Windows 8: デザインが新しくなったタスク マネージャー

マイクロソフトは Windows 8 でタスク マネージャーのデザインを見直して、パワー ユーザーと一般ユーザーの両方に対応するようにしました。

Ryan Haveson

タスク マネージャーには、一般的に使用されているマイクロソフトのアプリケーションとして長い歴史があります。タスク マネージャーは、プログラムを終了したり、プログラムを切り替えたりするシンプルなユーティリティとして、初期の Windows バージョンで誕生しました。長年に渡り、いくつかの Windows のリリースを経て、十分な機能が追加され、今日のタスク マネージャーになりました。

Windows 8 の開発にあたって、私たちのチームは、タスク マネージャーを見直し、いくつかの新しいシナリオについて熟考しました。また、"両極端の立場" を取る標準的なユーザーと自身のコンピューターの状況を詳細に管理することを望むユーザーを対象とするタスク マネージャーのデザインを再調整する新たな方法についても検討しました。

タスク マネージャーは一般的に使用されているため、私たちが行うあらゆる変更について関心が寄せられることはわかっていました。当初、私たちが実現すべきだと考えていた主な目標は次のとおりでした。

  • 優れたデザインでよく練られた近代的なツールを作成する。技術的なツールであっても、デザインに重点を置くことでメリットが得られます。
  • 一部の高度なテクニカル ユーザーがリソース モニターや Process Explorer など他のツールを使用する状況を招いている機能面の不足を埋める。
  • 今までにないレベルのデータへのアクセスを求めるユーザーを対象に、より洗練されて使いやすいツールにするために、データを整理してデータの豊富さを強調する。

タスク マネージャーの使用状況

現在担っている役割を優れたパフォーマンスで実行するタスク マネージャーにするため、ユーザーの使用状況を把握することから始めました。長年に渡る成長により、タスク マネージャーは、さまざまなシナリオをサポートするようになりました。Windows 7 では、タスク マネージャーを使用して、アプリケーションの終了、プロセスの詳細なデータを確認、サービスの開始と停止、およびネットワーク アダプターの監視を行うことができます。さらに現在ログオンしているユーザーについて基本的なシステム管理者のタスクを実行することもできます。このように、タスク マネージャーには多数の機能があります。

驚くべきことではありませんが、[アプリケーション] タブと [プロセス] タブの使用率がほぼ等しいことは興味深い事実でした。これは、[アプリケーション] タブで一部の重要な詳細データを確認できないために、ユーザーが [プロセス] タブにもアクセスしているという状況を示しています。次に、ユーザーが [プロセス] タブで何を行っているかを把握するために、このタブの使用状況を確認しました。

ユーザーが [プロセス] タブを利用するのは、[アプリケーション] タブのリストにない項目 (バックグラウンド プロセスやシステム プロセスなど) を探している場合、または最もリソースを消費しているプロセスを調べたい場合のどちらかであることがわかりました。

次に、タスク マネージャーで、ユーザーが行う操作を調べました。データの分析とユーザーとの対話から、タスク マネージャーの最も一般的な用途は、単純にアプリケーションまたはプロセスを終了 (強制終了) することだという結論に至りました。

新しいタスク マネージャーの目標

私たちチームの手元にある全データと背景調査に基づいて、次の 3 つの主な目標に重点を置くことにしました。

  • 最も一般的なシナリオに合わせてタスク マネージャーを最適化する。[アプリケーション] タブを使用して、特定のアプリケーションを見つけて終了するシナリオ、または [プロセス] タブにアクセスして、リソースの使用量でプロセスを並べ替えて、リソースを回収するために一部のプロセスを終了するシナリオに重点を置きます。
  • 近代的な情報デザインを使用して、機能面の目標を実現する。機能面のシナリオの目標を実現するのに役立つ情報デザインとデータのビジュアル化に重点を置くことで、よく練られた近代的なツールを作成します。
  • 機能を削減しない。注目すべき主なシナリオがいくつかある一方で、使用頻度の低いその他のシナリオも、タスク マネージャーには数多く存在します。新しいタスク マネージャーでは、機能の削減ではなく、改良、強化、および改善を行うという明確な目標を設定しています。

対処すべき重要な問題は、ユーザーを過剰な情報で困惑させることなく、興味深い新しい機能をすべて追加できる方法を考えることでした。この問題を解決するために、新しいファイル コピーのダイアログ ボックスのモデルと似た [詳細] ボタンと [簡易表示] ボタンを使用することにしました。

このモデルにより、既定のビュー (簡易表示のビュー) を、アプリケーションを見つけて終了するという主なシナリオに合わせて最適化できました。また、詳細ビューは、ユーザーが明示的に要求しない限り表示されないため、詳細ビューには、かなり詳しいデータを追加することができました。詳細ビューでは、既存のタスク マネージャーで採用されているタブのモデルを維持し、各タブに表示されるコンテンツの改良に重点を置きました。これは、既存の機能を削減することなく、改良、強化、および改善するうえで役立ちました。

すばやく効率的にプロセスを終了する

多くのサードパーティ製ツール (または Sysinternals の Process Explorer) から、タスク マネージャーに追加できるパワー ユーザー向けの機能が多数あることはわかっています。しかし、大多数のユーザーを過剰な情報で困惑させるツールを提供することは望んでいないので、まず一般ユーザーに目を向ける必要がありました。

もちろん、多くのタスクで専門性や独自のイノベーションを実現できるサード パーティ製のツールは、今後も高く評価しますが、既定のビューは、最も多くのユーザーのニーズに応え、最も一般的なシナリオのニーズに応える、必要最低限のエクスペリエンスを提供するように設計されています。

Windows 8 で初めてタスク マネージャーを起動したとき、実行中のアプリについてのデータが非常にすっきりした状態で表示されます。既定のビューは、適切に動作していないアプリケーションを終了するという役割に特化しています。この主なシナリオに直接関係ないものは、このビューからすべて削除しました。

この既定のビューの価値は、このビューから取り除いた機能にあります。アプリケーションの終了という主なタスクに直結しない機能をすべて取り除くことで、焦点を絞った効率的なデザインを実現しました。次に具体的な変更点をいくつか示します。

  • 主なシナリオに直結しないためタブを取り除いた。
  • メニュー バーを取り除いた。
  • アプリケーションのみを表示する。
  • エクスペリエンスが雑然とするのを防ぐため、多くのユーザーが理解しない技術的な概念やリソース使用量の統計情報を取り除いた。
  • 二重の確認ダイアログを取り除いた。[タスクの終了] をクリックしても、"よろしいですか?" というメッセージが表示されないようにしました。速やかに選択したアプリケーションを終了します。データを保存するかどうかを確認するダイアログ ボックスは表示されないのでご注意ください。

同じアプリケーションとウィンドウを開いた状態の Windows 7 のタスク マネージャーと比べると、新しいタスク マネージャーのビューは、よりすっきりした、焦点を絞った状態になります。このビューは、アプリケーションの閉じるボタンをクリックしても終了しない "応答なし" の状態に直面する多くのユーザーにとって最適です。

パフォーマンスの問題を診断する

タスク マネージャーに追加された新機能の多くは、詳細ビューにアクセスしたときにだけ表示されます。このビューは、パワー ユーザーを対象とした領域です。一般ユーザーは、このレベルの詳細情報を閲覧することは望まない可能性があり、一般ユーザーのニーズは "簡易表示" ビューで満たされるものであることに注意してください。新しい詳細ビューで導入された機能は次のとおりです。

ヒート マップ

新しい [プロセス] タブで最も顕著な変更点は、さまざまな値を色で表現する新しいヒート マップ表示です。遠隔測定データによると、一般的に、ユーザーは、[プロセス] タブにアクセスして CPU 使用率やメモリ使用量でプロセスを並べ替えて、想定を超える量のリソースを消費しているアプリケーションを探すことがわかりました。ヒート マップの優れた点は、データを並べ替えることなく、複数のリソース (ネットワーク、ディスク、メモリ、および CPU 使用率) の異常を同時に監視できる点です。また、数字を読み取ったり、さまざまな概念や特定の単位について理解する必要なく、ホット スポットをすぐに特定できます。

ネットワークとディスクのカウンター

多くのパワー ユーザーが、タスク マネージャーに追加でリソース モニターなどの他のツールを使用した理由は、従来のタスク マネージャーでは、プロセスごとのネットワークとディスクの使用状況を確認できなかったからです。多くのパフォーマンスの問題の根本的な原因が、ディスクや複数のアプリケーションによるネットワーク帯域幅の奪い合いであることを考えると、従来のタスク マネージャーは機能不足だったと言えます。新しいタスク マネージャーでは、これらのリソースについても、メモリや CPU と同じレベルの詳細情報が表示されます。

リソース使用量

コンピューターでパフォーマンスの問題が生じる最大の原因の 1 つは、リソースの競合です。特定のリソースの使用率がしきい値を超えると、列見出しが強調表示され、ユーザーの注意を促します。これは警告表示と考えてください。パフォーマンスの問題に直面した場合、この表示により、どこから調査すべきかわかります。

グループ化の規則

現在のタスク マネージャーの大きな課題は、アプリケーションに対応するプロセス (アプリケーションは一般的に強制終了しても安全です)、Windows OS のプロセス (強制終了するとブルー スクリーンになる場合があります)、および詳細な調査が必要なさまざまなバックグラウンド プロセスを見分けるのが難しいことです。新しいタスク マネージャーでは、プロセスが種類別にグループ化した状態で表示されるので、簡単にプロセスを区別できます。また、必要な場合には、従来のようにグループ化されていない状態でプロセスを表示することもできます。

バックグラウンド プロセス (およびサービスなど他のすべてのプロセス) に、わかりやすい表示名が付けられました。Windows 8 タスク マネージャーでは、"Print driver host for applications" (アプリケーション用プリンター ドライバー ホスト) という項目があります。この項目は、従来のタスク マネージャーでは、"splwow64.exe" と表示されていました。なんらかの理由で実行可能ファイル名を確認する必要がある場合は、プロセス名の列をオプションで追加できます。

最上位ウィンドウのグループ化

従来のタスク マネージャーで最もわずらわしかった点の 1 つは、[アプリケーション] タブの情報が階層化されておらず、システムの全プロセスのすべての最上位ウィンドウが表示されていたことです。最上位ウィンドウの一覧は興味深い情報ですが、多くの場合、過剰な情報が表示されます。場合によっては、そのプロセスの他のすべてのウィンドウを閉じないと、特定のウィンドウを強制終了できないこともあります。

この問題に対処するために、新しいタスク マネージャーでは、最上位ウィンドウをその親プロセスの下にグループ化しました。この変更により、一般的な用途においては、画面がとてもすっきりした状態になり、終了可能なプロセスとプロセスのリソース使用量に集中できるようになりました。また、各プロセスが所有するウィンドウを確認できるので、プロセスを終了したときにどのウィンドウが閉じられるのかがわかります。

コンテキスト メニューに組み込まれた検索機能

プロセスの一覧で "fussvc.exe" のような項目を見て、これは何だろうと疑問に思ったことはありませんか。この問題の解決に有効な最初の手段は、表示名を追加することです (なお、fussvc.exe は Fast User Switching Utility Service (ユーザーの簡易切り替えユーティリティ サービス) のことです)。このプロセスについて詳しく知るには、Web を検索する必要があります。

新しいタスク マネージャーでは、右クリックで表示する、コンテキスト メニューに検索機能が組み込まれています。このコンテキスト メニューから既定の検索エンジンに直接アクセスして、詳細と関連情報を確認できます (既定の検索エンジンはカスタマイズできます)。この機能は、バックグラウンド プロセスが、有用に機能しているのか、単に無駄なサイクルを消費しているのかを判断するうえで、大きな違いをもたらします。

サービス ホストの詳細

Windows 7 でタスク マネージャーを開いて [プロセス] タブを表示し、[すべてのユーザーのプロセスを表示] をクリックすると、同じように見える 8 つの "svchost.exe" インスタンスがおそらく表示されます。これは、"あまり参考にならない" 情報源として最もよく指摘されるものの 1 つです。

もちろん、これが実際には単なるサービス ホスト プロセスで、プロセス識別子 (PID) 列を追加して、[サービス] タブに移動して、PID で並べ替えたり、その PID に関係したサービスを確認して、各サービスを表記名で逆引きできる、ということをご存じの方もいるでしょう。しかし、これはたいへんな作業で、だれもがこの方法を知っているわけではありません。新しいタスク マネージャーでは、すべてのサービスがプロセスの種類別にグループ化されて表記名で表示されるので、svchost のインスタンスがリソースを大量に消費しているときに、何が起こっているのかを簡単に確認できます。

ご覧のように、新しいタスク マネージャーでは非常に多くの機能強化が施されました (しかも、今回の記事では最初のタブの詳細を説明しただけです)。タスク マネージャーは、UX デザイナーと研究者が、テクニカル プログラム マネージャーやエンジニアと協力して、簡潔で整理された効果的なデザインを作り上げるまたとない機会となりました。一般ユーザーにとっては、より効率的に使用できるようになり、パワー ユーザーにとっては、よりきめ細かい情報が提供されるようになっています。

Ryan Haveson

Ryan Haveson は、エンジニアリング チームを統率し、世界的に有名なブランドである Xbox や Windows などのソフトウェアとサービスの提供に 15 年以上携わってきました。Ryan は、Windows 8 の Windows エクスペリエンス チームのグループ マネージャーを務めていました。Windows エクスペリエンス チームでは、ライブ タイル通知プラットフォームや新しいタスク マネージャーなど、エンド ユーザーと開発者向けの機能をデザインして実現しました。現在は、米国カリフォルニア州のサンディエゴにある Qualcomm の Snapdragon 部門で Windows と Windows Phone のエンジニアリング システム グループを統率しています。連絡先は、ryanhaveson@hotmail.com (英語のみ) または linkedin.com/in/ryanha (英語) です。

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