、Internet Explorer が誕生したのと同じくらい前から提供されています。このツールは、Internet Explorer 用の包括的な構成制御ユーティリティとなるように設計されているので、ほぼすべての Internet Explorer 設定を、それぞれの組織固有の設定に制限できます。ユーザーのホーム ページや接続プロファイルを制限したり、Internet Explorer ロゴをカスタマイズしたりする必要がある場合、IEAK は、この作業に必要なツールを提供します。
LimitLogin セキュリティが厳しい環境や非常に特殊な環境の管理者の中には、同時にログインできるユーザー数を一定に制限する必要があると感じる方もいらっしゃるでしょう。LimitLogin を使用すると、管理者は、Active Directory 内ですべてのログイン情報を追跡しながら、同時にログインできるユーザー数を決めることができます (このツールは、Windows Server 2003 ターミナル サーバーに対して特に有効です)。
Microsoft Baseline Security Analyzer MBSA は、セキュリティ管理者や小規模環境の管理者から長年にわたる支持を得ているツールです。このツールを使用すると、セキュリティに関する既知の脆弱性や安全でない構成について、環境内のシステムを詳しく調べることができます。WSUS ではコンピュータに更新プログラムがインストールされているかどうかだけを調査することに重点が置かれていますが、MBSA では、それだけでなく、システムにセキュリティ上の悪影響をもたらす可能性がある構成設定が特定され、問題の解決方法に関するアドバイスも提供されます。
Microsoft ファイル サーバー移行ツールキット 大規模なファイル サーバー内でのデータの移動や統合を試みたことがある方は、この作業が容易ではないことにお気付きでしょう。移行中にファイル パスやアクセス許可を維持しなければならないため、一見したところ単なるファイルのコピーと思われる作業が複雑になります。Microsoft ファイル サーバー移行ツールキット (図 2 参照) では、分散ファイル システム (DFS) やボリューム シャドウ コピー サービス (VSS) などのテクノロジを活用して大規模なファイル サーバー移行プロジェクトを支援するので、このツールキットを使用すると、データの移行作業が容易になります。
図 2 ファイル サーバー移行ウィザード
Microsoft セキュリティ アセスメント ツール MSAT は、驚異的なテクノロジを駆使したツールというよりも紙と鉛筆を使って取り組む試験のようなもので、中小企業が自社のセキュリティ状況を理解するのに役立つ包括的な多肢選択式のテストです (図 3 参照)。何百項目もの質問に回答すると、ご使用の環境のリスクのレベルを理解し、実装済みのセキュリティ防御策を評価することができます。
図 3 Microsoft セキュリティ アセスメント ツール
Microsoft SharedView ビジネスでは、コンピュータを使ってこれまでにないレベルのコラボレーションを実現できると考えられていました。しかし、このリアルタイム コラボレーションが機能するのは、適切なテクノロジ基盤がある場合のみです。この無償ツールを使用すると、最大 15 名のユーザーが 1 つのドキュメントで共同作業を行うことができます。
Microsoft Windows Server 2003 Performance Advisor Windows Vista と Windows Server 2008 の両方には、データ コレクタ セットを使用してシステム パフォーマンスや指定された構成のスナップショットを確認する機能が組み込まれています。しかし、データ コレクタ セットのテクノロジは、元々 Windows Server 2003 向けに開発された Server Performance Advisor に基づいています。このツールを使用すると、特定のサーバーの役割 (Active Directory、IIS、DNS、ターミナル サービスなど) を対象とした診断レポートの生成を視野に入れてパフォーマンス データを収集することができます。
Robocopy GUI コマンド ラインでのコマンド実行やスクリプトの作成は IT 管理者の日常業務の一環となっていますが、グラフィカル インターフェイスの方が作業の遂行に適している場合もあります。ファイルのコピーや転送に関する高度なニーズに対応するために、Robocopy GUI では、この処理用のグラフィカル インターフェイスが用意されています。この GUI ツールでは Robocopy のコマンド ラインで使用できる全機能にアクセスできるので、このツールを使用すると、ファイルの転送やミラーの設定を簡単に構成できます。
searchSd Active Directory のオブジェクトに割り当てられているセキュリティ アクセス制御リスト (ACL) を確認する方法として最もよく用いられるのは、そのオブジェクトのプロパティを確認するという方法です。しかし、何十個または何百個ものオブジェクトについて、ACL を確認する必要がある場合、各オブジェクトを右クリックしてプロパティを確認するのは理にかなった方法とは言えません。このような場合は、Active Directory オブジェクトの ACL と所有者を一覧表示する searchSd というツールが役立ちます。これは、監査目的で Active Directory の構成とセキュリティをログに記録する場合に特に有効なツールです。
Virtual Machine Remote Control Plus ご使用の環境で Virtual Server 2005 を利用している方は、Virtual Server 2005 の管理 UI が Web ベースであることに不満を持っていらっしゃるかもしれません。たまに使用するには Web ベースの管理 UI は好都合ですが、Virtual Server ワークロードを管理するリッチ クライアント アプリケーションがあったら便利だと思っている方はいらっしゃることでしょう。Virtual Machine Remote Control Plus は、まさにこのようなフォーム ベースのインターフェイスを提供します。このツールを使用すると、リモートでバーチャル マシンを制御したり、バーチャル マシンの構成を管理したりすることができます。また、この作業はすべて、このツールのインターフェイスから行うことができます。
Web Capacity Analysis Tool 主に Web サーバーを扱う仕事をしていらっしゃる方は、既に Web Capacity Analysis Tool (WCAT) を使用したことがあるのではないでしょうか。使用したことがない方は、このツールで Web サーバーに対するトラフィックのシミュレーションを行えることをご存じないかもしれません。WCAT は、Web サーバーの許容負荷量を特定することを目的として、Web サーバーに対して要求を生成する一連の擬似クライアントと共に使用するように設計されています。このツールは、完全にカスタマイズすることが可能で、問題なくサポートできる負荷の量を特定するために環境内の Web サーバーに対するテストを実施するための有益なプラットフォームを提供します。
Windows 自動インストール キット 1 つの Windows オペレーティング システムをインストールするのは、[次へ] ボタンを何度かクリックして、最後に [完了] ボタンをクリックするという簡単な作業です。しかし、何百もの OS インスタンスをインストールする必要がある場合、このたった数回のマウスのクリック操作が非常に面倒な作業になります。Microsoft WAIK は、カスタマイズされた OS インスタンスを迅速に展開するための基盤となる包括的なプラットフォームを提供します。
Windows Installer Clean Up ユーティリティ アプリケーションのインストールが Windows インストーラの下で統合されることは、ソフトウェア開発者にとっても管理者にとっても同様に喜ばしいことです。しかし、Windows インストーラによって、不要な情報が消去されず、コンピュータが整合性のない状態のままになってしまうことがあります。そのような場合には、それ以上、インストールやアンインストールを実行できなくなることがあります。慎重に使用する必要がありますが、Windows Installer Clean Up ユーティリティを使用すると、Windows インストーラで削除されなかったインストール情報を削除できるので、このユーティリティは管理者の役に立ちます。
Windows メモリ診断 Windows メモリ診断では、コンピュータに搭載されている RAM ハードウェアが正常に機能していることを確認するためのテスト プラットフォームが提供されます (このツールは、Windows Vista と Windows Server 2008 には組み込まれていますが、それ以前のバージョンの Windows の場合は別途ダウンロードする必要があります)。ハードウェア障害が原因で目に見えるレベルの問題が発生していることが懸念される場合は、このツールを実行して、RAM で欠陥が発生していないことをご確認ください。
Windows SteadyState ラボやキオスクのコンピュータを想定して設計された Windows SteadyState を使用すると、単純な電源スイッチのオン/オフの切り替えで、共有コンピュータの構成を元の状態に戻すことができます。このツールは、共有コンピュータをいつでも望みどおりの構成に戻すことができるステートレスな機器に効果的に変えることによって、共有コンピュータを保護します。
システム管理者とは困難な職務です。ですから、適切なツールを用意することが重要です。今回紹介した 19 個の無償ツールはすべてマイクロソフトが提供しているものです。また、これらはすべて、現在の IT 環境内で使用されているファイル サーバー、Exchange サーバー、およびデスクトップ コンピュータの管理を容易にするように設計されています。
Greg Shields (MVP) は、Concentrated Technology の共同創設者であり、IT の専門家です。最新の著書には、『Windows Server 2008: What's New/What's Changed』(SAPIEN Press) があります。彼の連絡先については、www.ConcentratedTech.com を参照してください。