次の方法で共有


Windows 10 展開用の分散環境の構築

このトピックでは、Windows 10 の展開共有をレプリケートしてリモートまたはブランチ オフィスでの Windows 10 の展開を容易にする方法を説明します。分散環境で作業している場合は、展開共有をレプリケートすることは展開ソリューションの重要な部分です。サイズが 5 GB 以上のイメージを使う場合、ネットワーク上でリモート オフィス内のコンピューターを展開することはできません。クライアントがローカル展開を行うことができるように、コンテンツをレプリケートする必要があります。

このトピックでは、DC01、MDT01、MDT02、PC0006 という 4 台のコンピューターを使います。DC01 はドメイン コントローラー、MDT01 は Windows Server 2012 R2 Standard サーバー、PC0006 は Windows 10 を展開する空のコンピューターです。2 つ目の展開サーバー (MDT02) は、元のサイト (ニューヨーク) の展開共有をレプリケートすることでリモート サイト (ストックホルム) 用に構成します。MDT01、MDT02、PC0006 は架空の Contoso Corporation のドメイン contoso.com のメンバーです。このトピックのセットアップについて詳しくは、「Microsoft Deployment Toolkit による Windows 10 の展開」をご覧ください。

図 1

図 1: このトピックで使われるコンピューター。

展開共有のレプリケート

MDT01 (ニューヨーク) と MDT02 (ストックホルム) の間のコンテンツのレプリケートは、さまざまな異なる方法で行うことができます。Microsoft Deployment Toolkit (MDT) 2013 による最も一般的なコンテンツのレプリケーション ソリューションでは、リンク展開共有 (LDS) 機能または分散ファイル システム レプリケーション (DFS-R) を使います。一部の組織では、コンテンツのレプリケーションにシンプルな robocopy スクリプトを使っています。

  

robocopy にはフォルダー間で同期できるオプションがあります。 シンプルな報告機能があり、転送の再試行をサポートし、既定では、ターゲット上のファイルよりも新しいソースからのファイルのコピーまたは削除のみを行います。

 

MDT 2013 Update 1 のリンク展開共有

LDS は、コンテンツをレプリケートするための MDT の組み込み機能です。ただし、待機時間が短い LAN 接続などの強力な接続と共に使うことで最もよく機能します。大半の WAN リンクについては、DFS-R がより優れたオプションです。

DFS-R が優れたオプションである理由

DFS-R は非常に高速で信頼性が高いだけでなく、集約型の監視、帯域幅の制御、優れた差分レプリケーション エンジンも提供します。サイトが 2 か所でも 90 か所でも、DFS-R は同様によく機能します。MDT の DFS-R を使う場合、展開サーバーを Windows Server 2008 R2 以降で実行することをお勧めします。このバージョンからはレプリケーション ターゲットを読み取り専用として構成することができ、これはまさに MDT に望まれていた機能です。これにより、マスターの展開共有を一元化し、変更が行われたときに変更をレプリケートすることができます。DFS-R は MDT01 の一元的な展開共有ですばやく変更を取得し、差分変更を MDT02 にレプリケートします。

レプリケーションのための分散ファイル システム レプリケーション (DFS-R) のセットアップ

DFS-R レプリケーションの設定は、迅速かつ簡単なプロセスです。展開サーバーを準備して、レプリケーション グループを作成します。セットアップを完了するには、いくつかのレプリケーション設定を構成します。

レプリケーションのための MDT01 の準備

  1. MDT01 で、サーバー マネージャーを使って [Add roles and features] をクリックします。

  2. [インストールの種類の選択] ページで、[役割ベースまたは機能ベースのインストール] を選びます。

  3. [Select destination server] ページで、[MDT01.contoso.com] を選んで [Next] をクリックします。

  4. [サーバーの役割の選択] ページで、[ファイル サービスおよび記憶域サービス] (インストール済み)[ファイル サービスおよび iSCSI サービス] (インストール済み) の順に展開します。

  5. [Roles] リストから [DFS Replication] を選びます。[Add Roles and Features Wizard] ダイアログ ボックスで、[Add Features] を選び、[Next] をクリックします。

    図 2

    図 2: MDT01 への DFS レプリケーション役割の追加。

  6. [Select features] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  7. [Confirm installation selections] ページで、[Install] をクリックします。

  8. [Installation progress] ページで、[Close] をクリックします。

レプリケーションのための MDT02 の準備

  1. MDT02 で、サーバー マネージャーを使って [Add roles and features] をクリックします。

  2. [Select installation type] ページで、[Role-based or feature-based installation] を選びます。

  3. [Select destination server] ページで、[MDT02.contoso.com] を選んで [Next] をクリックします。

  4. [Select server roles] ページで、[File and Storage Services] (インストール済み)[File and iSCSI Services] (インストール済み) の順に展開します。

  5. [Roles] リストから [DFS Replication] を選びます。[Add Roles and Features Wizard] ダイアログ ボックスで、[Add Features] を選び、[Next] をクリックします。

  6. [Select features] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  7. [Confirm installation selections] ページで、[Install] をクリックします。

  8. [Installation progress] ページで、[Close] をクリックします。

MDT02 での MDTProduction フォルダーの作成

  1. MDT02 で、エクスプローラーを使って E:\MDTProduction フォルダーを作成します。

  2. E:\MDTProduction フォルダーを MDTProduction$ として共有します。既定のアクセス許可を使います。

    図 3

    図 3: MDT02 での E:\MDTProduction フォルダーの共有。

展開共有の構成

同じコンテンツを共有する複数の展開サーバーがある場合は、クライアントがある場所に基づいてどのサーバーに接続するかについての情報で Bootstrap.ini ファイルを構成する必要があります。MDT では、DefaultGateway プロパティを使ってこれを行うことができます。

  1. MDT01 で、E:\MDTProduction\Control フォルダーに移動し、メモ帳を使って Boostrap.ini ファイルを次のように変更します。

    [Settings]
    Priority=DefaultGateway, Default
    [DefaultGateway]
    192.168.1.1=NewYork
    192.168.2.1=Stockholm
    [NewYork]
    DeployRoot=\\MDT01\MDTProduction$
    [Stockholm]
    DeployRoot=\\MDT02\MDTProduction$
    [Default]
    UserDomain=CONTOSO
    UserID=MDT_BA
    SkipBDDWelcome=YES
    

      

    DeployRoot 値は Bootstrap.ini ファイルに入れられる必要がありますが、CustomSettings.ini ファイルでも同じロジックを使うことができます。たとえば、ローカル展開サーバーにログをリダイレクトしたり、ユーザー状態移行ツール (USMT) の移行ストア (UDDIR) をローカルにすることができます。USMT について詳しくは、「Windows 7 コンピューターの Windows 10 への更新」と「Windows 7 コンピューターの Windows 10 コンピューターへの置換」をご覧ください。

     

  2. Bootstrap.ini ファイルを保存します。

  3. Deployment Workbench を使い、[MDT Production] 展開共有を右クリックし、[Update Deployment Share] を選びます。

    図 4

    図 4: MDT Production 展開共有の更新。

  4. 展開共有の更新ウィザードの既定の設定を使います。

  5. 更新が完了したら、Windows 展開サービス コンソールを使います。[Boot Images] ノードで [MDT Production x64] ブート イメージを右クリックし、[Replace Image] を選びます。

    図 5

    図 5: WDS での更新されたブート イメージの置換。

  6. E:\MDTProduction\Boot\LiteTouchPE_x64.wim ブート イメージを参照して選び、既定の設定を使ってブート イメージの置換ウィザードを完了します。

コンテンツのレプリケート

MDT01 サーバーと MDT02 サーバーの準備が完了すると、実際のレプリケーションを構成する準備が整います。

レプリケーション グループを作成します。

  1. MDT01 で、DFS 管理コンソールを使い、[Replication] を右クリックして [New Replication Group] を選びます。

  2. [Replication Group Type] ページで、[Multipurpose replication group] を選び、[Next] をクリックします。

  3. [Name and Domain] ページで、MDTProduction という名前を割り当てて [Next] をクリックします。

  4. [Replication Group Members] ページで、[Add] をクリックし、[MDT01][MDT02] を追加してから [Next] をクリックします。

    図 6

    図 6: レプリケーション グループ メンバーの追加。

  5. [Topology Selection] ページで、[Full mesh] オプションを選んで [Next] をクリックします。

  6. [Replication Group Schedule and Bandwidth] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  7. [Primary Member] ページで、[MDT01] を選んで [Next] をクリックします。

  8. [Folders to Replicate] ページで、[Add] をクリックし、レプリケートするフォルダーとして E:\MDTProduction を入力し、[OK] をクリックしてから [Next] をクリックします。

  9. [Other Members] ページの [Local Path of MDTProduction] で、[MDT02] を選んで [Edit] をクリックします。

  10. [Edit] ページで、[Enabled] オプションを選び、フォルダーのローカル パスとして E:\MDTProduction を入力し、[Make the selected replicated folder on this member read-only] チェック ボックスをオンにして、[OK] をクリックしてから [Next] をクリックします。

    図 7

    図 7: MDT02 メンバーの構成。

  11. [Review Settings and Create Replication Group] ページで、[Create] をクリックします。

  12. [Confirmation] ページで、[Close] をクリックします。

レプリケート フォルダーの構成

  1. MDT01 で、DFS 管理コンソールを使い、[Replication] を展開してから [MDTProduction] を選びます。

  2. 中央のウィンドウで、[MDT01] メンバーを右クリックして [Properties] を選びます。

  3. [MDT01 (MDTProduction) Properties] ページで、次のように構成してから [OK] をクリックします。

    1. [Staging] タブで、クォータを 20480 MB に設定します。

    2. [Advanced] タブで、クォータを 8192 MB に設定します。

      このシナリオでは展開共有のサイズがわかっていますが、環境に合わせた値の変更が必要である可能性があります。経験則では、最もサイズが大きい 16 個のファイルのサイズを把握し、それらをステージング領域に収めることが適切です。E:\MDTProduction 展開共有内の最もサイズが大きい 16 個のファイルのサイズを計算する Windows PowerShell の例を以下に示します。

      (Get-ChildItem E:\MDTProduction -Recurse | Sort-Object Length -Descending | Select-Object -First 16 | Measure-Object -Property Length -Sum).Sum /1GB
      

    図 8

    図 8: [Staging] 設定の構成。

  4. 中央のウィンドウで、[MDT02] メンバーを右クリックして [Properties] を選びます。

  5. [MDT02 (MDTProduction) Properties] ページで、次のように構成してから [OK] をクリックします。

    1. [Staging] タブで、クォータを 20480 MB に設定します。

    2. [Advanced] タブで、クォータを 8192 MB に設定します。

  

レプリケーション メンバー (MDT01 と MDT02) によりレプリケーション構成が取得されるには多少の時間がかかります。初期同期にかかる時間は、サイト間の WAN リンク速度によって異なります。その後、差分変更がすばやくレプリケートされます。

 

レプリケーションの確認

  1. MDT02 で、E:\MDTProduction フォルダーのコンテンツが表示されるまで待ちます。

  2. DFS 管理コンソールを使い、[Replication] を展開して [MDTProduction] を右クリックし、[Create Diagnostics Report] を選びます。

  3. 診断レポート ウィザードの [Type of Diagnostics Report or Test] ページで、[Health report] を選んで [Next] をクリックします。

  4. [Path and Name] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  5. [Members to Include] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  6. [Options] ページで、既定の設定を受け入れて [Next] をクリックします。

  7. [Review Settings and Create Report] ページで、[Create] をクリックします。

  8. Internet Explorer でレポートを開き、必要に応じて [ブロックされているコンテンツを許可] オプションを選びます。

図 9

図 9: DFS レプリケーションの状態レポート。

リモート サイトでの Windows 展開サービス (WDS) の構成

MDT01 の前のトピックで行ったように、MDT02 で MDT Production ライト タッチ x64 ブート イメージを Windows 展開サービスに追加する必要があります。次の手順については、WDS が MDT02 に既にインストールされているものとします。

  1. MDT02 で、WDS コンソールを使い、[Boot Images] を右クリックして [Add Boot Image] を選びます。

  2. E:\MDTProduction\Boot\LiteTouchPE_x64.wim ファイルを参照し、既定の設定でこのイメージを追加します。

リモート サイトへの Windows 10 クライアントの展開

これで、MDT02 の MDT Production 展開共有レプリカに接続し、リモート サイト (ストックホルム) に Windows 10 クライアントを展開するソリューションが準備できました。

  1. 次の設定で仮想マシンを作成します。

    1. [Name]: PC0006

    2. [Location]: C:\VMs

    3. [Generation]: 2

    4. [Memory]: 2048 MB

    5. [Hard disk]: 60 GB (ダイナミック ディスク)

  2. PC0006 仮想マシンを起動し、Enter キーを押して PXE (Pre-Boot Execution Environment) ブートを開始します。これでコンピューターが WDS サーバーから Windows PE ブート イメージを読み込みます。

  3. Windows Preinstallation Environment (Windows PE) が起動したら、次の設定を使って Windows 展開ウィザードを完了します。

    1. [Password]: P@ssw0rd

    2. [Select a task sequence to execute on this computer]:

      1. Windows 10 Enterprise x64 RTM Custom Image

      2. [Computer Name]: PC0006

      3. [Applications]: [Install - Adobe Reader XI - x86] アプリケーションを選びます

  4. セットアップが開始されるので、次の操作を行います。

    1. Windows 10 Enterprise オペレーティング システムをインストールします。

    2. 追加のアプリケーションをインストールします。

    3. ローカル Windows Server Update Services (WSUS) サーバーを介してオペレーティング システムを更新します。

関連トピック

Microsoft Deployment Toolkit (MDT) の概要

Windows 10 参照イメージの作成

MDT 2013 Update 1 を使った Windows 10 イメージの展開

Windows 7 コンピューターの Windows 10 への更新

Windows 7 コンピューターの Windows 10 コンピューターへの置換

MDT 設定の構成