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Integration Services の開発に関する機能強化

更新 : 2005 年 12 月 5 日

Microsoft SQL Server 2005 Integration Services (SSIS) には、データ変換ソリューションを開発する開発者、管理者、ナレッジ ワーカーの能力や生産性を向上させる、以下のような新機能や機能強化が導入されています。

  • SSIS デザイナや SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザードなどのグラフィック ツール。
  • パッケージをプログラム的に作成する機能と、カスタム タスク、変換元、変換先、および変換を使用して Integration Services オブジェクト モデルを拡張する機能。

新しい Integration Services アーキテクチャ

以前のアーキテクチャである SQL Server データ変換サービス (DTS) では、データ変換、タスク、およびパッケージ制御フローを 1 つのコンポーネントでまとめて行っていました。そのため、複雑なパッケージの作成は困難でした。SQL Server 2005 の Integration Services アーキテクチャでは、Integration Services ランタイム エンジンと Integration Services データ フロー エンジンという 2 つの別個のエンジンが導入され、データ フローと制御フローが別々に扱われるようになりました。このように処理が分かれたことにより、パッケージ実行の制御性やデータ変換の可視性が高まり、さらにカスタム タスクやカスタム変換の作成と実装が簡略化されるので、Integration Services の拡張性も向上します。

詳細については、「Integration Services のアーキテクチャ」を参照してください。

Integration Services ランタイム エンジン

Integration Services ランタイム エンジンでは、パッケージのレイアウトの格納、パッケージの実行、タスク間のワークフロー制御を行います。また、デバッグ、ログ記録、イベント処理、および接続や変数あるいはトランザクションの管理などのランタイム サービスを提供します。

詳細については、「制御フローの要素」を参照してください。

Integration Services データ フロー エンジン

Integration Services データ フロー エンジンは、抽出、変換、および読み込み (ETL) のプロセスにおいて、高速で柔軟性と拡張性を持ち、しかも信頼できるデータの移動を行う必要がある企業のニーズに応えます。このエンジンは、データの移動や変換を高いパフォーマンスで行えるように最適化されています。

データ フロー エンジンでは、高速で柔軟な 1 つのデータ フローの中で、変換元、変換、および変換先を複数使用することがサポートされます。Integration Services には、データ フロー内で使用できる 25 を超える変換と 10 を超える変換元および変換先が用意されています。SSIS デザイナ内で Integration Services データ フロー エンジンをグラフィカルに表すデータ フロー タスクは、DTS のさまざまなデータ指向のタスク (データ変換タスクやデータ ドリブン クエリ タスクなど) に代わるものです。

詳細については、「データ フロー要素」を参照してください。

拡張可能なオブジェクト モデル

データ フローと制御フローの分離に加えて、基になる Integration Services オブジェクト モデルも、拡張性を考慮して全体的に設計が変更されました。強力な統合開発環境 (IDE) には、Microsoft .NET Framework のサポートが組み込まれ、強力なカスタム Integration Services タスク、変換、データ アダプタの作成を迅速に行えます。

開発できるカスタム拡張機能には、タスク、ログ プロバイダ、列挙子、接続マネージャ、データ フロー コンポーネントがあります。これらのカスタム オブジェクトは、Business Intelligence Development Studio のユーザー インターフェイスに統合できます。

開発者は、Integration Services ランタイム API とデータ フロー API を使用して、オブジェクト モデルのほぼすべての面について拡張およびカスタマイズすることができます。新規または既存の Integration Services パッケージの読み込み、変更、実行をプログラムによって行えるので、開発者はパッケージのメンテナンスと実行を完全に自動化することができます。

詳細については、「Integration Services のプログラミング」を参照してください。

カスタム Integration Services 開発プロジェクトの例については、「プログラミング サンプル」を参照してください。

新しい Integration Services デザイナ

新しい SSIS デザイナは、Integration Services パッケージのデザイン、作成、テスト、およびデバッグを行うための統合された開発環境を提供します。SSIS のユーザー インターフェイスを使用すれば、パッケージの作成や構成を、ドラッグ アンド ドロップ操作や、それぞれのパッケージ オブジェクトに関するダイアログ ボックスでオプションを選択することによって行えます。

SSIS デザイナには、以下の機能があります。

  • パッケージの制御フロー、データ フロー、およびイベント ハンドラごとに別個に用意されたデザイン画面。
  • ソリューション エクスプローラでのパッケージ コンテンツの階層ビュー。
  • 関連するタスクをグループ化するための、展開/折りたたみが可能なコンテナ。これにより、パッケージ レイアウトの表示、整理、および管理が容易になります。
  • パッケージの制御フロー、データ フロー、およびイベント ハンドラを説明する注釈。
  • パッケージへの接続マネージャの追加や、データ ソース オブジェクトの参照に使用する接続領域。
  • カスタム変数の追加、ログ記録の構成、構成の作成、パッケージへのデジタル署名を行うために使用するダイアログ ボックス。
  • デバッグ ツール。これを使用して、パッケージ、コンテナ、およびタスク イベントに対してブレークポイントを設定することができます。また、データ フロー内を移動するデータを表示するデータ ビューアも提供されています。
  • パッケージの開始時刻や、タスクとそれらの実行状況、および警告やメッセージを表示する進行状況ウィンドウ。
  • パッケージ実行のグラフィック表示。個々のタスク、コンテナ、データ フロー コンポーネントの進行状況、優先順位、および実行結果が含まれます。

詳細については、「SSIS デザイナ」と「Integration Services のユーザー インターフェイス」を参照してください。

新しい開発環境

SQL Server 2005 には、データ変換ソリューションを作成するために、Business Intelligence Development Studio と、Integration Services パッケージを管理するための SQL Server Management Studio が導入されています。Business Intelligence Development Studio は Integration Services パッケージの作成に使用するグラフィック ツールの SSIS デザイナをホストしており、Integration Services パッケージの開発者は Microsoft Visual Studio 開発環境の強力な機能を活用することができます。

Business Intelligence Development Studio は、Visual Studio for Applications (VSA) 環境とシームレスに統合されているので、開発者はこの環境でスクリプト タスクやスクリプト コンポーネントのスクリプトを作成できます。SSIS デザイナで設定したブレークポイントと、VSA においてスクリプト タスク内のスクリプト コードで設定したブレークポイントの両方を含むパッケージをデバッグする場合、そのパッケージは、パッケージとスクリプトに含まれるブレークポイントまで、またはブレークポイントから実行することができます。

ms170843.note(ja-jp,SQL.90).gifメモ :
スクリプト コンポーネントでは、ブレークポイントはサポートされません。

詳細については、「Business Intelligence Development Studio の紹介」を参照してください。

詳細については、「SQL Server Management Studio および Business Intelligence Development Studio」を参照してください。

機能強化された SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザード

SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザードの設計が変更され、データのコピーにさらに重点が置かれるようになりました。2 つのデータ ストアの間でデータをコピーする Integration Services パッケージをすばやく作成するには、このウィザードを使用する方法が最も簡単です。

SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザードには、フラット ファイルのデータのサポートやリアルタイムでのデータのプレビューなど、多くの新しい機能が含まれています。SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザードを使用して作成され、保存されたパッケージは、Business Intelligence Development Studio で開き、SSIS デザイナを使用して拡張することができます。

詳細については、「SQL Server インポートおよびエクスポート ウィザードを使用してパッケージを作成する方法」を参照してください。

新しいワークフロー機能

ループ処理、イベント ハンドラ、拡張された優先順位制約など、多くの新しいワークフロー機能が追加されているので、パッケージの開発者は、パッケージの実行をより正確に制御することができます。

ワークフロー コンテナにより、パッケージに構造を持たせることができ、タスクに関するサービスが提供されます。ワークフロー コンテナではパッケージでの繰り返し制御フローがサポートされ、タスクやコンテナが意味のある作業単位にグループ化されます。Integration Services には、以下の新しいコンテナが用意されています。

  • シーケンス コンテナ。タスクや他のワークフロー構造を、1 つのアイテムとして管理できる作業単位にグループ化するために使用します。詳細については、「シーケンス コンテナ」を参照してください。
  • For ループ コンテナ。タスクや他のワークフロー構造を、式を評価することによって繰り返される作業単位にグループ化するために使用します。詳細については、「For ループ コンテナ」を参照してください。
  • Foreach ループ コンテナ。タスクや他のワークフロー構造を、オブジェクトの列挙によって繰り返される作業単位にグループ化するために使用します。詳細については、「Foreach ループ コンテナ」を参照してください。

Integration Services オブジェクト モデルは、パッケージ制御フロー内で、コンテナの入れ子になった階層をサポートしています。ワークフロー コンテナには、他のコンテナも含めることができるので、複雑なパッケージ ワークフローがサポートされます。

詳細については、「Integration Services コンテナ」を参照してください。

新しい Integration Services タスク

新しいタスクと拡張されたタスクによって、Integration Services に用意されているタスクだけを使用して、ビジネスに関する複雑な問題を解決するパッケージを容易に作成できるようになりました。

詳細については、「Integration Services タスク」を参照してください。

ワークフロー タスク

Integration Services には、ワークフロー操作を実行するタスクがいくつか用意されています。たとえば、他のパッケージの実行、アプリケーションの実行、電子メールの送信などです。Integration Services には、以下の新しいワークフロー タスクも追加されています。

  • WMI データ リーダー タスク。WMI (Windows Management Instrumentation) データに対してクエリを実行するために使用します。
  • WMI イベント監視タスク。WMI イベントをリッスンするために使用します。

データ準備タスク

他にも、ファイルのアップロード、ダウンロード、コピーなどのデータ準備機能を提供するいくつかの新しいタスクが追加されています。新しいデータ準備タスクには、以下のものがあります。

  • ファイル システム タスク。ファイル システム内のファイルやフォルダに対する操作を行うために使用します。
  • Web サービス タスク。Web サービスへのアクセスに使用します。
  • XML タスク。XML ドキュメントを扱う作業に使用します。

ビジネス インテリジェンス タスク

Integration Services には、ビジネス インテリジェンス操作を実行するタスクがいくつか追加されました。たとえば、分析オブジェクトの処理、Analysis Services データ定義言語 (DDL) で作成されたスクリプトの実行、データ マイニング予測クエリの実行などです。Integration Services には、以下の新しいビジネス インテリジェンス タスクが用意されています。

  • Analysis Services DDL 実行タスク。DDL スクリプトの実行に使用します。
  • データ マイニング クエリ タスク。データ マイニング モデルに対するクエリの実行に使用します。

スクリプト タスク

Integration Services には、スクリプトを含めることができる 2 つのタスク、スクリプト タスクとレガシ サポートのための ActiveX スクリプト タスクが用意されています。これらのスクリプトは、パッケージ ワークフロー内で実行され、組み込みの Integration Services タスクで行える機能以上に、パッケージの機能を拡張します。

新しい Integration Services データ ソースと変換先

SQL Server 2005 の Integration Services パッケージでは、追加されたさまざまな種類のデータ ソースからデータを抽出することができます。これらのデータ ソースにアクセスするために、Integration Services には、SQL Server、OLE DB、およびフラット ファイルの変換元と変換先に加えて、以下の新しい変換元と変換先が用意されています。

  • SQL Server 2005 Compact Edition 変換先。SQL Server 2005 Compact Edition データベースへのデータの挿入や更新に使用します。
  • DataReader ソースおよび変換先。任意の .NET Framework データ プロバイダのデータを抽出するため、あるいはこのプロバイダにデータを提供するために使用します。
  • XML ソース。XML ドキュメントからデータを抽出するために使用します。
  • 生ファイル ソースおよび変換先。ファイルの生データの読み込みや書き込みに使用します。
  • レコードセット変換先。インメモリ ADODB レコードセットの作成と設定に使用します。
  • データ マイニング モデルのトレーニング、データ マイニング クエリ、パーティション処理、およびディメンション処理の各変換先。マイニング モデル、キューブ、ディメンションなどの分析オブジェクトを扱う操作に使用します。

Integration Services には、カスタム ソースとカスタム変換先の開発を簡略化するためのスクリプト コンポーネントも含まれています。

詳細については、「Integration Services ソース」と「Integration Services の変換先」を参照してください。

新しい Integration Services データ変換

Integration Services データ フロー エンジンは、変換元、変換、変換先を複数使用することをサポートしています。新しい変換を使用すると、コードを作成しなくても、複雑なデータ フローを含むパッケージを作成することができます。これには、以下の変換が含まれます。

  • 条件分割変換およびマルチキャスト変換。ダウンストリームの複数のデータ フロー コンポーネントへデータ行を配布するために使用します。
  • 全体結合、マージ、マージ結合の各変換。上流の複数のデータ フロー コンポーネントのデータ行を結合するために使用します。
  • 並べ替え変換およびあいまいグループ化変換。並べ替え変換はデータを並べ替え、重複するデータ行を識別するために、あいまいグループ化変換は類似のデータ行を識別するために使用します。
  • 参照変換およびあいまい参照変換。参照テーブルの値でデータを展開するために使用します。
  • 用語抽出変換および用語参照変換。テキスト マイニング アプリケーションで使用します。
  • 集計、ピボット、ピボット解除、緩やかに変化するディメンションの各変換。一般的なデータ ウェアハウジング タスクに使用します。
  • 比率サンプリング変換および行サンプリング変換。サンプル行セットの抽出に使用します。
  • 列コピー、データ変換、派生列の各変換。列の値のコピーと変更に使用します。集計変換もあり、これはデータの集計に使用します。
  • ピボット変換およびピボット解除変換。標準化されていないデータから標準化されたデータ行を作成する操作、およびその逆の操作に使用します。

Integration Services には、カスタム変換の開発を簡略化するためのスクリプト コンポーネントも含まれています。

詳細については、「Integration Services の変換」を参照してください。

参照

概念

Integration Services の管理に関する機能強化

その他の技術情報

Integration Services の機能強化

ヘルプおよび情報

SQL Server 2005 の参考資料の入手