Windows 秘話: キーボード ショートカットの追跡 (第 3 弾)

Raymond Chen

Windows 95 では、Windows + E というショートカット キーが導入されました。このキーの組み合わせを使用して、マイ コンピューターを開くことができました。このショートカット キーの動作は、Windows 95 のときから変更されていません。ですが、ユーザーが、このショートカット キーの動作を変更する衝動に駆られなかったからではありません。時折、ユーザー調査の結果を踏まえて、Windows + E ショートカット キーの動作を変更しようとした人がいました。この変更は、いつも懐古的な人たちからの強い抵抗に遭いました。

あるベータ版で、開発者が Windows + E ショートカット キーの動作を変更して、ユーザー ファイルが開かれるようにしたことがありました (これは、Windows Vista のスタート メニューに表示されるユーザー名をクリックしたときに開かれるのと同じフォルダーです)。推測ですが、このアイディアは、一般ユーザーが、ハード ドライブ内をいじくり回すのではなく、各自のファイルを操作することに時間を費やしていたことに寄るものではないかと思います。  

その数か月後、Windows の内部ビルドで Windows + E ショートカット キーの動作が再度変更され、ライブラリが開かれるようになりました (これは、Windows 7 のナビゲーション バーで、ライブラリという単語をクリックしたときに開かれるのと同じフォルダーです)。このように動作が変更された理由の 1 つは、ユーザー ファイル フォルダーを開くのが冗長な動作だからです。また、調査データから、ユーザーがマイ コンピューターを開くと、多くの場合は、ドライブやフォルダーをクリックして、必要なファイルを探し始めることがわかりました。つまり、マイ コンピューターを開くのは、長くて辛い道のりの第一歩に過ぎませんでした。

ライブラリは、ユーザーのドキュメントがまとめられている場所なので、必要なものを簡単に見つけられます (必要なドキュメントを、あちこちから探し出す必要はありません)。ユーザーにライブラリを表示することで、ユーザーに、必要なものを簡単に見つけられる場所があることを通知できます。

さらに数か月後、Windows + E キーを押したときには、マイ コンピューターが開かれるように動作が戻りました。この変更の要請は、リムーバブル記憶域デバイスやファイル システムのフィルター (ハードウェアに近いもの) を担当しているプログラマーから寄せられました。彼は、マイ コンピューターを開き、システムに搭載されているハード ドライブの状態をチェックして、ドライバーが正しく動作しているかどうかを確認していましたが、マイ コンピューターを開く際には従来からある Windows + E ショートカット キーを重宝していました。

もちろん、ドライバーの開発者から寄せられたフィードバックだけが、動作を元に戻した理由ではありません。ですが、このフィードバックによって、ショートカット キーを見直すことになりました。最終的に Windows + E キーを押すとマイ コンピューターが開かれるという動作に落ち着いた最大の理由は、多数のインターネット サイトや書籍で、マイ コンピューターを開くには Windows + E キーを押すという指示が掲載されていたことでしょう。

終わりのない長い道のり

遠回りをした結果、何も変わらないという結論に達しましたが、その過程では多くのことを学びました。Windows については古くて新しいことを取り入れないという不満の声もありますが、実際に新しいことを取り入れると、使い慣れている以前の方法に戻して欲しいという要望が寄せられます (しかも、新しい方法が、多くのユーザーにとって改善をもたらすことが調査によって裏付けられているにもかかわらず、です)。

スタート メニューにある Windows エクスプローラーのショートカットが、大きく邪魔になることはありません。Windows 95 では、C ドライブのルートが開かれました。Windows 2000 では、マイ ドキュメント フォルダー (後に、このフォルダーは "ドキュメント" という名前に変更されました) を開くように変化しました。それから、Windows 7 では、開かれるフォルダーが再度変更され、今度はライブラリ フォルダーが開かれるようになりました。

ここで展開に関するヒントを紹介しましょう。特定のフォルダーへのショートカットを作成するだけで、指定のフォルダーでエクスプローラー ウィンドウを開くショートカットを作成できます。このショートカットには、好きな名前を付けて、ユーザーに配布できます。このショートカットに Windows エクスプローラーという名前を付けることも可能です。

Raymond Chen は、自分の Web サイト「The Old New Thing (古くて新しいもの、英語)」および同じタイトルの著書 (Addison-Wesley、2007 年) で、Windows の歴史、Win32 プログラミング、そして電子レンジでポップコーンを作る方法について触れています。

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