アーキテクトへの道 シリーズ 第六話
世界のアーキテクト、日本のアーキテクト
"Diversity" -多様性-、これが世界を視野に入れたときのキーワードです。世界中には様々な人がいます、アーキテクトも国によっていろんな方がいます。つい先日世界のアーキテクトが集まる会合に参加したのですが、ドイツ、UK、フランスなどのヨーロッパからウルグアイなど南米、そしてインド、中国、韓国などのアジア諸国、もちろん日本、アメリカも含めて 30 名ほどで 2 日間ディスカッションを行いました。ここで私が一番感じたのは冒頭に述べた "Diversity" を認めることの重要性です。
では日本と世界では何が違うのでしょうか?
■「日本は特殊だから・・」
こういう発言をよく聞きます。しかしどう特殊なのか明確に説明するは難しいはずです。日本と同じく他の国もそれぞれ特殊性をもっています。しかし国によらず共通している部分というのは多々あります。例えば以下のような認識が日本では多いように感じられます。
- 日本にはアーキテクトがあまり存在しない
- 日本の IT は欧米に比べて遅れている
- 日本のエンドユーザーはリテラシーが低い
そんなことはない! とここで断言します。世界各国と比べて日本は全く遜色ありません。それどころか日本の方が優れている分野も少なからずあります。例えば高品質なソフトウェアを構築するということ、エンドユーザーの要件にきめ細かく対応するということ。
自動車をイメージしてください、何が競争力の決め手になっていますか? 品質とユーザーニーズへのきめ細かな対応です。この 2 つは成熟した産業にかならず求められる要素なのです。日本はすでに IT においてもこの 2 つの要素で世界的な競争力を持っています。
またアーキテクトについてですが、欧米でも自称アーキテクトという方が多く本物のアーキテクトは少ないというのが実情です。
■今後の日本にもとめられること
"Kick the tire" という言葉があります。重たい車を動かすのは大変ですが、最初に思い切りタイヤを蹴っ飛ばして一旦勢いがつけばあとは慣性の法則で勝手にどんどん加速していくということを意味しています。
つまりとりあえずやってしまえ! というバイタリティが非常に重要だと感じています。日本と世界の差を強いてあげればこのバイタリティの度合いです。日本の場合にはともすれば受身になりがちですが、さきほど述べたように日本から世界中にインプットできるノウハウというのは多数存在するわけです。誰かが新しいことを思いついてくれるからそれを吸収しようというのは大事なことですが、自分がその誰かになるという意気込みを持ったエンジニアの存在こそが今の日本に求められていることだと思います。
アーキテクトと呼ばれる方は長年の経験を積み、そこから得た知識、センスを身につけたスーパーエンジニアです。そういう方々こそ日本から世界へ情報発信をしていく主役となるべきです。それができる人こそが真のアーキテクトなのです。
■ソフトウェアの価値
現在ソフトウェアは莫大な価値をもたらしているのですが、その割には価値が正しく評価されていないように思われます。ステップ数や人月で計れるものではありません。それは How の部分であって、本当に評価されるべきなのは何を提供できるのかという What の部分です。そのソフトウェアによって人々の生活がどれだけ豊かになるのか、ビジネスにどれだけの貢献を及ぼすのかということで評価されるべきです。ソフトウェアは決してハードウェアのおまけではなく、ソフトウェアこそがこれからの社会を成長させる主役なのです。
日本ではともすればソフトウェアを低く評価する傾向が見られますが、価値のあるものに対して正当な対価を払う、ハードウェアだけでなくソフトウェアなどの知的資産の価値を認めるということが大切です。私は常にそれをどう実現するべきかを考えております。日本の優秀なアーキテクトのみなさん、ぜひソフトウェアの価値を高めていくべく邁進していきましょう!
■まとめ
今回で「アーキテクトへの道」は終了となります。6 回にわたり様々な観点からお伝えしてまいりました。「アーキテクト」という人材に対してその価値が高く評価され、そして日本の IT 産業が世界を席巻する日が現実のものとなるべく努めてまいります。今後も弊社は各種活動を通じてアーキテクトの方々とのコミュニケーションを図りたいと望んでおります。どうぞ末長いお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
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