IT 管理: リーダーシップを分析する
有能なリーダーになるには、スキルを習得する必要があります。しかし、強力なチームを作って、動かすために使える、いくつかのシンプルな手法があります。
Ryan Haveson
リーダーシップとは、高く評価され、高い報酬を得られるものです。偉大なリーダーになる方法を学ぶと、あらゆることに対応できるようになります。また、他の人がより良いリーダーになることをサポートできれば、その人たちが持つ力をもっと引き出せるだけでなく、その人たちも自分たちのチームの力をもっと引き出せるようになります。チーム メンバーは、リーダーという手本から学び、仕事にさらに力が入るようになります。
多くの場合、リーダーシップは、さまざまな様式で説明されます。ほとんどの場合、リーダーシップの説明は、品位、寛容さ、献身さ、良い手本となることなど、リーダーシップの特性を中心に展開されます。これらは、重要なもので、事実です。しかし、私は、常々、リーダーシップの説明は、もっと総体的なモデルに落とし込む必要があると感じていました。リーダーシップを基本的な構成要素に細分化することにより、これらの特性が、全体的なリーダー像にどのように適合しているのか、理解しやすくなります。このような概念モデルを習得すると、自分のスキルの中で弱い部分に焦点を当て、その影響を理解し、弱い部分に対応するためのツールを特定できます。
リーダーシップの構成要素
リーダーシップの主な構成要素は、次のとおりです。
- リーダー: リーダーなくして、リーダーシップは存在しません。
- 随行者: 同様に、随行者なくして、リーダーシップは存在しません。
- 目標: 目標がなくても、リーダーシップは発揮できると言えますが、一部のリーダーは、優先順位や方針の変更により、チームを蛇行航路に乗せています。厳密に言うと、このような状況でも、目標は存在していますが、その数が多すぎるのです。
これらの基本的な構成要素から始めると、良いリーダーシップとはどういうものかを簡単に示すことができます。通常、人は、価値ある目標に向かう有能なリーダーに従います (図 1 参照)。
図 1 リーダーシップの分析
すべての状況で、このように良い協調関係が存在するわけではありません。良いアイデアを持っていても、他者を従えることができないリーダーもいます。つまり、リーダーはいるかもしれませんが、追随者がいないという状況です (図 2 参照)。
図 2 偉大なリーダーは他者を従えることができる
この問題は、リーダーが数人を従えることはできても、大きな影響を与えるために、適切な方向に向かう人を十分に獲得できないという別の形で現れることもあります (図 3 参照)。
図 3 偉大なリーダーは多数の他者を従えることができる
これは、諸要素の中でよく見落とされる部分です。追随者を獲得して、彼らを目標に導くだけでは十分ではありません。偉大なリーダーは、チームを "価値ある" 目標へと導きます。集団のやる気を起こして、活気付けられるリーダーは、リーダーシップがあるように見えます。しかし、優れた判断力が恒常的に欠如している場合、社交術が下手でも優れた判断力を持っている人に劣るリーダーになります。
リーダーシップの特性
このようなリーダーシップの構成要素 (追随者、リーダー、目標) の分類法を使用すると、リーダーシップのさまざまな特性が、どのように各構成要素に影響を与えるかを調査できます (図 4 参照)。
- 成果: リーダーは、最終的には成果で評価されます。
- 協調関係: 最も効率的な道は、一直線に目標へと続いています。方向性は定められていますか。追随者の足並みは、リーダーと同じ方向に向かって揃っていますか。
- 速度:すばやく動くチームは、ゆっくり動くチームより速く目標を達成できます。
- 量: 追随者が 1 人のリーダーが成し遂げられることは、追随者が 10 または 100 人のリーダーより少なくなります。
- 質: 最高のリーダーは、最高の他者を従えることができます。
図 4 リーダーシップ モデルの説明的な特性
価値ある目標を追い求める
上記の特性を考慮すると、いくつかの一般的なリーダーシップに関するアドバイスを文脈に落とし込んで、それがリーダーシップの全体的な質にどのような影響を与えるのを簡単に理解できるようになります。成果は、リーダーシップの最も重要な側面でなければなりません。追い求めるべきことを把握していることが不可欠となります。
そのため、目標に価値があることを確認するのが、リーダーが最初に直面する課題になります。作り出そうとしているものに対するビジョンを持っているリーダーもいれば、周りの人たちの総意から目標をうまく作り出せるリーダーもいます。どちらの場合でも、目標の明確なイメージ、その目標が達成可能だという信念、達成したら、その目標が大きな成果をもたらすという信念を持つことが重要です。
- 目標の核心を示す: 多くの場合、何かを効果的に説明できるようになる前に、そのことについて理解できます。リーダーにとって、他者に目標の核心を示して、簡潔に説明できるようになるまで、目標について突き詰めて考えることは重要です。目標の核心を示せなければ、他者を適切な方向に導けるほど、明確に目標を説明できないため、その目標達成をサポートする人を獲得するのは困難です。また、目標の核心を示すことで、そのミッションに配分されるすべてのリソースが、リーダーが実現しようとしているものの中核部分に集中するようになります。
- 多様な集団からフィードバックを求める: リーダーは、最初に具現化した目標やミッション ステートメントに固執して邁進しがちですが、初めに方針の改良にかけた時間が、最終的には成果を生みます。これは、後で代償の大きな方向性の転換を行うことを回避するのに役立ちます。さまざまな集団からフィードバックを得ることは重要です。なぜなら、リーダーが彼らの言うことに賛同しなくても、他のだれかが賛同するからです。最終的に、そのフィードバックに基づいて目標を変えなかったとしても、この集団に対応するアプローチを変える場合もあります。そのような情報がないと、後で不意打ちを食らって、目標達成が危うくなるおそれがあります。
- 組織と足並みを揃える: 目標に対して組織の足並みが揃っていないミッションほど、失敗する可能性が高いミッションはありません。組織全体のミッションに適合しなかったため、プロジェクトが中止されることは往々にしてあります。組織の方針変更により、プロジェクトの中止が回避不能な場合もありますが、プロジェクトが多様な集団からフィードバックを求めずに開始されたために、最初から失敗することが見えている場合もあります。
方向性を定め、協調関係を生み出す
私は、組織が組織再編や新しい戦略的の方向性などの大きな転換に対応するのをサポートすることが最優先業務という任務を担ったことが何度もあります。チームがビジョンを作るのをサポートし、そのビジョンを具体的な手順に変えて、その転換の結果として生じる成功に関与できるのは、刺激的な任務です。
ただし、転換を押し進める前に、私はチームのメンバーに、転換のロードマップとチームの目標を確認しています。多くの場合、チーム メンバーの解釈は、驚くほど多種多様です。目標とロードマップの共通意識が欠如しているときは、組織に協調関係が必要なことの表れです。
私たちは、さまざまな優先順位の中で配分できる、一定量のエネルギーと時間を使って仕事をしています。優先順位の共通意識がなければ、時間とリソースは分散されます。これは、組織の効率低下につながります。リーダーが直面する最も大きな課題の 1 つは、共通の目標に時間とエネルギーを配分するように他者を導くことです。協調関係を生み出すためには、リーダーは、方向性を明示し、目標を達成することに対する他者のモチベーションを上げて、他者を適切な方向に導く環境を作り出す必要があります。これは次の 3 つの重要な構成要素に分類できます。
- 優先順位の集約と共通意識を生み出す: どのチームも、人手が足りておらず、もっと多くのリソースが必要だと言います。これが真実であるかどうかはさておき、これはチーム全員の時間が貴重なリソースだという事実を表しています。また、実行可能なすべてのことを行うのに、十分な時間がないことも意味しています。そのため、チーム全員の時間が、適切な優先順位で使われるようにすることが非常に重要です。優先順位の集約と共通意識を生み出すことは、チーム メンバーが、チームの作業負荷に優先順位を付けるときの判断基準を理解するのに役立ちます。
- 目標が自分の利益と、どのように合致しているのかについて理解を促す: チーム全員が目標達成に関する優先順位を明確に理解しても、その目標が各自の優先順位と合っていなければ、協調関係は生まれません。これは、チームがより全体的な目標を理解することを促したり、各自の貢献を業務評価の方針と結び付けたり、単純に目標達成への挑戦に対する興奮を促すことにより、実現できます。なんらかの方法で、目標を達成することにより、自分たちに利益がもたらされることをチームが理解する必要があります。さもなければ、他者を従えることは、あらゆる点で困難になります。
- 人を成功に導くプロセスを作る: どのような目標達成の道のりにも、道中には不確実なことがあります。その道を進む人が多いほど、同一の不確実なことに遭遇する頻度が高くなります。他者を導くのに不可欠なのは、用意されているプロセスや環境が、成功の一助になるようにすることです。不確実なことが実際に起こったときには、既に解決策が用意されているように、すべての不確実なことについてじっくり考え、これらの課題の考察に初期段階で力を入れましょう。
速度: チームがすばやく動けるようにする
多くの人は、単純に、チームがよりすばやく動けるようにすることが、生産性を向上する最も重要な方法だと考えます。それも重要ですが、目標が堅固で、方向性も堅固であることを保証すると、最も大きな生産性がもたらされます。これは、よく "効率的な労働と勤勉な労働" と表現されます。チームが効率的に作業できるようになったら、両方の表現 (効率的な労働と勤勉な労働) の長所を生かすときです。偉大なリーダーは、太鼓のたたき方を知っていて、各自の裁量に任せたときよりも、チームをすばやく動かすことができます。これには多くの手法がありますが、どの手法も次の主なカテゴリに分類できます。
- 障害を取り除く: 速度とは、特定距離を進むのにかかる時間です。速度を上げるには、まず、前方に障害物のない道を用意します。これは、リーダーは先を読み、おおよその正念場を把握して、あらゆる障害を軽減できる必要があることを意味しています。
- 頻繁に挑戦的な締め切りを設ける: ここではうまくバランスを取る必要があります。あまり厳しく強要すると、手を抜く理由や燃え尽きてしまう環境を生み出すことになりますが、ある程度厳しく強要しないと、可能な限りすばやく目標を達成することはできません。また、課題がないと、人の熱は冷める傾向があります。"挑戦的すぎる状態" と "課題が足りない状態" の間でバランスを取るときは、これらの要素に目を配ることが重要です。
- ダッシュボードを作る: 運転中の速度を示すスピード メーターの表示を見たことはありますか。運転速度が速すぎることを示すだけで、運転手は減速する傾向があります。方向は反対になりますが、仕事の成果の測定にも同じことが当てはまります。進捗を示すダッシュボードを用意すると、チームは集中し、すばやく動くようになる傾向があります。目標を達成する速度と相関する重要な指標を定義し、その指標の追跡と公開は必ず行ってください。これらの指標を使用して締め切りを設けると、チームはよりすばやく動き、目標にもっと集中するようになります。
量: より多くの人を獲得する
より多くの人を引き入れるのに、必ずしもより多くの人を雇う必要はありません。チームの規模を拡大する方法は他にもあります。たとえば、プロジェクトに貢献するよう組織外の同業者や利害関係者に働き掛けて協業することもできます。もう 1 つの優れた戦略は、会社の役員とプロジェクトについて話し合うことです。プロジェクトが役員の頭の片隅にあること、プロジェクトが重要である理由とプロジェクトの成功にどのように寄与できるかを役員が把握するようにしてください。次に、多くの人を引き入れるための、いくつかの重要な手法を示します。
- 名前を付ける: 目標の性質により、この名前は、製品名、コード名、またはリーダーの構想を指す単なる単語になる場合があります。名前がないと、プロジェクトについて話したり、覚えておくのは、困難です。たとえば、エンジニア チームの慣習を変えて、コードのコメントの残し方の改善に着手する場合は、"コメント強化プロジェクト" と呼ぶことができます。目標に名前を付けることは、その目標を正当化し、特定の目的や業務上の目標を達成するための一連の活動を正当化して支えるのに役立ちます。小さいことのようにも聞こえますが、人は (To Do リストにある 1 回限りの項目よりも) 名前のあるものに時間とエネルギーを自発的に注ぎます。
- 潜在的な利害関係者と目標を共有する: 利害関係者とは、そのミッションの影響を受けたり、そのミッションの成功に貢献する理由がある人です。ミッションに名前がある場合、より多くの人を引き付けるために、そのミッション名を世の中に広める必要があります。何を実現しようとしているのか知らない利害関係者はプロジェクトに参画できません。仕事を分けて、成果を共有すれば、(特に大きな会社では) リソースを適切に使えるところに、どれほど労力の重複が起こっているかには、驚くでしょう。プロジェクトをすべての利害間関係者と共有ことで、労力の重複を削減できます。
- マーケティング資料: 製品にマーケティング資料があるのは、マーケティング資料が有効だからです。この場合のマーケティング資料は、そのミッションについて知りたい人と共有できるドキュメント、Web サイト、および PowerPoint プレゼンテーションです。名前を付けるとプロジェクトが正当化されるのと同じように、プロジェクトが正当化されるのに加え、リーダーの代わりに、他者がそのミッションを利害関係者と共有することを促進します。その人たちは、リーダーが確認しようと思わないような、細かいことに気付く場合もあります。
これらの手法を習得すれば、影響力のあるネットワークを広げるのも、より多くの人がその目標に向かうのを促すのも、はるかに簡単になります。もちろん、より多くの人を引き付けることだけがリーダーシップではありません。引き付ける人の質もまたリーダーシップになります。
質: 良い人を獲得する
チームが、適切な方向に向かって快調に動き出したら、個々のチーム メンバーに目を向ける時期です。1 ~ 2 人のスーパースターは、チーム全体の生産性に驚くほど大きな違いをもたらします。偉大なリーダーは、いつもチームの全体的なスキルを向上する機会をうかがっています。これを行う重要な方法は 3 つあります。
- チーム メンバーを育てる: リーダーは、自分の時間の一部をチームのスキル アップのサポートに使う必要があります。個人の個別スキル向上だけでなく、チーム全体の組織的なスキル向上もサポートします。これらの活動により、トレーニングに費やす時間とエネルギーという短期的なコストが発生しますが、やがて実を結び、最終的には、チームの生産性が向上します。
- 適切な人を雇用する: A クラスの人は A クラスの人を雇い、B クラスの人は C クラスの人を雇うと言われています。これは、そのとおりです。1 人のスーパースターは、3 人の平均以下のプレーヤーに勝ります。1 人しか雇えない場合は、チームの平均値を上げる人が見つかるまで、雇用は控えましょう。不足しているリソースを補わなければならないと感じる短期的な悩みは、適切なチーム メンバーを見つけたときに、大きな実を結びます。
- 能力の低い人が立ち去るのを促す: 能力の低い人がいると、負担や生産性の低下をもたらしかねません。能力の低い人がいると、彼らを補助するために余計な仕事をしなくてはならない仲間や自明のことを説明しなければならない仲間の不満を引き起こす可能性があります。多くのリーダーは、このような人が立ち去るように促すことをためらいます。理由は、そのリーダーがあまりに人が良すぎるか、または遅れが生じることを懸念していて、だれでも、いないよりは良いと考えているかのどちらかです。しかし、能力の低い人が立ち去り、能力のある人と入れ替わることが、リーダー自身を守る結果をもたらします。
ここで紹介した情報に基づいて、現在の構想とリーダーとして担当しているプロジェクトを新たな視点で見直してみてください。方針が的を射ていて、適切な方向に向かっていて、核心を示すことができていると自信を持って言えますか。十分な数の人を従えるために奮闘し、その人たちが十分な速さで動くように導いていますか。進捗が見られない、または進捗を望む領域に焦点を合わせてください。これらの手法を試すと、おそらくその成果に満足するでしょう。
Ryan Haveson は、エンジニアリング チームを統率し、世界的に有名なブランドである Xbox や Windows などのソフトウェアとサービスの提供に 15 年以上携わってきました。Ryan は、Windows 8 の Windows エクスペリエンス チームのグループ マネージャーを務めていました。Windows エクスペリエンス チームでは、ライブ タイル通知プラットフォームや新しいタスク マネージャーなど、エンド ユーザーと開発者向けの機能をデザインして実現しました。現在は、米国カリフォルニア州のサンディエゴにある Qualcomm の Snapdragon 部門で Windows と Windows Phone のエンジニアリング システム グループを統率しています。連絡先は、ryanhaveson@hotmail.com (英語のみ) または linkedin.com/in/ryanha (英語) です。