Visual Basic におけるスコープ
宣言された要素のスコープとは、名前に修飾子を付けたり Imports ステートメント (.NET 名前空間および型)を使用して有効にすることなく、その要素を参照できるコードの範囲です。 要素は、次のいずれかのレベルのスコープを持つことができます。
[レベル] |
説明 |
---|---|
ブロック スコープ |
要素が宣言されたコード ブロック内でのみ使用可能 |
プロシージャ スコープ |
要素が宣言されたプロシージャ内のすべてのコードで使用可能 |
モジュール スコープ |
要素が宣言されたモジュール内、クラス内、または構造体内のすべてのコードで使用可能 |
名前空間スコープ |
要素が宣言された名前空間内のすべてのコードで使用可能 |
上に列挙したスコープのレベルは、下にいくほどスコープが広くなります。つまり、ブロック スコープが最も狭いスコープ、名前空間スコープが最も広いスコープです。ここでいう最も狭いスコープとは、修飾子を付けずにその要素を参照できるコード範囲が最も小さいという意味です。 詳細については、このページの「スコープのレベル」を参照してください。
スコープの指定と変数の定義
要素のスコープは、要素を宣言するときに指定します。 スコープは以下の要因によって決まります。
要素を宣言する領域 (ブロック、プロシージャ、モジュール、クラス、または構造体)
要素の宣言を含む名前空間
要素に宣言するアクセス レベル
名前が同じでスコープが異なる変数を定義する場合は、予想外の結果を招く可能性があるので注意してください。 詳細については、「宣言された要素の参照 (Visual Basic)」を参照してください。
スコープのレベル
プログラミング要素は、宣言した領域全体にわたって使用できます。 同じ領域内のコードで要素を参照する場合は、名前に修飾子を付ける必要はありません。
ブロック スコープ
ブロックとは、次のように、開始宣言ステートメントと終了宣言ステートメントで囲まれた一連のステートメントです。
Do と Loop
For Each と Next
If と End If
Select と End Select
SyncLock と End SyncLock
Try と End Try
While と End While
With と End With
ブロック内で変数を宣言した場合、その変数はそのブロック内でのみ使用できます。 たとえば、次の例で整数型の変数 cube のスコープは If と End If の間のブロックであるため、実行ステップがこのブロックの外に出てしまうと cube を参照できなくなります。
If n < 1291 Then
Dim cube As Integer
cube = n ^ 3
End If
注意
スコープがブロック内に制限されている変数でも、有効期間はプロシージャ全体の有効期間と同じです。 プロシージャ内で同じブロックが複数回実行される場合、各ブロック変数には前に実行されたときの値が保持されています。 そのような場合に予想外の結果が生じるのを避けるために、ブロックの先頭ではブロック変数を初期化することをお勧めします。
プロシージャ スコープ
プロシージャ内で宣言した要素は、そのプロシージャの外では使用できません。 要素を使用できるのは、その要素の宣言を含むプロシージャだけです。 このレベルの変数は、ローカル変数とも呼ばれます。 ローカル要素を宣言するには、Dim ステートメント (Visual Basic) を使用します。Static (Visual Basic) キーワードは指定することも省くこともできます。
プロシージャとブロック スコープの間には密接な関係があります。 プロシージャ内のどのブロックにも含まれていない場所で変数を宣言した場合、その変数は、プロシージャ全体から成るブロックのブロック スコープを持つと見なすことができます。
注意
Static 変数を含め、すべてのローカル要素は、宣言されたプロシージャ内にプライベートです。 プロシージャ内で Public (Visual Basic) キーワードを使って要素を宣言することはできません。
モジュール スコープ
便宜上、モジュール、クラス、および構造体に対して、モジュール レベルという 1 つの用語を使用します。 要素をモジュール レベルで宣言するには、モジュール、クラス、または構造体の中で、プロシージャやブロックの外に宣言ステートメントを配置します。
モジュール レベルで要素を宣言するときは、選択するアクセス レベルによってスコープが決まります。 また、モジュール、クラス、または構造体を含む名前空間もスコープに影響します。
Private (Visual Basic) のアクセス レベルを宣言した要素は、モジュール内のすべてのプロシージャから参照できますが、他のモジュール内のコードからは参照できません。 アクセス レベル キーワードを使用しないと、モジュール レベルの Dim ステートメントは既定で Private になります。 ただし、Dim ステートメントで Private キーワードを使用すると、スコープとアクセス レベルがより明確になります。
次の例の場合、モジュール内で定義されているすべてのプロシージャから、文字列変数 strMsg を参照できます。 2 番目のプロシージャが呼び出されると、文字列変数 strMsg の内容がダイアログ ボックスに表示されます。
' Put the following declaration at module level (not in any procedure).
Private strMsg As String
' Put the following Sub procedure in the same module.
Sub initializePrivateVariable()
strMsg = "This variable cannot be used outside this module."
End Sub
' Put the following Sub procedure in the same module.
Sub usePrivateVariable()
MsgBox(strMsg)
End Sub
名前空間スコープ
Friend (Visual Basic) キーワードまたは Public (Visual Basic) キーワードを使ってモジュール レベルで要素を宣言すると、宣言した名前空間内のすべてのプロシージャで使用できるようになります。 上の例を次のように変更した場合、文字列変数 strMsg は、この変数を宣言した名前空間内のすべてのコードから参照できます。
' Include this declaration at module level (not inside any procedure).
Public strMsg As String
名前空間スコープには、入れ子にした名前空間も含まれます。 名前空間内で使用できる要素は、その名前空間内に入れ子にした名前空間の中からも使用できます。
プロジェクト内に Namespace ステートメントが 1 つもない場合は、プロジェクト全体が同じ名前空間に属します。 この場合、名前空間スコープはプロジェクト スコープであると考えることができます。 モジュール、クラス、または構造体の中の Public 要素は、そのプロジェクトを参照するどのプロジェクトからも使用できます。
スコープの選択
変数を宣言する際は、次の点を念頭に置いてスコープを選択する必要があります。
ローカル変数の利点
ローカル変数は、次の理由により、各種の一時的な計算を行う場合に最適です。
名前の競合の回避。 ローカル変数には名前の重複が発生しません。 たとえば、intTemp という名前の変数を持つプロシージャを複数作成できます。 それぞれの intTemp をローカル変数として宣言する限り、各プロシージャは自分の intTemp 以外は認識しません。 いずれかのプロシージャがローカルの intTemp の値を変更しても、他のプロシージャの intTemp に影響が及ぶことはありません。
メモリの使用量。 ローカル変数は、そのプロシージャの実行中にしかメモリを消費しません。 制御がプロシージャから呼び出し側のコードに戻ると、メモリは解放されます。 逆に、Shared (Visual Basic) 変数および Static (Visual Basic) 変数は、アプリケーションが実行を終えるまでメモリ リソースを消費するため、これらの変数は必要な場合にのみ使用してください。 インスタンス変数は、インスタンスが存在している間メモリを消費します。このため、ローカル変数ほど効率的ではありませんが、Shared および Static 変数よりも効率的である可能性があります。
スコープをできるだけ狭くする
変数や定数を宣言する場合に、通常、できる限りスコープを狭くすることをお勧めします (最も狭いのはブロック スコープです)。 スコープを狭くすると、メモリを節約できます。また、間違った変数を参照する可能性も低くなります。 同様に、プロシージャの呼び出し間で値を保持する必要がある場合だけ、変数を Static (Visual Basic) として宣言してください。
参照
処理手順
方法: 変数のスコープを制御する (Visual Basic)