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ソフトウェアのリーダーシップ: リーダーとして管理する

一流の管理者が三流のリーダーになることはあり得るのでしょうか。管理者とリーダーの両者に求められるスキルは必ずしも同じではありません。

Ryan Haveson

数年前、私はある男性の下で働いていました。やがて、私は彼のことを「管理者としては一流だが、リーダーとしては三流だ」と評するようになりました。私が彼のことを、このように評するとき、他の人は、私が言いたいことを理解していました。その一方で、この表現は矛盾しているようでもありました。数か月前に「リーダーシップを分析する」という記事を執筆して以来、次の疑問が心の奥底から離れずにいました。一流の管理者が三流のリーダーになることはあり得るのでしょうか。

概して、管理者の役割とリーダーの役割は結び付いています。管理者以外のだれかがリーダーとして方向性を示す組織もありますが、大半の場合、自分の管理者とリーダーは同一人物です。この事実から思うことがあります。それは、リーダーと管理者のスキルは本当に違うものなのだろうかということと、もしそうなのであれば、違いは何なのだろうかということです。

管理者にはたくさんの役割がありますが、それらはすべて次の 5 つに分類できます。

  • チーム メンバーのスキルに合わせた仕事の調整: すべてのメンバーが同じスキルを持っているわけではありません。たとえば、インフラストラクチャ関連の難解な技術的な作業に長けているエンジニアもいれば、ユーザー エクスペリエンスの機能の作成に向いているエンジニアもいます。一流の管理者は、常にメンバーが得意としている作業を割り当てるように仕事の調整を行うことを心がけています。
  • チーム メンバーが全力で仕事に取り組むようにする動機付け: どうすれば各メンバーのやる気を起こせるのかを把握し、さらに大きな成果を引き出す手段を考え出すことが、管理者の重要な役割となります。
  • スキルの指導と強化: 非常に優れた管理者について説明するときには、ほとんどの人が「今までで一番多くのことを学ばせてもらった」という表現をします。
  • チームの仕事の経営陣への説明: 管理者はチームの状況と毎日の進捗を経営陣に説明する必要があります。
  • 組織のニーズに合わせてチームの体制を調整: 管理者は、ビジネスのニーズが変化したときに、常にチームの体制を評価して、ニーズとのずれを解消する方法を見いだす必要があります。スキルを強化することでニーズの変化に対応できる場合もありますが、多くの場合、人事的な変化が求められ、人材の雇用と解雇の両方が必要になります。

この一覧を踏まえて、再度、一流の管理者が三流のリーダーになることがあり得るのかという疑問について考えます。この 5 つの役割に含まれていない、リーダー特有の役割が 1 つあります。それは「方向性の設定」です。この役割は、単なる私の記載漏れによるミスでしょうか。それとも、厳密には、チーム メンバーの管理に方向性の設定が含まれないというのは正しいのでしょうか。

正しい方向性を設定する

たとえば、チームの方向性の設定が経営陣によって行われているか、チームの方向性が比較的わかりやすいものだったとします。この場合、卓越したビジョンや優れた戦略的な思考力を持ち合わせていなくても、チームを成功に導くことができる、一流の管理者が存在する可能性はあります。

一流の管理者や一流のリーダーと見なされるために必要な役割やスキルには重複しているものが多数ありますが、リーダーの役割やスキルとして重視されるのは、ゴールに向かってチーム メンバーの足並みを揃えられることです。管理者の役割やスキルとして重視されるのは、毎日のチームの成果を最大限に引き出すことです。

先ほどの「管理者としては一流だが、リーダーとしては三流」と評していたときの体験を思い返してみると、方向性の設定がなされていなかったことに気付きました。その上司は、全力で仕事に取り組むようメンバーを促し、共通のゴールに向かってメンバーの足並みを揃えることには長けていましたが、彼が導こうとしていたゴールは間違っていました。

当時、全チーム メンバーは、ゴールが間違っている可能性を懸念していました。その上司は、組織の経営陣との意見の食い違いが絶えず、リスクの高い方向にメンバーを導いていました。しかし、私たちメンバーは、それは上司が熟慮した結果であって、自分たちが知らない打開策を持っているのだと信じており、私たちは最終的には成功すると考えていました。

リーダーは、仕事の一環としてリスクを取る必要がありますが、経営陣に認められていないリスクを取る場合は、方向性を間違えないことが重要です。さもなければ、非常に悪い結果になる可能性もあります。この場合、リスクは成果につながらず、最終的にプロジェクトは中止になりました。その結果、全チーム メンバーが新しい仕事を探さなくてはならなくなりました。1 年以上の時間をかけて残業も厭わず一生懸命仕事をし、エネルギーを注いできたプロジェクトが突然中止となったことには、全チーム メンバーが大きな衝撃を受けました。

そのチームの上司は、優れた人材の集団を作り、全力で仕事に取り組むようにメンバーのやる気を引き出し、共通のゴールに向かってメンバー全員の足並みを揃えました。メンバーがスキルを学んだり、強化したりする手助けをし、経営陣に対してチームの進捗説明も行っていました。メンバー全員が、彼は優れた管理者だと感じていましたが、彼は高いリスクを伴う方向にチームを導いていました。そのリスクを取ることが経営陣に認められていなかったため、彼はチーム メンバーを成功するか、失敗するかという一か八かの状況に置き、残念ながら、良い結果にはならず、悲惨な結果となりました。

では、一流の管理者が三流のリーダーになることはあり得るのでしょうかという疑問への答えはというと、それぞれの言葉に用いる定義しだいです。

1 つ明確なのは、ビジネスで大きな成果を得るには、管理者としても、リーダーとしても優れている必要があるということです。チームを適切に管理し、メンバーの力を最大限に引き出しているからといって、一歩離れたところから定期的にプロジェクトを見つめ、正しい方向性に導いていることを確かめなくてよいわけではありません。この作業を怠ると、いつかあなたのことを「管理者としては一流だが、リーダーとしては三流だと」評する人が現れるかもしれません。

Ryan Haveson

Ryan Haveson は、エンジニアリング チームを統率し、世界的に有名なブランドである Xbox や Windows などのソフトウェアとサービスの提供に 15 年以上携わってきました。Ryan は、Windows 8 の Windows エクスペリエンス チームのグループ マネージャーを務めていました。Windows エクスペリエンス チームでは、ライブ タイル通知プラットフォームや新しいタスク マネージャーなど、エンド ユーザーと開発者向けの機能をデザインして実現しました。現在は、米国カリフォルニア州のサンディエゴにある Qualcomm の Snapdragon 部門で Windows と Windows Phone のエンジニアリング システム グループを統率しています。連絡先は、ryanhaveson@hotmail.com (英語のみ) または linkedin.com/in/ryanha (英語) です。

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