Windows 7: IT 担当者向けの USMT ガイド
Windows 7 にユーザーの設定やデータを移行するときには、ユーザー状態移行ツールが強力な味方となります。
Johan Arwidmark
ユーザーの状態、データ、および設定の移行は、すべての Windows 7 展開プロジェクトにとって重要な作業です。問題となるのは、「移行すべきか」ではなく、「移行しなくて問題ないのか」という点です。
ユーザー状態移行ツール (USMT) 4.0 は、Windows 7 の展開プロジェクトで、ユーザーの状態、データ、および設定を移行するのに使用できる無償のツール セットです。これらのツールは、マイクロソフトが推奨する展開ソリューション (Microsoft Deployment Toolkit (MDT) 2010 および System Center Configuration Manager (SCCM) 2007) では既定で有効になっていますが、それには十分な理由があります。ローカルのデータや設定について適切な処置をとらずに、イメージを使用してユーザーのコンピューター再構築したために、ローカルのデータや設定が失われた場合、データを回復するのは困難で、コストがかかります。
ODBC 接続、サードパーティのフォント、Outlook プロファイルなど、いくつかのコンポーネントのみを移行する組織もあれば、ローカル ドライブをスキャンして既知の種類のデータやアプリケーションの設定を探して、より多くのデータや設定を移行する組織もあります。移行する価値のあるものは必ず存在します。
USMT 4.0 とは
USMT 4.0 は、Windows 7 で使用できる Windows 転送ツール ユーティリティのエンタープライズ版で、次の 3 つのコマンド ライン ユーティリティで構成されています。
- ScanState.exe: バックアップ ツール
- LoadState.exe: 復元ツール
- USMTUtils.exe: USMT で使用するデータ ストアを空けるために使用されるユーティリティ
リフレッシュと置換は、USMT 4.0 が重要な役割を果たす 2 つの展開シナリオです。リフレッシュでは、ローカル データのバックアップを保持しながら、既存のコンピューターのイメージを再作成します。置換では、単にコンピューターを置換します。置換の場合は、ネットワーク共有や、場合によっては外部ドライブにバックアップを保存します。
USMT 4.0 の最新バージョンには、次のようないくつかの新機能が用意されています。
- ハード リンク移行ストア: この機能を使用すると、データを別のフォルダーにコピーすることなくローカルに保存できます。そのため、バックアップと復元にかかる時間が短縮されます。この機能では、移行に NTFS ハード リンクを利用するので、実際に、データがディスク上の物理セクターから移動されることはありません。
- オフラインでの ScanState の実行: この機能を使用すると、Windows プレインストール環境 (WinPE) でバックアップを行えます。現在、この機能は、SCCM 2007 と MDT 2010 Zero Touch の "ユーザー駆動型のインストール" (UDI) コンポーネントでしか提供されていませんが、MDT の次期バージョン (MDT 2012) で提供される予定です。
- ボリューム シャドウ コピーのサポート: この機能が有効になっている場合、ScanState では、ボリューム シャドウ コピー サービスを使用してファイルのスナップショットを作成できます。
- 新しい高度暗号化標準 (AES) 暗号化オプション: USMT データ ストアの暗号化レベルを制御できるようになりました。
- 構成可能なファイル エラー: (エラーが発生しても続行することを意味する) /c コマンド ライン オプションを使用して無視しても問題ないファイルとフォルダーを制御できます。
- 新しいヘルパー関数: 新しいヘルパー オブジェクトを使用すると、移行するファイルやデータをよりきめ細かく制御できます。
- 領域の推定精度の向上: このリリースでは、バックアップのサイズを推定するスイッチ (/p) の精度が大幅に向上しています。
- 移行されるファイルのリスト: /listfiles という新しいスイッチを使用すると、移行されるファイルがすべて記載されたテキスト ファイルを生成できます。
- ローカル グループの移行: <ProfileControl> という新しいセクションを使用すると、移行中にユーザーのローカル グループ メンバーシップを構成できます。
USMT のシステム要件
USMT 4.0 では、次の OS 間の移行がサポートされています。
- 移行元 OS
- Windows XP
- Windows Vista
- Windows 7
- 移行先 OS
- Windows Vista
- Windows 7
異なるプロセッサ プラットフォーム間の移行に関しては、32 ビットから 64 ビットへの移行はサポートされますが、64 ビットから 32 ビットへの移行はサポートされません。
USMT で移行されるもの
USMT では、コンピューターから移行するデータは XML テンプレートで制御されます。既定のテンプレートで移行されるものは、次のとおりです。
- ユーザー補助の設定
- アドレス帳
- コマンド プロンプトの設定
- デスクトップの壁紙 (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- 暗号化ファイル システム (EFS) ファイル
- お気に入り
- フォルダーのオプション
- フォント
- グループ メンバーシップ
- Internet Explorer の設定 (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- Microsoft ODBC の設定
- マウスとキーボードの設定
- ネットワーク ドライブのマッピング
- ネットワーク プリンターのマッピング (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- オフライン ファイル (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- 電話とモデムのオプション (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- リモート アクセス サービス (RAS) 接続と電話帳 (.pbk) ファイル
- 地域設定 (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- リモート アクセス
- タスク バーの設定 (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- Windows メール (Windows XP からの移行では Microsoft Outlook Express メール (.dbx) ファイルが移行されます)
- Windows Media Player (オフライン バックアップを使用した場合は移行されません)
- Windows Rights Management
USMT では、この他にも、約 30 種類ものアプリケーションの設定や多くの一般的な種類のファイルを移行することができます。USMT で移行されるものの詳細なリストについては、USMT のドキュメント (USMT.CHM) を参照してください。
Office 2010 のサポート
USMT 4.0 の最初のバージョンでは、Office 2010 はサポートされていません。2011 年 2 月にリリースされた更新プログラムで、Office 2010 のサポートが追加されました。SCCM 2007 OS 展開 (OSD) を MDT 2010 Zero Touch と共に使用している場合は、ZTIUserState.wsf を新しいバージョン番号で更新する必要があります。詳細については、こちら (英語) を参照してください。
MDT 2010 と SCCM 2007 を使用すると、ScanState と LoadState で必要なコマンド ラインが生成されます。これにより、バックグラウンドで完全に自動化された処理が実行可能となりますが、多くの場合、USMT でバックアップされるデータはカスタマイズするのが望ましいでしょう。
USMT 4.0 では、データや設定は、ユーザー プロファイル内のデータか、ユーザー プロファイルの外にあるデータのいずれかとして定義されます。コマンド ライン スイッチを使用して、バックアップするプロファイルを定義できます。USMT の既定の設定では、コンピューター上のすべてのプロファイルが移行されます。USMT で移行されるのは、ローカル プロファイル (ローカル アカウントとドメイン ユーザー) のみで、移動プロファイルで使用するサーバー共有を USMT による移行の対象として指定することはできません。
ScanState コマンドで次のスイッチを使用すると、バックアップするプロファイルの数を制限できます。このスイッチを使用すると、USMT は、過去 60 日以内にログオンしたプロファイルのみをバックアップするように構成されます。
/ue:*\* /uel:60
バックアップされるデータを制限するもう 1 つの方法は、XML テンプレートを構成することです。USMT には、既定のテンプレートがいくつか用意されていますが、独自のテンプレートを作成することもできます。C:\Demo1 フォルダーのすべてのテキスト ファイルと C:\Demo2 フォルダー全体を移行するサンプルを以下に示します。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?> <migration urlid="https://www.microsoft.com/migration/1.0/migxmlext/filemig"> <component type="Application" context="System"> <displayName>File Migration Test</displayName> <role role="Data"> <rules context="System"> <include> <objectSet> <pattern type="File">C:\Demo1\* [*.txt]</pattern> <pattern type="File">C:\Demo2\* [*]</pattern> </objectSet> </include> </rules> </role> </component> </migration>
MDT 2010 Lite Touch を使用しているときには、カスタム テンプレートを展開共有の USMT フォルダーに保存する必要があります。その後、ルール (customsettings.ini) を次のように更新します。
- USMTMigFiles001=MigApp.xml
- USMTMigFiles002=MigUser.xml
- USMTMigFiles003=<カスタム テンプレート>.xml
SCCM 2007 OSD と MDT 2010 Zero Touch を使用しているときは、カスタム テンプレートを USMT パッケージ フォルダーに保存する必要があります。その後、設定パッケージを次のように更新します。
Properties=OSDMigrateConfigFiles,OSDMigrateMode OSDMigrateMode=Advanced OSDMigrateConfigFiles=Miguser.xml,Migapp.xml,YourTemplate.xml
USMT をテストする
USMT を使用する場合、作成したテンプレートをテストするには、次の方法を使用できます。
- 環境内の稼働中のコンピューターから、手動またはタスク シーケンスを通じて、バックアップを実行します。バックアップは非破壊的な処理なので、何度でも実行できます。
- 会社のイメージを仮想マシン (VM) に展開します。
- VM のスナップショットを作成します。
- VM でバックアップを手動で復元し、適切な構成になっているかどうか確認します。
- 構成が適切でない場合は、テンプレートを修正し、再度バックアップを実行します。続いて、VM のスナップショットを作成し、再び復元を試みます。
テストに VM を使用すると、ほんの数時間で複数のテンプレートを簡単にテストできます。完全なイメージの展開を毎回行うのに比べると、テストにかかる時間ははるかに短くて済みます。手動でテンプレートが機能することを確認したら、完全なイメージの展開をテストします。
Johan Arwidmark は、エンタープライズ レベルの Windows 展開ソリューションを専門とするコンサルタントで、執筆も行っているオールラウンドな IT 担当者です。毎年、Microsoft Management Summit や TechEd など、複数のカンファレンスで講演しています。また、deploymentresearch.com (英語)、myitforum.com (英語) などの展開に関するコミュニティにも積極的に参加しており、セットアップと展開の Microsoft Most Valuable Professional に認定されています。Windows 展開ツールとソリューション、Microsoft Deployment Toolkit、Windows プレインストール環境、ユーザー状態移行ツール、Windows 展開サービス、および Microsoft System Center Configuration Manager を専門としています。