移動要求について

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2015-03-09

メールボックスを移動する場合、ソース メールボックス データベース から ターゲット メールボックス データベース に移動します。ターゲット メールボックス データベースは、同じサーバー、別のサーバー、別のドメイン、別の Active Directory サイト、または別のフォレストに置くことができます。

注意

このトピックでは、Microsoft Office Outlook Web App との間でのメールボックスの移動については扱いません。

目次

注意

Exchange 2010 SP1 における変更点

以前のバージョンの Exchange でメールボックスを移動する場合の制限

移動要求の利点

メールボックス移動の理由

メールボックス移動でサポートされるシナリオ

移動要求で使用されるサービス

基本的な移動要求の処理

リモート メールボックスの移動

スクリプトを使用したメールボックスの移動

回復可能な削除によって削除されたメールボックス

個人アーカイブ

共有メールボックスとリソース メールボックス

サーバー障害発生時のメールボックスの移動

クライアント エクスペリエンス

移動要求に関連する管理タスクについては、「移動要求の管理」を参照してください。

注意

メールボックスを移動する場合は、以下のことを考慮します。

• Exchange システム マネージャーまたは Active Directory ユーザーとコンピューターを使用して、Microsoft Exchange Server 2003 から Exchange Server 2010 にメールボックスを移動することはできません。

• Exchange Server 2007 で Move-Mailbox コマンドレットを使用して、Exchange 2007 から Exchange 2010 にメールボックスを移動することはできません。

• メールボックスを移動する場合、ユーザーは自分のメッセージ追跡情報を見ることはできません。

注意

Exchange 2010 SP1 における変更点

Exchange 2010 Service Pack 1 (SP1) では、移動要求の機能に関して以下の変更が行われています。

• Exchange 2010 SP1 では、移動元データベース上のメールボックスは回復可能な削除によって削除され、メールボックス サーバーのフェールオーバーやデータの消失が発生してもメールボックスを復元できるようになりました。回復可能な削除によって削除されたメールボックスは、MailboxRestoreRequest コマンドレットを使用して回復できます。詳細については、後述する「回復可能な削除によって削除されたメールボックス」を参照してください。

  注意

  回復可能な削除によって削除されたメールボックスは、移動元のメールボックス サーバーおよび要求を実行するクライアント アクセス サーバーの両方で、Exchange 2010 SP1 を実行している必要があります。

• MoveRequest コマンドレット セットが更新され、別のデータベースへのアーカイブの移動がサポートされるようになりました。

注意

以前のバージョンの Exchange でメールボックスを移動する場合の制限

Exchange 2007 では、Move-Mailbox コマンドレットを使用してメールボックス データベース間でメールボックスの移動を行います。このコマンドレットの使用には制限があります。

• 移動するメールボックスがオフラインである。メールボックスを移動している間 (数時間かかる場合があります) は、ユーザーはメールボックスにアクセスできません。

• メールボックスの移動は同期です。実際の移動はコマンドレットが行い、移動の実行中は Exchange 管理シェルのセッションを閉じることはできません。

• 収集フォルダーはメールボックスと一緒に移動されません。

• 移動が完了するまで、コンテンツのインデックス処理は開始されません。この結果、インデックス処理が完了するまでパフォーマンスの低下が発生します。

• 移動の調整は、管理者によって手動で制御されます。

• フォレスト間でメールボックスを移動するには、Active Directory およびそのメールボックス データベースへの直接のアクセスが必要です。

注意

移動要求の利点

移動要求は、Exchange 2010 の新機能です。移動要求を使用することには、複数の利点があります。

• メールボックスの移動は非同期で、Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション サービス (MRS) によって実行されます。詳細については、後述する「非同期のメールボックス移動」を参照してください。

• メールボックスは、非同期の移動中はオンライン状態が維持されます。詳細については、後述する「メールボックスのオンライン移動」を参照してください。

• メールボックスの [回復可能なアイテム] フォルダーは、メールボックスと共に移動されます。

  注意

  [回復可能なアイテム] フォルダーは Exchange 2010 でのみ使用できます。詳細については、「回復可能なアイテムについて」を参照してください。

• メールボックスの移動の開始後すぐに、コンテンツのインデックス処理がメールボックスのスキャンを開始するので、移動が完了するとすぐに高速な検索が利用できます。

• 各 MRS インスタンス、各メールボックス データベース、または各メールボックス サーバーに対して調整を構成できます。

• リモートのメールボックスの移動は、Exchange メールボックス レプリケーション プロキシ (MRSProxy) サービスを介することで、インターネット経由で動作します。フォレスト間に、ダイレクト バック エンド サーバーおよび Active Directory アクセスをセットアップする必要はありません。

• メールボックスの移動は、組織内のすべての Exchange 2010 サーバーから管理できます。

• メールボックスの内容は、管理コンピューターから移動しません。例えば、 Exchange 2007 では、Move-Mailbox コマンドレットを実行すると、データの移動はコマンドレットを実行したコンピューター上で管理されました。移動が完了するまでは、Exchange のセッションをシャットダウンできませんでした。

• メールボックスの移動履歴はメールボックスに保持されます。

非同期のメールボックス移動

Exchange 2010 で移動要求コマンドレットを使用すると、コマンドレットは実際に移動を実行しないので、非同期の移動が実行できます。移動は、Exchange 2010 組織のすべてのクライアント アクセス サーバー上で実行されるサービス MRS によって実行されます。MRS を使用すると、移動要求が開始された後は、組織内のすべての Exchange 2010 サーバーからメールボックス移動を管理できるので有益です。詳細については、後の「Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション サービス」を参照してください。

メールボックスのオンライン移動

メールボックスのオンライン移動では、移動中もエンド ユーザーは自分の電子メール アカウントにアクセスできます。ユーザーがロックアウトされるのは、処理の最後の短い間 (最終的な同期が行われている間) だけです。メールボックスのオンライン移動は、Exchange 2010 データベース間、および Exchange 2007 SP3 と Exchange 2010 データベース間でサポートされています。メールボックスのオンライン移動は、フォレスト間または同じフォレスト内で実行できます。ローカルのメールボックス移動とリモートのメールボックス移動は、オンライン移動とは異なっており、このトピックで後で説明します。

注意

メールボックス移動の理由

以下のシナリオでメールボックスを移動することが必要となる場合があります。

• 移行   既存の Exchange 2007 または Exchange Server 2003 組織を Exchange 2010 に移行する場合、メールボックスを既存の Exchange サーバーから Exchange 2010 メールボックス サーバーに移動する必要があります。

• 再配置 再配置目的でメールボックスを移動できます。たとえば、メールボックスを、あるデータベースから、よりサイズの限度が大きな別のデータベースに移動できます。

• 問題の調査   メールボックスに関する問題を調査する必要がある場合に、そのメールボックスを別のサーバーに移動できます。たとえば、利用率の高いすべてのメールボックスを、別のサーバーに移動できます。

• 破損したメールボックス   メールボックスの破損が発生した場合、メールボックスを別のサーバーまたはデータベースに移動できます。破損したメッセージは移動しません。

• 物理的な場所の変更   異なる Active Directory サイトにあるサーバーに、メールボックスを移動できます。たとえば、ユーザーが物理的に別の場所に移動する場合、そのユーザーのメールボックスを新しい場所に近いサーバーに移動できます。

• 管理役割の分離   Exchange の管理を Windows オペレーティング システムのアカウントの管理から分離することができます。そのような場合は、メールボックスを単一のフォレストからリソース フォレストのシナリオに移動することができます。このシナリオでは、Exchange メールボックスはあるフォレストに存在し、それに関連付けられた Windows ユーザー アカウントは別のフォレストに存在します。

• 電子メール管理のアウトソーシング   電子メールの管理をアウトソーシングし、Windows ユーザー アカウントの管理は続けることができます。そのような場合は、メールボックスを単一のフォレストからリソース フォレストのシナリオに移動することができます。

• 電子メールの管理とユーザー アカウントの管理の統合   電子メールを分離またはアウトソーシングして管理するモデルから、電子メールとユーザー アカウントを同じフォレスト内から管理するモデルに、変更することができます。そのような場合は、メールボックスをリソース フォレストのシナリオから単一フォレストに移動できます。このシナリオでは、Exchange のメールボックスと Windows のユーザー アカウントが、同じフォレストに存在します。

注意

メールボックス移動でサポートされるシナリオ

次の表では、Exchange メールボックスの移動でサポートされるシナリオを、関連トピックへのリンクを含めて一覧表示します。

メールボックス移動でサポートされるシナリオ

移動元	移動先	サポート	オンライン移動のサポート	関連項目
Exchange 2010	Exchange 2010	はい	はい	移動要求の管理
Exchange 2007 SP3	Exchange 2010	はい	はい	Exchange 2007 サーバーから Exchange 2010 サーバーにメールボックスを移動する
Exchange 2007 SP1	Exchange 2010	いいえ	×	Exchange 2007 サーバーから Exchange 2010 サーバーにメールボックスを移動する
Exchange 2003 SP2	Exchange 2010	はい	×	Exchange 2003 サーバーから Exchange 2010 サーバーにメールボックスを移動する
Exchange 2010	Exchange 2007 SP3	はい	×	Exchange 2010 サーバーから Exchange 2007 サーバーにメールボックスを移動する
Exchange 2010	Exchange 2003 SP2	はい	×	Exchange 2010 サーバーから Exchange 2003 サーバーにメールボックスを移動する
Exchange 2000	Exchange 2010	×	×	該当なし
Exchange 2010	Exchange 2000	×	×	該当なし

注意

移動要求で使用されるサービス

移動要求は、2 つのサービスによって処理されます。

• Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション サービス (MRS)

• Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション プロキシ (MRSProxy) サービス

Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション サービス

移動要求コマンドレットを使用してメールボックスを移動する場合、MRS が移動プロセスを処理します。前述のとおり、MRS は Exchange 2010 クライアント アクセス サーバー上に存在し、メールボックスをソース データベースからターゲット データベースに移動するサービスです。Exchange 2007では、メールボックスの移動は、Move-Mailbox コマンドレットによって実行されます。サービスを移動のエージェントとして使用することで、ユーザーがメールボックスにアクセス可能な状態のまま同時に移動できます。移動中は、組織内のすべての Exchange 2010 サーバーから、表示、キャンセル、および管理が行えます。

すべてのサービスと同じように、MRS の開始および停止ができます。MRS は、自身の Active Directory サイトのすべての移動要求を定期的に確認します。さらに、MRS にはすべてのインスタンス間に共有メカニズムがあり、2 つのサーバーが同時に移動要求を実行しようとすることはありません。

Active Directory サイトのすべての MRS インスタンスは連携して、データベースとクライアント アクセス サーバーの調整が、すべての MRS インスタンスで順守されるようにします。MRS 調整は構成ファイルで制御されます。構成ファイルを変更する方法の詳細については、「メールボックス レプリケーション サービスの調整」を参照してください。

Microsoft Exchange メールボックス レプリケーション プロキシ サービス

MRS に加えて、MRSProxy サービスが、すべての Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーにインストールされます。MRSProxy は、フォレスト間の移動要求を促進するのに役立ち、リモート フォレストの Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーで実行されます。ただし、MRSProxy は既定で無効になっています。リモート フォレスト上で MRSProxy サービスを有効にする必要があります。リモート フォレストのすべてのクライアント アクセス サーバーで MRSProxy を有効にすることを推奨します。

詳細については、「リモート クライアント アクセス サーバーで MRSProxy サービスを開始する」を参照してください。

注意

基本的な移動要求の処理

以下の図は、ローカルの移動要求の基本的な処理について示しています。

基本的なローカルの移動要求の処理

このシナリオでは、Ayla のメールボックスは、メールボックス サーバー MBX02 上のソース データベース DB01 から、メールボックス サーバー MBX01 上のターゲット データベース DB02 に移動されます。それには、次のコマンドを実行します。

New-MoveRequest -Identity Ayla@contoso.com -TargetDatabase "DB02"

以下の手順は、ローカルの移動要求の基本的な処理について説明しています。

1. コマンドは Active Directory を更新して、移動要求が開始された Active Directory サイト内のシステム メールボックスに特殊なメッセージを残します。そして、その状態は [キュー] に設定されます。移動要求の情報は 2 つの場所に保存されます:ターゲット データベースのシステム メールボックスと、Active Directory 内です。移動がオフライン移動の場合、メールボックスはロックされ移動の状態が [完了] になるまでアクセスできません。

2. MRS のすべてのインスタンスは、Active Directory サイトのすべてのデータベース上のシステム メールボックスを定期的に確認して、キューに入った移動要求が無いかどうかを確認します。この例では、CAS01 の MRS インスタンスは [キュー] 状態の Ayla のメールボックスを見つけます。

   注意

   New-MoveRequest コマンドレットは MRS のインスタンスを選択し、サービスが移動要求を即座に処理するよう要求します。選択された MRS のインスタンスが利用可能な場合、移動は即座に開始されます。選択された MRS のインスタンスが利用できない場合、MRS インスタンスが移動要求を発見するまで、メールボックスは [キュー] 状態に留まります。

3. MRS は DB01 から DB02 にデータの移動を開始します。MRS は、システム メールボックスの、メールボックスの状態を [処理中] に更新します。

4. 移動がほぼ完了すると、Ayla のメールボックスは最終的な同期が完了する間の短時間ロックされます。この時点で、移動要求の状態は [完了の処理中です] に変更されます。

5. 移動が完了すると、DB02 の Ayla の新しいメールボックスはアクティブ化され、DB01 の古いメールボックスは回復可能な削除によって削除されます。移動要求の状態は [完了] に変更されます。Ayla の電子メール クライアントによっては、自分のメールボックスにアクセスするために、いったんログオフしてログオンしなおす必要があるかもしれません。詳細については、後の「クライアント エクスペリエンス」を参照してください。

6. 管理者は、Active Directory から移動要求情報を消去し、DB02 のシステム メールボックスからも消去します。移動要求情報を消去するまでは、メールボックスを再度移動することはできません。移動要求の消去方法の詳細については、「移動要求のクリアまたは削除」を参照してください。

   移動の記録は Ayla のメールボックスに保持されており、IncludeMoveReport パラメーターを指定して Get-MailboxStatistics コマンドレットを実行することでアクセスできます。詳細については、「移動要求のプロパティの表示」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

注意

リモート メールボックスの移動

リモート メールボックスの移動は、フォレスト間のメールボックスの移動とも呼ばれます。Exchange 2010 は、2 種類のリモート メールボックスの移動をサポートしています。

• 両方のフォレストに Exchange 2010 が存在するリモート メールボックスの移動 このシナリオでは、一方のフォレストが Exchange 2010 フォレストで、もう一方のフォレストに少なくとも 1 つの Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーが含まれています。Exchange 管理コンソール (EMC) または Exchange 管理シェルを使用して、これらのメールボックスの移動を実行できます。詳細については、「両方のフォレストに Exchange 2010 が存在するリモート移動要求の作成」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

• 従来の Exchange フォレストがあるリモート メールボックスの移動   このシナリオでは、一方のフォレストに Exchange 2010 が含まれており、もう一方のフォレストに Exchange 2003 SP2、Exchange 2007 SP3、または両方の組み合わせが含まれています。従来のフォレストには、Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーはインストールされていません。EMC を使用してこれらのメールボックスの移動を実行することはできません。シェルを使用する必要があります。詳細については、「フォレストの 1 つに Exchange 2010 がない場合のリモート レガシ移動要求の作成」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

フォレスト間でメールボックスを移動するための前提条件

フォレスト間でメールボックスを移動するための前提条件は広範囲です。詳細については、「メールボックスのフォレスト間の移動要求を準備する」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

TargetDatabase または RemoteTargetDatabase パラメーターの使用

New-MoveRequest コマンドレットは TargetDatabase と RemoteTargetDatabase パラメーターを使用して、メールボックスの移動先のターゲット データベースを識別します。

TargetDatabase パラメーター

TargetDatabase パラメーターには、メールボックスの移動先データベースの ID を指定します。ターゲット ホストから移動を開始する場合、このパラメーターを使用してローカルおよびリモートのメールボックス移動を実行します。ソース フォレストから移動を開始する場合、MRS はソース フォレストからターゲット フォレストにメールボックスをプルします。

注意

TargetDatabase パラメーターの使用は省略可能です。このパラメーターを指定しない場合、その使用法は暗黙的で、メールボックスのプロビジョニング ロード バランサーによってターゲット データベースが指定されます。ロード バランサーによるデータベースの選択を行わない場合は、TargetDatabase パラメーターを使用するか、または Set-MailboxDatabase コマンドレットの IsExcludedFromProvisioning パラメーターを $true に設定して、プロビジョニングから除外するデータベースを指定します。

RemoteTargetDatabase パラメーター

RemoteTargetDatabase パラメーターには、リモート フォレストのターゲット データベースの ID を指定します。ソース フォレストから移動を開始する必要がある場合にのみ、リモートのメールボックス移動に対してこのパラメーターを使用します。たとえば、Exchange 2010 サーバーから Exchange 2007 または Exchange 2003 サーバーにメールボックスを移動する場合、Exchange 2010 フォレストから移動を開始し、それがソース フォレストです。ソース フォレストから移動を開始する場合、MRS は Exchange 2010 サーバーから Exchange 2007 または Exchange 2003 サーバーにメールボックスをプッシュします。

この例では、Tony Smith のメールボックスをリモート フォレストに移動します。

New-MoveRequest -Identity 'tony@humongousinsurance.com' -RemoteLegacy -RemoteTargetDatabase DB03 -RemoteGlobalCatalog 'GC01.humongousinsurance.com' -RemoteCredential $Cred -TargetDeliveryDomain 'mail.contoso.com'

両方のフォレストの Exchange 2010 でリモート メールボックスを移動する

以下では、このリモート メールボックスの移動のシナリオについて説明します。

• 1 つのフォレストは Exchange 2010 フォレストで、もう 1 つのフォレストには少なくとも 1 つの Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーがあります。 

• MRS と MRSProxy は、すべての Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーに存在します。MRS はフォレスト間の移動を処理します。

• Fourth Coffee フォレストと Contoso フォレストの両方に Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーがありますが、Contoso フォレストにだけ Exchange 2010 メールボックス サーバーがあります。Fourth Coffee フォレストには、Exchange 2007 SP3 のメールボックス サーバーだけがあります。

• Fourth Coffee フォレストには、tony@fourthcoffee.com のメールボックスがあります。Contoso フォレストには、tony@fourthcoffee.com 用のメールが有効なユーザーがあり、すべての前提条件の設定は構成済みです。

• 次のコマンドをターゲット フォレストの Contoso.com から実行します。

  New-MoveRequest -Identity 'tony@fourthcoffee.com' -TargetDatabase DBa  -RemoteHostName 'CAS01.fourthcofee.com' -RemoteCredential (Get-Credential Atlanta\Administrator) -TargetDeliveryDomain 'mail.contoso.com'
  

注意

Tony のメールボックスを Exchange 2003 サーバーから移動した場合、移動はオフラインで行われ、Tony は移動が完了するまで自分のメールボックスにアクセスできませんでした。

次の図は、このリモート メールボックスの移動のシナリオを示します。

リモート メールボックスの移動

1. New-MoveRequest コマンドレットは、Contoso フォレストのクライアント アクセス サーバー上で MRS に入力を促します。コマンドレットは Contoso の Active Directory 情報とターゲット データベース上のシステム メールボックスを更新します。この時点で、移動要求の状態は [キュー] です。

2. 移動を開始するために、Contoso フォレストの MRS は Fourth Coffee フォレストの MRSProxy を通して通信します。MRSProxy は Fourth Coffee の Active Directory 情報とリモート データベース上のシステム メールボックスを更新します。この時点で、状態は [処理中] に変ります。

3. Contoso フォレストの MRS サーバーは、Tony のメールボックス データを Fourth Coffee の MRSProxy サーバーを通してメールが有効なユーザー tony@fourthcoffee.com にプルします。この時点で状態は [処理中] です。

4. メールボックスの移動がほぼ完了すると、MRSProxy は Fourth Coffee にある Tony のメールボックスを最終的な同期が完了する間の短時間ロックします。この時点で、状態は [完了の処理中です] です。

5. Contoso フォレストでは、MRS はメールが有効なユーザー tony@fourthcoffee.com をメールボックス tony@contoso.com に変換します。Fourth Coffee フォレストでは、MRSProxy はメールボックス tony@fourthcoffee.com をメールが有効なユーザー tony@contoso.com に変換します。そして、メールボックスは回復可能な削除によって削除されます。この時点で、状態は [完了] です。Tony は、Contoso フォレスト内の自分のメールボックスにアクセスできるようになりました。Tony の電子メール クライアントによっては、自分のメールボックスにアクセスするために、いったんログオフしてログオンしなおす必要があるかもしれません。詳細については、後の「クライアント エクスペリエンス」を参照してください。

6. 管理者は、Active Directory から移動要求情報を消去し、システム メールボックスからも消去します。移動要求情報を消去するまでは、メールボックスを再度移動することはできません。移動要求の消去方法の詳細については、「移動要求のクリアまたは削除」を参照してください。

   移動の記録は Tony のメールボックスに保持されており、IncludeMoveReport パラメーターを指定して Get-MailboxStatistics コマンドレットを実行することでアクセスできます。

   注意

   メールボックスをリモート フォレストに戻す場合は、Contoso フォレストで移動を開始する必要があります。これは、Contoso のメールボックス サーバーは最新バージョンの Exchange (この場合、Exchange 2010)を実行しているためです。さらに、 New-MoveRequest コマンドレットを実行する場合は、RemoteTargetDatabase パラメーターを指定する必要があります。

リモートのレガシ メールボックスの移動

Exchange 2007 組織か Exchange 2003 組織からメールボックスをリモートで移動しており、その組織に Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーが含まれていない場合、Exchange 2010 フォレストの MRS はリモート レガシ データベースおよびリモート組織の Active Directory サーバーに直接アクセスします。リモートのレガシ移動要求の実行時には、次の情報をコマンドに指定する必要があります。

• メールが有効なユーザーの ID

• RemoteLegacy スイッチ

• リモート グローバル カタログ サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN)

• 移動要求が完了するときに、メールが有効なユーザー用に、ソース フォレストで作成される外部電子メール アドレスの FQDN

• メールボックスを Exchange 2010 に移動する場合のターゲット データベース、またはメールボックスを Exchange 2010 からリモート レガシ データベースに移動する場合のリモート ターゲット データベース

以下では、リモートのレガシ メールボックスの移動のシナリオについて説明します。

• レガシ フォレスト (Humongous Insurance) には、Exchange 2010 クライアント アクセス サーバーがありません。このシナリオは、リモートの移動要求の処理に似ています。ただし、リモートのレガシ フォレストには接続先となる MRSProxy のインスタンスが存在しないため、Contoso のフォレストの MRS は Humongous Insurance の Active Directory サーバーおよび Exchange 2003 メールボックス データベース上のシステム データベースに直接接続します。

• Exchange 2003 メールボックスを Exchange 2010 に移動する場合、メールボックスの移動はオフラインで行われます。移動中に、ユーザーはメールボックスにアクセスすることはできません。Exchange 2007 SP3 を Exchange 2010 メールボックスに移動する場合、移動はオンラインで行われ、ユーザーは移動中にメールボックスにアクセスすることができます。

• 次のコマンドをターゲット フォレストの Contoso.com から実行します。

  New-MoveRequest -Identity 'tony@humongousinsurance.com' -RemoteLegacy 
  -TargetDatabase DB02  -RemoteGlobalCatalog 'GC01.humongousinsurance.com' -RemoteCredential $Cred -TargetDeliveryDomain 'mail.contoso.com'
  

次の図は、このリモート レガシ メールボックス移動のシナリオを示します。

リモートのレガシ メールボックスの移動

注意

スクリプトを使用したメールボックスの移動

Exchange 2010 の MoveMailbox.ps1 スクリプトは、Exchange 2007 Move-Mailbox コマンドレットに似た、同期のメールボックス移動管理エクスペリエンスを提供します。既定では、スクリプトは、C:\Program Files\Microsoft\Exchange Server\V14\Scripts にインストールされます。詳細については、「シェルで MoveMailbox.ps1 スクリプトを使用してメールボックスを移動する」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

注意

このスクリプトは、ローカル移動にのみ使用できます。フォレスト間の移動にこのスクリプトを使用することはできません。

MoveMailbox.ps1 は、次のタスクを実行します。

1. ローカル移動要求を作成する。

2. メールボックスの移動が完了するまで待機します。

3. 移動の完了後、移動要求を削除します。

注意

回復可能な削除によって削除されたメールボックス

メールボックスを Exchange 2010 SP1 から別のデータベースに移動する場合、Exchange では、移動元のデータベースを移動完了後直ちに完全に削除しません。その代わり、ソース メールボックス データベースのメールボックスは、回復可能な削除によって削除された状態に移行します。メールボックスのデータは、MailboxRestoreRequest コマンドレットのセットを使用したメールボックスの復元処理中でもアクセス可能です。回復可能な削除によって削除されたメールボックスは、削除済みメールボックスの保存期間が経過するか「Remove-StoreMailbox」コマンドレットを使ってメールボックスを削除するまでの間、移動元のデータベースに保持されます。

注意

回復可能な削除によって削除されたメールボックスは、移動元のメールボックス サーバーおよび要求を実行するクライアント アクセス サーバーの両方で、Exchange 2010 SP1 を実行している必要があります。

回復可能な削除によって削除されたメールボックスを表示するには、データベースに対して「Get-MailboxStatistics」コマンドレットを実行し、DisconnectReason プロパティが SoftDeleted という値になることを確認します。

個人アーカイブ

Exchange 2010 の RTM (Release To Manufacturing) 版では、移動するメールボックスに個人用アーカイブが存在する場合、アーカイブはプライマリ メールボックスと共に移動されます。なぜなら、個人用アーカイブとプライマリ メールボックスは、同じメールボックス データベースに存在する必要があるからです。個人用アーカイブがあるメールボックスを移動する前に、アーカイブのサイズを考慮する必要があります。データベースのサイズと、そのサイズが移動が完了するまでにかかる時間へ与える影響を考慮します。

Exchange 2010 SP1 では、個人用アーカイブとメールボックスは、別々のデータベースに存在させることができます。移動要求のコマンドレットと EMC の移動要求のユーザー インターフェイス (UI) は、メールボックスと個人用アーカイブを共にまたは別々に移動することをサポートしています。既定では、プライマリ メールボックスとアーカイブは共に移動されます。アーカイブとプライマリ メールボックスを個別に移動することの詳細は、「ローカルの移動要求の作成」を参照してください。

メールボックスを Exchange 2010 サーバーから Exchange 2007 または Exchange 2003 サーバーに移動する場合、メールボックスを移動する前に個人用アーカイブを無効にする必要があります。詳細については、「メールボックスの個人用 (社内) アーカイブまたはクラウドベースのアーカイブの無効化」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

個人アーカイブの詳細については、「個人アーカイブについて」を参照してください。

注意

共有メールボックスとリソース メールボックス

既定のユーザー メールボックスに加えて、共有メールボックスとリソース メールボックスを移動できます。共有メールボックスは、複数のユーザーがログオンできるメールボックスです。リソース メールボックスは、会議室やビデオ機材などのリソースの種類を表すメールボックスです。リソース メールボックスの Active Directory には、容量などの、ユーザー メールボックスや共有メールボックスにはない追加プロパティがあります。

Exchange 2003 は、リソース メールボックスをサポートしていません。代わりに、共有メールボックスを使用してリソースを表す必要があります。Exchange 2003 から Exchange 2010 に共有メールボックスを移動する場合は、MRS によってメールボックスが共有 Exchange 2010 メールボックスとして作成されます。メールボックスを Exchange 2010 に移動した後、リソース メールボックスに変換できます。共有メールボックスをリソース メールボックスに変換する方法の詳細については、「メールボックスを変換する」を参照してください。

注意

サーバー障害発生時のメールボックスの移動

移動要求は、一時的なエラーを処理できます。MRS はチェックポイントを 5 分間隔で実施し、メールボックスの移動先のデータベースが今までどおり稼働していることを確認します。ターゲット データベースが稼働していないことを MRS が検出すると、MRS は 30 秒間一時停止した後に移動を再試行します。フェールオーバーが発生した場合は、移動が失敗することはありません。その代わり、MRS はデータベースのフェールオーバーを検出し、データベースの新しい場所を判断してから、移動処理を再起動します。

MRS を実行中のクライアント アクセス サーバーが応答を停止した場合、別のエラーが発生する可能性があります。これが発生した場合、移動は停止し、他の MRS インスタンスの 1 つが処理を継続して移動を完了します。

詳細については、「メールボックス移動のトラブルシューティング」(これらのサイトは英語の場合があります) を参照してください。

注意

クライアント エクスペリエンス

以下の表では、メールボックスの移動先と移動元の Exchange のバージョンに基づいた、および移動要求の開始時に使用するクライアント アプリケーションに基づいた、エンドユーザーのエクスペリエンスの違いを一覧表示します。

Exchange のバージョンとクライアント アプリケーションに基づいたクライアントのエクスペリエンス

移動元	移動先	移動の開始に使用するクライアント アプリケーション	エンドユーザーのエクスペリエンス
Exchange 2010 または Exchange 2007 SP2	Exchange 2010	Microsoft Outlook 2010、Office Outlook 2007、または Office Outlook 2003	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。 移動が完了すると、Outlook はユーザーに対して Outlook を閉じて再起動するよう通知するメッセージを表示します。
Exchange 2010	Exchange 2010	Outlook Web App	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。メールボックスがロックされている時にユーザーが Outlook Web App にログオンする場合、またはメールボックスがロックされている時にログオンしようとした場合、メールボックスが移動中であることを示すエラーがユーザーに表示され、移動が完了するまではユーザーはログオンできません。 その時間にユーザーがログオンしていない場合、ユーザーが Outlook Web App にアクセスするのに使用する URL が変更されない限り、移動には気が付きません。URL が変更されると、ユーザーは次のようなメッセージを受信します。 「このメールボックスを最適なパフォーマンスで開くためには、次のリンクを使用してください:https://mail.contoso.com/owa」 ユーザーがリンクをクリックすると新しい場所に移動し、自身の資格情報を使用してログオンできます。
Exchange 2007 SP3	Exchange 2010	Microsoft Outlook Web Access	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。メールボックスがロックされている時にユーザーが Outlook Web Access にログオンすると、ユーザーは自動的にログオフされ、メールボックスを表示するには再度ログオンする必要があります。 その時間にユーザーがログオンしていない場合、ユーザーが Outlook Web Access にアクセスするのに使用する URL が変更されない限り、移動には気が付きません。URL が変更されると、ユーザーは次のようなメッセージを受信します。 「このメールボックスを最適なパフォーマンスで開くためには、次のリンクを使用してください:https://mail.contoso.com/owa」 ユーザーがリンクをクリックすると新しい場所に移動し、自身の資格情報を使用してログオンできます。
Exchange 2010 または Exchange 2007 SP3	Exchange 2010	Outlook Mobile Access	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。ユーザーが使用している Outlook Web App URL が変更された場合にのみ、ユーザーに対するサービスの中断が発生します。URL が変更された場合は、ユーザーは自分の電話の電子メール設定を変更する必要があります。
Exchange 2010 または Exchange 2007 SP3	Exchange 2010	サードパーティ製のクライアント アプリケーション	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。 ユーザーがサードパーティ製のクライアント アプリケーション (Eudora など) を使用している場合、移動要求が完了した後に、ユーザーがログオフしてログオンし直す必要があるかどうかを製造元に確認します。
Exchange 2003 SP2 または SP3	Exchange 2010	Outlook 2003 およびOutlook Web Access	これはオフラインの移動で、移動要求の処理中は、ユーザーはメールボックスにアクセスできません。ただし、ユーザーは Outlook を使用してメールのアーカイブにローカルでアクセスできます。この期間中、ユーザーは Outlook Web Access を使用できません。 移動が完了すると、Outlook はユーザーに対して Outlook を閉じて再起動するよう通知するメッセージを表示します。
Exchange 2003 SP2	Exchange 2010	Outlook Mobile Access	移動要求の状態が [完了の処理中です] の場合、メールボックスは短時間ロックされます。ユーザーが使用している Outlook Web Access URL が変更された場合にのみ、ユーザーに対するサービスの中断が発生します。URL が変更された場合は、ユーザーは自分の電話の電子メール設定を変更する必要があります。
Exchange 2010	Exchange 2007 SP3	Outlook 2007 およびOutlook Web Access	これはオフラインの移動で、移動要求の処理中は、ユーザーはメールボックスにアクセスできません。ただし、ユーザーは Outlook を使用してメールのアーカイブにローカルでアクセスできます。この期間中、ユーザーは Outlook Web Access を使用できません。 移動が完了すると、Outlook はユーザーに対して Outlook を閉じて再起動するよう通知するメッセージを表示します。
Exchange 2010	Exchange 2003 SP2	Outlook 2003 およびOutlook Web Access	これはオフラインの移動で、移動要求の処理中は、ユーザーはメールボックスにアクセスできません。ただし、ユーザーは Outlook を使用してメールのアーカイブにローカルでアクセスできます。この期間中、ユーザーは Outlook Web Access を使用できません。 移動が完了すると、Outlook はユーザーに対して Outlook を閉じて再起動するよう通知するメッセージを表示します。

注意

 © 2010 Microsoft Corporation.All rights reserved.